街道沿いに建つ、街と家族のコミュニケーションが楽しめる柳瀬真澄設計の「箱崎の家」
福岡を拠点とし、住宅をメインに様々な空間の建築設計を手がける建築家・柳瀬真澄。近世、唐津街道の宿場町として筥崎宮を中心に栄えた地域である福岡県箱崎に建てられた「箱崎の家」は、現代の町屋をテーマに、伝統と現代ならではの機能性を織り交ぜた和モダンな住宅です。
町民の生活が根付く街道に開かれたオープンでモダンな住まい
敷地は、新旧のマンション、住宅、店舗が混在する「大学通り」から僅かに入った通りに面しています。道向かいは昔ながらに道端まで商品を並べる食材屋、隣は古いビルを改装したデイケア施設。周囲の通りは未だ町の人々の生活空間として機能しています。
外観は、点在する古い町屋・界隈の意匠・スケールと合わせ、馴染むよう調整されています。車庫をシャッターで暗く閉じてしまうのではなく、通りに開かれた明るいオープンスペースとして捉えることで、外に開かれたコミュニケーションの場としても機能します。
また玄関より和室前を「通り土間」のように扱うことで、和室・土間・車庫・通りを繋がりある空間として、暮らしの様々なシーンに活かせるように設計されています。
和の要素を取り込んだ明るい雰囲気の内部空間
和室にかかる障子と、建具に用いられた柔らかな風合いの木が優しい和の雰囲気をもたらしているエントランス。街中に建つため内部は限られたスペースであるものの、落ち着きと安心感を保ちつつ、環境と緩やかに繋がることで、閉塞感のない住まいとなるよう工夫されています。
玄関扉を開いた先の障子を開けると広がる和室。4.5畳の小さな空間ながら、柔らかにあたりを灯す照明と、地窓からの光によって落ち着きのある特別な部屋となっています。
空間の広がりが感じられる開放的な生活空間
2階主室は、柱・梁を表した大屋根の懐を内部に生かし、南北に風が抜ける豊かな広がりのある空間となっています。
梁と造り付けの棚の直線が気持ちよく、空間をシャープに引き締めます。
キッチンからダイニング、リビングまで見通せるため、作業中でも家族とのコミュニケーションを楽しむことができます。
【日本の伝統を機能的に取り込んだ落ち着きのある暮らし 】
街道沿いらしく街に開かれた空間を設けることで地域とのコミュニケーションが生まれる入り口。内部は和の要素を取り込みながら家族の暮らしをより豊かなものにしてくれる工夫が詰まっています。落ち着いた雰囲気ながらも、家族はもちろん、外との繋がりも楽しめる。街中という立地を生かした、暮らしを豊かに楽しませてくれる住まいです。
構造:木造2階建/敷地:116.18㎡/延床:165.29㎡