【北九州のユニークな建築】磯崎新の公共建築2作品&ジョン・ジャーディの巨大商業施設

福岡県北部に位置する北九州市 小倉エリアは、都市でありながら「小倉城」がランドマークの歴史的な町としても知られる。小倉城周辺エリアには、近代建築が集まる穴場がある。その中でも3つの著名建築物を散歩してみた。

ポストモダン建築の巨匠 磯崎新の建築美「北九州市立美術館」

磯崎新氏がキャリアの初期に設計し1974年に竣工した「北九州市立美術館」は、国内外の近現代美術を象徴するコレクションを所蔵した現代美術館だ。海と山に囲まれた地形を生かした構成で作られており、館内のカフェからも海や市街地を一望できる。

通称「丘の上の双眼鏡」と呼ばれているファサードから飛び出す二本の筒が印象的な外観を持つ北九州市立美術館。聖堂をモチーフにしたという館内はシンメトリーに空間が設計されており、洗練された真っ白のキューブ空間がグリッドを基調に連なりながら広がっている。

巨匠建築家 磯崎新

Via : Wikipedia.

プリツカー賞を獲得したことでも知られる建築家巨匠 磯崎新。2022年12月28日、老衰ため死去した磯崎氏はこれまで日本だけでなく、ロサンゼルス現代美術館、ブルックリン美術館など、60年以上に渡って日本国外で建築作品を遺している。

ポストモダン建築を牽引した建築家の一人として知られる彼の特徴は「合理性を持った建築」であること。閉塞的な日本のアカデミズムを脱却し、装飾性やデザイン性を世界的な次元で建築構想している。

北九州市立美術館

開館時間 : 9:30~17:30
休館日 : 月曜日
電話:093-882-7777
URL : http://kmma.jp
住所:福岡県北九州市戸畑区西鞘ケ谷町21−1

 

ヴォールト屋根が特徴的な磯崎新設計の「北九州市立中央図書館」

小倉城の向かい側にある「北九州市立中央図書館」も、1974年に「北九州市立美術館」と並んで磯崎新氏が設計した建築だ。丸いドーム状の銅版屋根が特徴的で、横に伸びるように配置されている。

磯崎建築ならではのカーブを多用した外観・内観が魅力的な北九州市立中央図書館。かまぼこのような半円形の断面のチューブが、ところどころでぐにゃりと曲がりながら連なる。

図書館・文学館・視聴覚センターの3つの文化施設がアーチ状の屋根を持つ建築の中に配置されている。

館内で2つのチューブは図書館と文学館で構成され、大きく湾曲した梁が支えているアーチ型の天井がダイナミックに展開する。まるでトンネルのような空間は、奥が開口部になっていて奥に行くほど明るくなるため、見た目よりも独特な開放感を与えているようにも感じる。

プレキャストコンクリートでできた特徴的な屋根。連続しながらカーブすることで多様な空間に変化していく様が気持ち良い。まるで、近未来に来たようにも感じる清らかな雰囲気を纏っている。

有川浩氏の小説を原作にした実写映画「図書館戦争」の舞台となった場所であることも納得だ。

光の取り入れ方から空間の繋がりまで、磯崎新らしい建築美が見られた内部空間は、とても繊細な印象がある。建築を見ながら歩き続けても飽きることなくその世界観を心地よく体感できるだろう。

北九州市立中央図書館

開館時間 : 9:30~19:00(土日~18:00)
休館日 : 月曜日
電話:093-571-1481
URL : http://www.city.kitakyushu.lg.jp/kyouiku/file_0385.html
住所:福岡県北九州市小倉北区城内4−1

ジョン・ジャーディ設計の巨大商業施設「リバーウォーク北九州」

小倉城と川を挟んで彼岸に建つ巨大商業施設「リバーウォーク北九州」。ここは、キャナルシティ博多や六本木ヒルズなども設計しているアメリカ人の建築家 ジョン・ジャーディ氏によって手がけられたものだ。

ジョン・ジャーディ建築といえば、ビビッドな配色と大胆な形状が秀逸で、印象的なデザインを持つことで知られる。リバーウォーク北九州で用いられた5色の配色は、茶色は大地、黒は日本瓦、白は漆喰壁、赤は漆、黄色は収穫前の稲穂から来ており日本の伝統を表現している。

造形もバラバラなヴォリュームを組み合わせてデザインされた構成のリバーウォーク北九州。内観でもそれらが上手く連結され、建築とランドスケープが溶けて混ざっており「歩き回る楽しさ」がデザインされている。

「回遊する人の流れが施設全体へ広がっていく起点」とされているミスティックコートは、黄色の三角の付吹き抜けが美しく空に抜ける。南側に目を向けると、小倉城が綺麗に見えるよう考慮された配置となっている。

リバーウォーク北九州は「小倉の街を流れる紫川の水辺を心地よく歩いてほしい」「北九州市に新しいシンボルをつくりたい」という想いから建てられたという。

この施設に隣接されているのは、北九州市役所や唐造りの名城として名高い小倉城。これら全てをとらえたロケーションは、近代と歴史の時代が混在したアングルが不思議な趣がある。

リバーウォーク北九州

電話:093-573-1500
URL : http://riverwalk.co.jp
住所:福岡県北九州市小倉北区室町1丁目1−1

小倉城エリアは 著名建築家による近代建築が近隣で集まる穴場建築スポット

 

北九州市小倉エリアは、磯崎新氏の初期の大型作品が多く、リバーウォーク北九州もまた商業施設としての工夫が多く見られる秀逸した施設である。

様々な近代建築が広がる興味深いエリアであると共に、現代美術のオブジェが現れる環境が相まり「小倉城が聳えながらも近現代の建築や美術が溢れる」。小倉エリアは、そんなユニークな街並みを感じられるだろう。