壁がうねる、金属もうねる!フランク・O・ゲーリーが手掛けた「シドニー工科大学・ビジネススクール」
個性とモダンが行き交うファッショナブルな国としても注目を集めるオーストラリア。この国の街には、独特かつアイデンティティを重視するセンスが根付き、そんな彼らの心を鷲掴みにするデザイン性の高い建築が多い。2015年、シドニー工科大学に新たに誕生したのは、巨匠フランク・O・ゲーリーが手掛けた「Dr. Chau Chack Wing(ビジネススクール)」ビルだ。
シドニー工科大学の近くには興味深い建築が集結
今回紹介するフランク・O・ゲイリーの建築「「Dr. Chau Chack Wing(ビジネススクール)」があるのはシドニー工科大学の敷地内だ。実はこの周辺には、思わず目を引く建築が多く集まっている。
シドニー工科大学があるエリアで人々が集まる施設といえば「セントラル・パーク・モール」。ここはノーマン・フォスターの事務所がマスタープランを計画し、ジャン・ヌーベルが手掛けたことでも知られる名所である。
その向かいには、モーフォシスを連想させる複雑で美しい建築が出迎える。
美しいガラス張りの容姿が印象的な「UTS CENTRAL」。手がけたのはシドニーを拠点とする設計事務所「FJMT」。
建築家 フランク・O・ゲーリー
アメリカ・ロサンゼルスを拠点とする、カナダ・トロント出身の建築家。奇抜な建築が特徴的で、スペインの「グッゲンハイム・ビルバオ」を代表作に今まで世界中で様々な建築を手掛けている。
建築界のノーベル賞「プリツカー賞」や、高松宮殿下記念世界文化賞などの名高い受賞経験が多くあるフランク・O・ゲーリー。しかしながら2015年には85歳という年齢でも、取材でアンチな発言があれば中指を立て応じる姿や、挑発的な発言に注目を集め、その「人間臭さ」にもファンが多い。
「不定形なファサード」が印象的なシドニー工科大学・ビジネススクール
2015年2月、フランク・O・ゲーリーがデザインしたシドニー工科大学・ビジネススクール、通称「Dr. Chau Chack Wing」。
黄土色の紙袋がクシャッとなったような外観は、そのインパクトと独特な発想で注目を集めた。
この不定形なファザードはレンガを使用し、湾曲させて創り上げている。32万ピースを手作業で並べたという流動的なブリックからは、近未来的な形状でありながらも陰影を生み出し、有機的な印象を与えることができている。
不定形なファザードの外観が特徴的な東側に対して、西側は様々な方向を向いたガラスのカーテンウォール。2つの「顔」を持たせた意図として、フランク氏は「革新的に考え、異なった分野が共同に、アイディアの相互作用を推奨する。」と後に語っている。
フランクらしい「うねる金属仕上げ」も
エントランスホールに足を踏み入れると、出迎えるのは「うねる金属」で仕上げたステンレスな空間。
フランク氏が手がけた「グッゲンハイム美術館」や「ディズニー・コンサート・ホール」でも、この「うねる金属仕上げ」が強く主張されている。彼の作品を知っている者であれば「ゲーリー氏と言えば」と言いたくなる手法だ。
この脱構築建築の象徴のような鏡面からは「荒れ狂ったようなステンレスの手すりが、人の動きやアイデアの移ろい」を表現している。
フレキシブルな空間作りが特徴的な内部
うねる外壁は、そのまま内部空間の壁として使われている。しかし主に内部空間は「建築」とは切り離され、自律したインテリアも多い。
内装に使われた、グルーラムの角材。計算高く様々な方向に積み上げられるその様は、外観とは異なり柔らかな表情を見せる。
シドニー工科大学・ビジネススクールは、それぞれのスペースが個として自由に使いやすい空間設計を感じる。フロアによってカフェ、自習スペース、イベントスペースなどフレキシブルに用途の変更にも対応可能だ。
様々なスペースを囲う、「うねる壁面」。この「うねり」が内部空間を柔らかにまとめ上げ、規定している様。
「シドニー工科大学・ビジネススクール」の形は、シドニー工科大学に通う学生達とコミュニテューの関わりを連想させ、奇抜な個性だけではない「居心地の良いキャンパス」を創り上げた空間だった。
UTS Business School Dept (Building 8) – シドニー工科大学・ビジネススクール
開館時間:9:00~17:00
休館日:土・日曜日
URL : https://www.uts.edu.au/about/uts-business-school
住所:UTS, Building 8, 14/28 Ultimo Rd, Ultimo NSW 2007, Sydney Australia