【お金の可視化とフィンテック】マネーフォワードCEO辻庸介氏×梅村和利氏対談(後編)

前回の記事では、お金の可視化や向き合い方についてマネーフォワードCEO辻庸介氏と梅村和利氏にお話を伺った。今回はテクノロジーの変化によるお金への影響、今後展開していくサービスなどについてのお話を聞いた。

プロフィール

辻庸介(写真右)

1976年、大阪府生まれ。京都大学農学部を卒業後、ペンシルバニア大学ウォートン校MBA修了。ソニー株式会社、マネックス証券株式会社を経て、2012年に株式会社マネーフォワードを設立。新経済連盟の幹事、経済産業省FinTech検討会合の委員も務める。2014年の「日本起業家賞」では米国大使館賞、最近では2018年「第43回経済界大賞」ベンチャー経営者賞なども受賞している。著書に『FinTech入門』(日経BP社)がある。

梅村和利(写真左)

株式会社 theHOUSE 代表取締役。大学の経済学部を卒業後、税理士事務所やプラント関連の建設会社勤務などを経て、2004年、新栄クリエイトを創業。「本物の環境にやさしい家」を目指してブランド「the HOUSE」を立ち上げ、100棟を超える住宅の設計、建築、リノベーションを行う。また、戸建賃貸「casita」を開発し、そのコンセプトと住宅としての性能の高さが評価され、2012年より本格的に全国販売が開始される。

「お金って何?」という時代

辻氏が代表を務める「マネーフォワード」は、Fintechというところで、そのテクノロジーをいろいろな分野で取り入れている。テクノロジーの進化が世の中に広がっていくことで、お金に対する考え方やお金の捉え方については、「お金に限らずテクノロジーがすべての産業を変える」と予想する。

最近では、今まで銀行の店舗に行っていたことがスマホでできる。SuicaやナナコカードやYahooのPayPayなど、いろいろな決済サービスが出てきたキャッシュレスの時代。それらが便利に使えるようになると、同時に現金が消えていくことになる。

 

そうなると紙幣の時代が昔のものとなり、辻氏は「そうしてさまざまなデータが溜まっていくので、そのデータを元に簡単にお金を借りられたり運用できたり、今までハードルが高かったことが低くなるようなサービスが出てくるでしょう」と話している。

テクノロジーによってお金が便利になって、より身近になる。そのおかげで社会が滑らかになっていくことが実現できるのではないかと語った。

キャッシュレスの伸び代

日本はキャッシュレスの普及度や、マネーに関するテクノロジーの、エンドユーザーへの普及度を考えると、日本はまだまだ伸びしろがあるだろう。

中国ではAlipayやWeChatPayがすごく伸びており、キャッシュレス率が日本は20%弱くらいで、一番進んでいる韓国で80%弱くらいと大きく差が開いている。日本と韓国では4倍違うので、そういう意味で日本はまだ伸びしろがあると言えるかもしれない。

その理由を、辻氏は「日本はもともと便利で、ATMはどこにでもあり、お金が現金でどこでも引き落とせるし、お金に対して偽札も少ないから安心感もある」と語る。「いろいろな日本のいい特徴があって、今の日本のシステムがあるので、これからスピーディーになると日本独自の進化もあるのかな」と話している。

お金のことを悩まなくていい社会

辻氏は今後、お金のことを悩まなくていい社会を目指しているとのこと。そのためには一歩づつ、まず、忙しい人でも簡単に家計や資産が管理できる「マネーフォワード」というサービスをつくったという。そして次につくったのが、家計簿をつけていると知らずにお金が貯まるサービス「しらたま」だ。

対面で相談したいという話が出てきたことから、「mirai talk」というFPの方が中立的な立場で相談に乗ってくれるサービスを開始。辻氏らは「お金のライザップ」と呼んでいるそうだ。

現状把握から貯金ができるようになり、相談して、今後はもしかしたら投資や株、保険に関するサービスも提供できればと考えているとのこと。辻氏は「そうして『マネーフォワード』を使ってくださると、お金のことを気にしなくてよくなる世界ができるのではと」と話している。

また企業向けにも個人事業向けも確定申告が簡単にできる仕組みとか、会計データを元にしてお金まで借りられるサービスを提供。お金が必要な時に必要なタイミングで流れていくようなサービスをつくりたいと思っていて、それに尽力していると明らかにした。