
ル・コルビュジエによる小さなギャラリーのような室内風景が楽しめる「ラ・ロッシュ邸」
パリ市内にあるル・コルビュジエ設計の住宅の一つ「ラ・ロッシュ邸」。コルビュジェの建築作品の中でも中期にあたる白の時代を代表する名作です。こちらには小さいながらもコルビュジェの5原則(ピロティ、屋上庭園、水平連続窓、自由な平面、自由な立面)が全て揃っています。広大な敷地に建つサヴォア邸とは違い、建て詰まった市街地で実際に生活する家という印象が強い住宅です。
ル・コルビュジエの「白の時代」の幕開けの建築
写真奥にあるアートコレクターのラ・ロッシュの家と、手前のコルビュジエの従兄弟であるピエール・ジャンヌレの家が一棟として建てられています。ル・コルビュジエの「白の時代の始まりの建築」と言われており、近代建築の五原則を備えた住宅です。
外観からは「サヴォア邸」と同じようにファサードには5原則のひとつである水平連続窓が連なっているのが伺えます。
アールがかった外壁の下はコンパクトなピロティとなっており、ここでも五原則の一つを見ることができます。
立体的に視点が交錯する空間
エントランスを入ると大きな3層の吹き抜けとなっており、ホワイエのような空間に。白壁の色味も相まって広々とした開放感が感じられます。
吹き抜けの両脇の空間は吹き抜けを通してもう一方の空間が垣間見えるユニークな作りに。
階段や通路という移動空間に面積を割いているものの、窓から差し込む光や湾曲した壁面もあり、退屈な感じはありません。
行き止まりになるような場所に必ず開口が設けられており、建築の中を散歩しているような感覚になります。コルビュジエ自身もその体験について「建築の散歩道(プロムナード)」と称していたと言われています。
吹き抜け自体が外部空間のように見立てられ、吹き抜けを通して反対側が他の建築のように見えます。とてもコンパクトな住宅ですが、中に入って廻っていると、様々に変化していく空間を体験することができます。
移動と風景が興味深いギャラリー
吹き抜け回りの空間も「ラ・ロッシュ邸」の魅力ですが、この建築のハイライトはギャラリースペースにあります。ル・コルビュジエの作品集等でも多数取り上げられる空間です。
中央のテーブルは作り付けでル・コルビュジエのデザイン。シンプルながらもV字の脚がアクセントとなって空間を引き締めます。
スロープがアールの壁に沿って設置されていることで、住宅ながらもドラマティックな印象を与えます。
スロープを登り切ると先ほどの吹き抜けのスペースに繋がります。
ここも奥にあたる空間に窓が設置されており、時間の流れとともに移ろう光を感じられます。
スロープ側を振り返った方角には、トップライトもあり明るい印象に。
寝室の窓からも他の箇所の水平連続窓が見え、空間の連続性を感じられます。
1階にはオレンジとグリーンの遊び心のある外壁が可愛らしい部屋も。暖色と寒色の組み合わせも、落ち着いたフローリングの色味とトーンを揃えることで統一感のある空間に。
キッチンは入り口から離れた奥まったところに配置されています。こちらもトップライトを取り入れることで明るく、機能的な空間になっています。
食事を運ぶのに使用されたリフトも綺麗に残されています。
室内の移動も楽しめる様々な要素が詰まった空間
スロープや、吹き抜けを介した廊下や階段による移動の中で、空間の連続性とズレが生じて不思議な感覚になります。また、壁や床の色も非常に豊かで住宅ながらもまるで映画を見ているかのような遊び心が感じられる住宅です。
Maison La Roche – ラ・ロッシュ邸
開館時間 : 10:00~18:00(月曜13:00~)
定休日 : 日曜日
URL : http://fondationlecorbusier.fr
住所 : 8-10 Square du Dr Blanche, 75016 Paris, France