「casa cube(カーサ・キューブ)」中庭付きプランにモロッコの住宅形式「パティオ」を見る。

先日紹介した「casa cube(カーサ・キューブ)」の中庭のあるガレージ付きのプランは、新しい可能性を感じさせてくれる。やはりこのプライバシーの守られた「パティオ」のような中庭は非常に魅力的だ。ところでこの中庭を表す言葉としてよく耳にする「パティオ」、その起源などについて詳しい人は少ないだろう。

イスラム圏の邸宅・リヤドに見られる「パティオ」

「パティオ」は、おおよそ中東や北アフリカのイスラム圏から発祥したと思われる。もともと砂漠の過酷な環境から暮らしを守るために四方を壁で囲い、豊かな外部環境を確保するために中庭「パティオ」を作り出した。現在でもモロッコでは「リヤド」(アラビア語で中庭のある家の意味)と言われるイスラム圏の邸宅が残っていて、「パティオ」の原型を見ることができる。

また、イスラム帝国が過去にスペインまで支配していたこともあり、グラナダやコルドバと言ったイスラム文化の根強く残るアンダルシア地方の街にもこの「パティオ」が多く見られる。

中庭「パティオ」は住まいの要になる

例えば、マラケシュやフェズと言ったモロッコの街ではファサードに窓がなく、簡素な外壁が続いているが、エントランスを抜けて行くと、明るい自然光の差し込む「パティオ」にたどり着く。この「パティオ」は、上を向くと切り取られた青い空を望むことができ、色とりどりのタイルや刺繍のように繊細な彫刻による装飾が施され、徹底的に住まいの美しさや快適性を追求する要になっている。

現在では、イスラム圏の人々だけではなく、ヨーロッパや世界各国の人々がこの「パティオ」の素晴らしさに再注目されているところだ。実際、「パティオ」を意識的に取り入れていることは少ないまでも、中庭を合理的に捉えることで偶然にも再現しているような事例は結構あるのではないだろうか。

「パティオ」的な機能を有する中庭付きプランのcasa cube

中庭のあるガレージ付きのプランのcasa cube では、まさに偶発的ではあるもののこの「パティオ」的な機能を有している。casa cube がもともと実装している天窓(トップライト)だけでなく、外壁に窓がない代わりにこの中庭が採光やリビングダイニングなどと有機的につながり、その快適性を拡張している。まだ住み始めて日が短いが、使われ方も似ていると言っていいだろう。

 

中庭のあるガレージ付きのプランの「casa cube(カーサ・キューブ)」とイスラム圏の邸宅・リヤドに見られる「パティオ」を見比べると、この中庭は非常に画期的だし、合理的で普遍的な要素を備えているとも言える。