素材で切り替える、建築家が手がけた寛げるリビングは住み手に優しいメリハリのある住まい

人生で最も大きな買い物のひとつであるマイホーム。そのため、快適で理想の住まいを実現したいと考える方も多いでしょう。

大阪府高槻市に建てられたこの住まいは、リビングとダイニングキッチンをあえて分離し、つながりを保ちながら空間を切り替えているのが特徴です。

この住まいを手がけた建築家がまず大切にしたのは、「リビングはとことん寛ぐ場所にしたい」というご夫婦の想いでした。そのため、あえてリビングとダイニングキッチンに分けるという提案がなされました。今回は、建築家が手がけたメリハリのある住まいをご紹介します。

6つの窓が印象的。静けさをまとう柔らかい外観

まるで静かに整列したように、正面に並ぶ6つの正方形の窓。グレーの外壁にあしらわれた木のアクセントは、都会的でクールな印象の中にやわらかな温もりを添えています。

また、玄関まわりには奥行きがあり、通りからの視線を自然に遮るつくりが施されています。住まいに入る前のほんの一瞬、緩やかに気持ちを切り替えられる“間”のような場所です。

つながりを保ちながら、空間を切り替える

この住まいでは、リビングとダイニングキッチンを床の素材を変えて空間を分ける工夫がされています。また、ただ空間を仕切るのではなく、足ざわりや素材感の違いによって、気持ちのスイッチが自然に切り替えられるように設計されています。

空間を分けながらも閉塞感を生まないために、建築家がこのような提案をしました。床材を切り替えることで、空間のグラデーションが生まれ、どこかで気持ちが切り替わる感覚が得られます。

視線はつながっているのに、気持ちは切り替わる。そんな建築家ならではの繊細な工夫が、日々の暮らしに心地よいリズムをもたらしてくれます。

ダイニングに正方形の窓を配置

LDKの中で、外とのつながりを最も感じられる場所はダイニングです。リビングではなく、ダイニングから外へ視線が抜けるように窓を配置することで、朝の始まりや仕事からの切り替えを意識できる場所として設計されています。

外の景色を取り込むのはあくまで活動の場=“オン”の空間。だからこそリビングには視線が抜けすぎず、静かにこもるような安心感が生まれています。また、一つひとつの窓が小さいからこそ、落ち着きの中にさりげない開放感を演出してくれるのです。

迎え入れるのは、やさしい余白の玄関

この住まいに足を踏み入れた瞬間、広がるのは淡いグレーのタイルが印象的な、のびやかな玄関。忙しい日々を切り替える“最初の場所”として、建築家がこだわったのがこの玄関の余白と落ち着きです。

淡いグレーの床は、どこかひんやりと静けさを感じさせ、家に入った瞬間にスッと気持ちを落ち着かせてくれます。この色と素材の切り替えが、「外」と「内」をやさしく区切る境界になり、暮らしに寄り添う空間体験をつくり出しています。

視界スッキリ清潔感ある玄関動線

玄関に入ってすぐの場所に設けられたのは、大容量の靴棚と手洗いスペース。一見シンプルな動線のようで、ここには建築家ならではの細やかな気配りが詰まっています。

靴棚はあえて玄関正面から視線が外れる位置に配置されており、“見せない収納”で玄関のすっきり感をキープ。雑多になりがちな玄関まわりも、自然と整って見えるよう工夫されています。

そして靴を脱いだその足で、すぐに手洗いへ。帰宅後の動線に無理がなく、「ただいま」から「手洗い」までがスムーズです。忙しい日常でも、無理なく衛生習慣が続けられる、そんな優しさがこの住まいの入り口に詰まっています。

ナチュラルな空間に、黒が効く。美しい階段のコントラスト

リビングや廊下に広がるのは、木の風合いを感じるナチュラルな床材。その中で、ひときわ印象的なのがブラックのフレームでデザインされた階段です。

木のやさしさに対し、あえて黒を効かせることで、空間にほどよい緊張感とモダンさが加わります。階段は単なる通路ではなく、空間全体の印象を引き締めるアクセントとして機能しているのです。

建築家が意図したのは、「やさしい」だけでは終わらせない住まい。ナチュラルとシャープ、光と影。 そんな対比の中に、住まいの美しさと奥行きが生まれています。

素材で切り替える、メリハリのある住まい

この住まいの魅力は、空間の構成だけでなく、素材の使い分けにも表れています。リビングにはやわらかさと温もりを感じる床材、ダイニングには活動的な印象の素材を選ぶことで、視覚的にも身体的にも“今どんな時間か”を自然に感じられるのです。

建築家と理想の暮らしを叶える家づくりの参考にしてみてはいかがでしょうか?