山北の田舎で焼く、心を満たす自家製天然酵母ぱん / Desture 自家製天然酵母ぱん
【店名】Desture(デスチャー)
【ジャンル】自家製天然酵母ぱん
【ご担当者】高山正明さん
【拠点所在地】
神奈川県足柄上郡山北町谷峨(工房)
神奈川県小田原市栄町(店舗:パブ併設)
神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴(店舗)
山の空き家を改装した工房で
Destureの「パン」は、ひらがなで「ぱん」と書きます。オーナーの高山さんも、創業時から一緒にやってきたパン職人の横藤さんも「自分達の作りたいパンは、なんだかカタカナじゃないよね」という気がするからだそうです。
お2人が作りたいのは、お腹を満たすだけではなく「心を満たすぱん」。現在は、神奈川県足柄上郡山北町谷峨にあった空き家を改装した工房で、主にレーズンから起こした自家製の天然酵母を使い、一つひとつ丁寧に焼き上げています。
イギリスの田舎で見つけた夢
オーナーの高山さんは、かつてイギリスを旅した時、絵本のように美しい田舎町として知られるコッツウォルズのパブで見た光景に胸を打たれました。そこでは夕方になると仕事を終えた町の人たちが集まってきて、ビールを飲み、音楽を聴きながら、他愛もない話をしてご近所同士が実に楽しそうに過ごしていました。いつしか日本では見かけなくなってしまった地域の人とのつながりや会話があったのです。
「こんなふうに人が集まれる空間があったらいいなぁ」
帰国した高山さんは、当時サラリーマン時代に勤務していた沼津でパブを見つけ、その気持ちが再燃します。パブのスタッフと、居合わせた英国人の常連さんにその夢を語っていた時、「ところでお店の名前は決まっているの? 決めようよ!」という話になりました。「サラリーマンを辞めて、新たな人生を歩むことは、未来に向かって大きく運命を変えることになりますね〜」
そして、運命(Destiny)+未来(Future)=「Desture(デスチャー)」というお店の名前が決まりました。
自分の運命は自分の努力次第で未来へ向かって変えることができるという思いを込めたこの店名と、「カントリーサイドに人の集まる空間を作る」というビジョンを胸に、高山さんは少しずつ開業準備を始めました。
茅ヶ崎マダムの一言からパンへ
イギリスのパブに憧れたものの飲食業の経験もない高山さんは、まずは勉強しなくてはと、調理やカフェ開業を学べる恵比寿の専門学校に通いました。そんなある日、お店を出そうと考えていたエリアの一つである茅ヶ崎で、知り合いづくりの意味もあって通っていた英会話スクールでマダムに、茅ヶ崎でやるならどんなお店がいいかと尋ねたところ、「茅ヶ崎でやるなら自家製天然酵母パンよ。もちろん、美味しくなくちゃダメよ」と言われたことが強く心に残りました。
しばらくして高山さんは、同じ専門学校で学び、パン屋に職人として務めていた横藤さんと奇跡的に出会います。「いきなりパブを開く前に、まずはパンで知ってもらうことから始めるのもいいかもしれない」タイミングが重なり、「Desture」は自家製天然酵母ぱんのお店として開業することになりました。
茅ヶ崎里山公園のリヤカーから始まった
「カントリーサイドに人の集まる空間を作る」というビジョンから、開業の地として高山さんが選んだのは、なんと県立茅ヶ崎里山公園。この公園を訪れる人に片っ端からリサーチをした所、神奈川県全域から人が集まる場所だということが分かりました。ここで販売を始めれば、広域に響くかもしれません。
リヤカーと言っても、いずれは高山さんの夢であるイングリッシュパブを実現するための最初の一歩です。だからこそリヤカーに載せる小屋にはイギリスの世界観を盛り込みました。そして10種類のぱんを数個ずつ、家庭用のオーブン2台で焼く所から一歩を踏み出しました。
2009年12月9日、茅ヶ崎里山公園でDestureは初めての販売を行いました。その日、自家製天然酵母ぱんはわずか2時間で完売。それからも公園内での移動販売を続け、少しずつファンが増えていきました。
どれもが個性派、ユニークなぱん
Destureのぱんは、一つひとつにユニークな特徴があります。競争の激しいパン業界で、自家製天然酵母ぱんと言っても玄人好みのものばかりでなく、Destureにしか作れないぱんをと、柔軟な発想で作っているそうです。お客様からの面白いアイデアを、すぐに形にすることもあります。10種類から始まったぱんは、今では60種類にまで増えました。
いちばん人気は、お客様から「あの四角いあんぱん」と親しまれている「珈琲あんとぱん」。あんぱんという言葉からイメージする丸いパンではなく、サイコロみたいなキューブ状の斬新な形、そして珈琲の苦みと香り、あんこは程よい甘さを兼ね備えた一品です。
小田原の工房&パブを経て、山北に新たな拠点を
高山さんがDestureをスタートしてから、2019年12月でちょうど10年になります。その間、順風満帆とは言えない、山あり谷ありの日々でした。でも必ずいつも応援してくれる人や助けてくれる人、支えてくれるお客様がいたからこそ続けて来られたと高山さん。そんな中で、茅ヶ崎ストーリーマルシェとの出会いもありました。
Destureは、小田原での工房&パブの運営を経て、2019年10月下旬に、山北町谷峨の空き家を改装した拠点で、また一つ新しいチャレンジを始めます。ライブなども頻繁に行い常連客も多い小田原のパブは残したまま、すでに工房は山北町谷峨に移転済みで、そこでは、カントリーパブとしてクラフトビールはもちろんのこと、食事と宿泊の機能を盛り込み、さらには、イングリッシュガーデンを造り、一日中過ごせる空間にしたいと考えています。
「10年目にして、やっと夢のスタート地点に立てたという気持ちです。信じたものに対して粘り強く努力をし、真っ直ぐそこへ歩いていけば必ず辿り着く。茅ヶ崎は若い人でもどんどん挑戦しやすい街。だから個人のお店も多いんだと思います。
山北町谷峨のお店でも、今と同じようにとにかく『会話』を大事にしてやっていきたい。以前、ある老夫妻に『私達はただパンを買いに来てるんじゃないのよ。あなた達と話すと元気になるから来てるのよ』とおっしゃっていただいたことを忘れずやって行こうと思っています」
「心を満たすぱん」から始めた高山さんが、カントリーサイドに人の集まる空間を作るという夢を、いよいよ叶える時がやってきたようです。
【お店情報】
○Bread&English Pub Desture
所在地:神奈川県小田原市栄町1-16-13
TEL:0465-43-8190
営業時間:10:30〜24:00(火・金曜日)16:00〜24:00(水・木・土曜日)
日曜、月曜休
○Desture真鶴店
所在地:神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴458-1
TEL:080-3464-5137
営業時間:10:30〜15:00(火・水・木・金曜日)
*他地域の販売との関係で営業日が変更の場合あり