
NOIZが設計を手がける大阪・関西万博の落合陽一パビリオン「null²」は前代未聞のインタラクティブな建築!
大阪・関西万博の落合陽一プロデュースのパビリオン「null²」は、建築家ユニットNOIZが手掛けたインタラクティブな建築です。特殊な鏡面膜が「ヌルヌル」と変形し、現実の風景を歪ませることで、万博でしか体験できない未知の世界へと来場者を誘います。
ヌルヌルと変形する鏡面で構成されたインタラクティブ建築
大阪・関西万博の「null²」は、これまでの建築の概念を根本から覆す、インタラクティブな建築です。パビリオンの最大の特徴は、ヌルヌルと動く伸び縮みする鏡(ミラー)で構成されている点です。大小の立方体が集まって形成されたパビリオンの外壁は、このパビリオンのために特別に開発された柔らかい鏡面膜でできています。この鏡面膜は、ファナック製のロボットアームが内部から押したり引いたりすることで、ダイナミックに変形します。
また、重低音を発するウーファーの周波数を調整することで、太鼓の膜のように振動し、独特な波形をつくります。これにより、パビリオン全体がまるで生きているかのように動き、映り込む周囲の風景や空を独特なリズムで歪ませます。この「変形しながら風景をゆがめる彫刻建築」は、来場者に現実世界とバーチャル世界を曖昧にする、これまでにない未知の体験を生み出します。万博という特別な舞台でしか実現し得ない、技術と芸術が融合した最先端の建築と言えるでしょう。
物理とデジタルを融合する「接空間」という新しい価値
「null²」パビリオンは、単なるパビリオンではなく、物理とデジタルが融合する「接空間(Interspace)」としての新しい価値を提示しています。設計者であるNOIZの豊田啓介は、コロナ禍で新たなコミュニケーションの場となったマインクラフトやフォートナイトといったゲーム空間に着目しました。これらのゲームで用いられるボクセル(Voxel)というキューブ型の空間単位を、この建築の構成要素に取り入れることで、現実とバーチャルがシームレスにつながる可能性を探りました。
来場者は、現地で身体を動かす体験に加え、バーチャル空間で自分だけの「null²」パビリオンを作成して共有したり、ARアバターを使って共同作業をしたりと、多様な方法で万博に参加することができます。
この試みは、設計者と利用者という従来の二分法を超え、誰もが自分のやり方で参加や貢献、提案ができる、次世代の建築価値のあり方を探るものです。物理的な制約を超えた多様な参加の形を可能にすることで、万博を訪れた人々だけでなく、世界中の人々がこの革新的な建築体験を共有できるように設計されています。
風や音、ロボットが創り出す「動く建築」
「null²」は、静的な建築とは異なり、自然やテクノロジーの力で常に変化し続ける「動く建築」です。外装の鏡面膜は、膜自体の重さと大きさに共振する風速によって、まるで呼吸をするかのように振動します。この自然の動きが、映り込む周囲の景観を独特なリズムで歪ませ、常に新しい表情を見せ続けます。
さらに、このパビリオンのために特別に開発された鏡面膜には、ホルン型や鞍型の凹みが意図的に施されており、単なる平面ではない複雑な曲面が、無数の鏡となって異なる世界を切り取り、映し込み、重ね合わせる効果を生み出します。そして、いくつかのボクセルの内部には、ファナック製のロボットアームが設置され、鏡面膜をダイナミックに変形させたり、重低音を発するウーファーが膜の振動をコントロールしたりすることで、より演出的に、文字通りヌルヌルと動くことを可能にしています。これらの要素が統合されることで、あたかも一個の生命体のように、周辺環境や人と相互作用する動的な建築が実現しました。この建築は、物理と情報、物理とデジタルの境界を体験させてくれる、画期的な試みと言えます。
漆黒の空間に広がる、人間とAIの融合を表現したインスタレーション
「null²」は、外観のダイナミックなインタラクティブな建築だけでなく、その内部空間も大きな魅力です。パビリオン内部は、一見すると何もないように見える漆黒の空間が広がっています。この空間には、上下に配置されたLEDパネルが仕込まれており、光と影の演出によって、来場者を不思議な感覚へと誘います。
この空間全体が、パビリオンのテーマである「いのちを磨く」を表現しており、人間とAI、自然とデジタルが融合する未来の世界を象徴しています。外観の鏡面膜が現実世界を歪ませる一方で、内部空間は光と音によって全く異なる世界を創り出し、来場者はリアルとバーチャルが曖昧になる不思議な感覚を体験できます。このインスタレーションは、万博のテーマである「いのちを磨く」という概念を、視覚的・感覚的に深く体験するための重要な要素となっています。
物理とデジタルが融合する新しい建築「null²」
「null²」は、物理とデジタルが融合する「接空間」として、新しい建築のあり方を示しています。風や音、ロボットによって常に変化するこのパビリオンは、人間とAI、自然とテクノロジーの共生を象徴しています。訪れた人々は、これまでの概念を超えた未来の体験を通して、新たな価値観に出会うことでしょう。