大阪・関西万博の「いのちパーク」など、ランドスケープとパブリックアートが織りなす壮大な物語

2025年大阪・関西万博の会場を訪れた人々を最初に出迎えるのは、巨大なリング状の大屋根と、その内側に広がる緑豊かなランドスケープでしょう。会場全体を貫くランドスケープ、特に「いのちパーク」は、万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を体現する、壮大な舞台装置です。この空間は、会場デザインプロデューサーの藤本壮介と、ランドスケープデザインディレクターの忽那裕樹が中心となって創り上げ、パブリックアートと融合することで、来場者に五感で感じる「いのちの物語」を提示します。

「いのちパーク」ランドスケープが語る“いのちの物語”

大阪・関西万博の会場全体を貫く「いのちパーク」は、万博のテーマである「いのち」の多様性や循環を象徴する、生きたインスタレーションです。

会場デザインを統括した藤本壮介とともに、ランドスケープデザインディレクターの忽那裕樹が手掛けた、ランドスケープは、「いのち」の多様性を五感で感じられるように設計されています。特に、夏場の暑さ対策として設置されるミストは、空気中に水の粒子を広げ、来場者に涼しさと心地よさをもたらします。子供たちは、このミストの中を駆け回り、水遊びのように歓声を上げ、自然とテクノロジーが融合した新しい遊び方を体験します。彼らの無邪気な笑顔は、「いのち」の輝きそのものを象徴しており、このパークが掲げる「いのち輝く未来社会」というテーマを、最も純粋な形で表現していると言えるでしょう。この場所は、涼しい日陰で休憩する大人のみならず、子供たちにとっても、冒険と発見に満ちた特別な空間となっています。

また、自然の地形を模した「グリーンバレー」や、万博記念公園から移植された約1,500本の樹木からなる「静けさの森」といった多様な要素で構成されています。「静けさの森」は、都市開発によって失われかけた“いのち”の再生を象徴し、枯れゆく運命にあった樹木が新たな場所で息吹く姿は、持続可能な社会への強いメッセージとなっています。

参考:大阪・関西万博で枯れゆくはずだった生態系と5つのアートが共創する「静けさの森」

広大な会場を彩るパブリックアート、アートと人が出会う「あいだ」の空間

大阪・関西万博の会場には、「いのちパーク」の豊かなランドスケープと調和する形で、個性豊かなパブリックアートが点在しています。アートディレクターの長谷川祐子らが手掛けるこれらの作品は、単なる鑑賞の対象ではなく、来場者が直接触れたり、参加したりすることで完成するインタラクティブな体験を重視しています。

例えば、彫刻家・名和晃平の作品は、来場者の動きや周囲の環境に反応して変化し、アートと人が一体となる「あいだ」の空間を創出します。このパブリックアートは、人とアート、人と人、そして人と自然の間に生まれる対話やコミュニケーションを促し、万博のテーマである「共創」の精神を具現化しています。

多様なランドスケープとアートが織りなす「共創」の風景

「いのちパーク」のランドスケープと、そこに点在するパブリックアートは、互いに独立した存在ではありません。これらは、自然とテクノロジー、伝統と未来といった異なる要素を融合させ、「共創」のあり方を示しています。来場者は、起伏に富んだ地形を歩き、名和晃平のアート作品と出会う中で、自分自身と社会、そして地球とのつながりを再認識することになります。

「いのち輝く未来社会」について深く考えさせるランドスケープとアート

ランドスケープデザインディレクターの忽那裕樹がデザインした会場の起伏や水辺のある風景は、自然の力を感じさせる一方で、そこに配置されたアート作品は、人間の創造力や未来へのビジョンを象徴しています。これらの要素が重なり合うことで、来場者は「いのち輝く未来社会」を共につくり出すことの意義を深く考えるきっかけを得るでしょう。