建築家・北川原温の世界を歩く。中村キース・ヘリング美術館「時間と空間の星座」展で非公開建築ツアー開催
山梨県北杜市・小淵沢の中村キース・ヘリング美術館で開催中の展覧会「北川原温 時間と空間の星座」が、2026年5月17日の閉幕を前に、建築家・北川原温本人が登壇・案内する特別イベントを実施します。美術館そのものを設計した北川原温が、自作を“展覧会”として読み解き、さらに通常は宿泊者以外は入れない周辺建築まで含めて巡るツアーが用意されている点が大きな見どころ。展示室で「観る」だけでは掴みきれない、空間の連なりや森との関係、建築が立ち上がる背景に、身体ごとアクセスできる機会になりそうです。
「星」と「星座」で読み解く、北川原温の創造プロセス

展覧会「北川原温 時間と空間の星座」は、北川原の創作の源を「星」、建築を「星座」に見立て、2007年竣工の《中村キース・ヘリング美術館》を中心に、その方法論と生成の過程へ迫る内容です。展示の後半では、2002年に設立者・中村和男との出会いを起点として、2007年のオープンに至るまでに積み重ねられた対話や試行錯誤を、ドローイングや模型、そして建築家自身の言葉を通して辿る構成が提示されます。

建築を「完成物」として眺めるのではなく、アイデアが生まれ、形になり、場と関係を結んでいくまでの“時間”そのものを可視化する——本展は、北川原温の建築を理解する入口としてだけでなく、建築という行為のダイナミズムを体験する場として設計されています。だからこそ、閉幕前のこのタイミングで開催される特別イベントは、展示の読み解きを一段深める鍵になります。
建築家・北川原温

建築家。1951年長野県千曲市出身。
グッドデザイン賞金賞を受賞した山梨県の工業団地アリアの都市計画・ランドスケープ・建築のトータルデザイン、3.11東日本大震災で福島県最大の避難場所となった国際コンベンションホール・ビッグパレットふくしまなど、公・民問わず多くの設計に携わる。2019年3月まで母校の東京芸術大学で教鞭を執り、学生達とともに「劇場型都市計画」などの研究に従事。
日本建築学会賞、村野藤吾賞、日本建築大賞、日本芸術院賞、米国建築家協会ジャパンデザイン賞など数々の賞を受賞。模型やドローイングなど27点がパリのポンピドゥーセンター(仏国立近代美術館)に収蔵されている。
MET(旧北川原温建築都市研究所)フェロー。東京芸術大学名誉教授。
中村キース・ヘリング美術館 建築賞受賞歴
2007 山梨県建築文化賞受賞
2008 アメリカ建築家協会優秀賞受賞、村野藤吾賞受賞
2009 JIA日本建築大賞受賞
2010 日本藝術院賞(建築)受賞
2016 山梨建築文化賞受賞、アメリカン・アーキテクチャー・マスタープライズ(ホスピタリティ部門)金賞受賞
開館記念日に合わせて、建築家本人と巡る「一般非公開建築」ツアー

特別イベントの目玉が、北川原温の解説とともに周辺建築を巡る「一般非公開建築」特別ツアー&トークです。中村キース・ヘリング美術館を起点に、森に点在する北川原建築群(完成:2007年〜2015年)を巡り、美術館とは異なる着想で構想された建築の世界観に触れられます。

なかには、通常はホテル宿泊者以外は入れない建築も含まれ、空間のスケール感や動線、森の密度と建築の距離といった、写真では伝わりにくい要素を“歩いて”確かめられるのが魅力です。

ツアーは少人数制で、森の中を歩くプログラムとして設計されています。建築を鑑賞対象として消費するのではなく、風や音、足元の感触まで含めて、建築の成立条件を追体験する。北川原温の建築が持つ独特の感覚を、最も素直な形で理解できる時間になりそうです。
建築家・北川原温と巡る「一般非公開建築」特別ツアー&トーク
- 日時:2026年4月12日(日)13:00〜15:00
- 参加費:無料(当日の入館チケット購入は必要)
- 会場:中村キース・ヘリング美術館、ホテルキーフォレスト北杜、スパ・キーフォレスト、ヴィラ・キーフォレスト
- 集合:中村キース・ヘリング美術館「北川原温 時間と空間の星座」展入口
- 定員:15名程度(予約優先/空きがあれば当日先着)
- 備考:雨天決行(歩きやすい靴、調整できる服装推奨)
展示室で語られる「40年の軌跡」——北川原温ギャラリートーク

もう一つの柱が、北川原温によるギャラリートーク「時間と空間の星座」展から紐解く40年の軌跡。展覧会では、1978年竣工の《ナジャの家》から、1980年代を代表する《ライズ》、1990年代の《アリア》、2015年の《ミラノ国際博覧会2015日本館》など、代表作のコンセプトモデルやドローイングが並びます。本トークは、北川原自身がそれらの前で、自身のキャリアを振り返る機会として位置づけられています。

建築は、完成写真や批評だけでは捉えきれない「決断の連鎖」でできています。どこを削り、どこを残したのか。どんな矛盾を抱えたまま、どうやって前へ進めたのか。作家本人の言葉が加わることで、展示物は“資料”から“経験”へと変わり、鑑賞者の理解も立体化していくはずです。会期中限定で一般入館が可能とされる《ホテルキーフォレスト北杜》会場の案内も予定されており、複数会場を横断する本展ならではの奥行きが、より手触りのあるものになるでしょう。
北川原温ギャラリートーク
- 日時:2026年4月26日(日)13:00〜14:30
- 参加費:無料(当日の入館チケット購入は必要)
- 会場:中村キース・ヘリング美術館(自由の展示室)、ホテルキーフォレスト北杜
- 集合:中村キース・ヘリング美術館「北川原温 時間と空間の星座」展入口
- 備考:事前予約不要(混雑時は入場制限の可能性あり)
“読み解きの手がかり”を配る——解説リーフレット無料配布デー

さらに4月は、展覧会をより深く理解するための解説リーフレットが無料配布される日も用意されています。展示冒頭で壁一面に提示されている「星」と「星座」の図をもとに、主要な“星”を結びながら、10の項目で代表的な建築(=星座)を解説するというもの。模型や作家の言葉を前に、読み解きのルートを手にできるのは、建築展に慣れていない人にも心強いポイントです。
解説リーフレット無料配布デー
- 日程:2026年4月12日(日)/4月19日(日)/4月26日(日)/4月27日(月)
- 配布:開館より配布開始(各日、配布数に限りあり)
- 対象:チケット購入者(15歳以上)※15歳以下はジュニアガイドあり
北川原温の世界観を堪能する
建築展は、ともすると模型や図面を「情報」として追いかけて終わってしまいがちです。しかし「北川原温 時間と空間の星座」展は、美術館という建築そのものを核に据え、会場を横断しながら北川原温の“宇宙”へ踏み込んでいく構成が魅力。閉幕前に開催される特別ツアーやギャラリートークは、その構成を体験として結び直す決定打になります。建築家本人の言葉と歩行が加わることで、建築は一気に生き物のように見えてくるはず。春の小淵沢で、時間と空間が結び合う「星座」を、ぜひ体感してみてください。
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「北川原温 時間と空間の星座」
- 会期:2025年6月7日(土)ー 2026年5月17日(日)
- 会場:中村キース・ヘリング美術館(9:00-17:00/最終入館 16:30)
- サテライト会場:ホテルキーフォレスト北杜(11:00-17:00 ※一般観覧者は1Fロビーのみ)、JR小淵沢駅2階交流スペース
- 主催:中村キース・ヘリング美術館
公式サイト:https://www.nakamura-haring.com/
展覧会ページ:https://www.nakamura-haring.com/exhibition/13607/