兵庫県芦屋市の丘の上に建つ巨匠フランク・ロイド・ライトが手がけた邸宅「ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)」
関西の高級住宅街として有名な兵庫県芦屋市にある「ヨドコウ迎賓館」は、大正末期に山邑家の別邸としてフランク・ロイド・ライトによって設計されました。
近代建築の三大巨匠である、フランク・ロイド・ライトが日本で手掛けた数少ない建築物の1つであり、1974年には国の重要文化財に指定されました。
フランク・ロイド・ライトが手掛けた「ヨドコウ迎賓館」
兵庫県芦屋市の緑に囲まれた、芦屋川が眼下に見下ろせる高台に建つ、ヨドコウ迎賓館。
「自然と建築との融合」をテーマとし、周辺環境を活かした設計を行う建築家と称されたフランク・ロイド・ライトは、この緩やかな斜面で南北に細長い敷地に非常に興味を抱いたそうです。
建物全体は4階建てとなっていますが、斜面に沿って階段状に各階がずれて重なっているため、どの断面をとっても、1階か2階のつくりになっています。
外観は、正面から見ると、左右対称の構図となっています。この左右対象構図は、フランク・ロイド・ライトの特徴でもあり、内観も左右対称の構図がたくさんあります。
外装に使われている「大谷石」の、でこぼこのある質感と暖かい色合いが厳格なデザインの中にも柔らかさと安らぎを醸しだしています。
開放的な左右対象の応接室
玄関ホールから、階段を上がった2階には、ヨドコウ迎賓館のメインである開放的な応接室が広がります。こちらの応接室も、また左右対称なつくりになっています。
低く抑えた空間から一気に開放へと導く空間は、あの旧帝国ホテルとの類似性が見えます。
ヨドコウ迎賓館の象徴「緑色の飾り銅板」
建築装飾には、植物をイメージした緑青というサビを意図的に発生し、緑色の飾り銅板が随所に使用されています。
窓やドア、欄間等に用いられ、全部で約200枚が設けられ、この飾り銅板がのヨドコウ迎賓館の象徴とも言えるでしょう。
外の景色をふんだんに楽しめる大きな窓からは自然光が差し込み、開放的な応接室を柔らかな空間へと導いています。
また照明には、幾何学模様が入ったリボンが巻かれており、小さなこだわりを感じる事ができます。
畳敷きの和室
3階には、3室続きとなった畳敷きの和室もあります。当初、フランク・ロイド・ライトの設計にはこの和室はなかったそうですが、施主の強い要望で実現したそう。
欄間にも緑色の飾り銅板が使用され、独特な和室のようにも感じるが、これもまたフランク・ロイド・ライトさがよく現れています。
和室と同じフロアには、竣工90周年を記念して復元した、竣工当時の机と椅子が展示されています。こちらは、明治時代から神戸で西洋家具の製作を続けている「永田良助商店」によって、手掛けられました。
その空間にある家具、照明器具など全てを「一体の建築」として考えていた、フランク・ロイド・ライト。そのことを考え、設計されたと言われているようです。
たっぷりの自然光が差し込む廊下
廊下には、一面の窓がたくさんあり、たっぷりの自然光が室内に差し込みます。もちろん、この廊下にも廊下に、飾り銅板を見かけることができます。
天井のデザインが壮大の食堂
最上階には、特に装飾性が強い食堂と厨房があります。
暖炉を中心に、食堂も左右対象のデザインとなっています。
食堂の天井は、ピラミット状に高く折り上げられており、天井の壮大なデザインに圧倒されます。寝転がって写真をいる人もいるのだとか。
4階の食堂から、そのままバルコニーに出ることができます。バルコニーから食堂を見ると、屋根は台形になっており、中央に高く伸びる煙突さえ、装飾の1つとなってみえます。
後方には山、南には住宅街、その先には海を見渡すことができ、壮大な景色を楽しめることでしょう。
ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)
住所:兵庫県芦屋市山手町3−10
電話:0797-38-1720
URL:https://www.yodoko-geihinkan.jp/