建築家・原広司が国際コンペで勝ち取り実現した「京都駅」は、谷のような大階段のアトリウムが魅力的!

日本のかつての首都であった京都。数多くの歴史ある仏教寺院、庭園、皇室の宮殿や御所、神社、伝統的な木造家屋で知られ、国内外から多くの観光客で賑わいます。そんな京都の顔とも言えるのが「京都駅ビル」。京都の和の情緒漂うイメージとは一変し、長さ470mの長大なコンコースを中心に据えたダイナミックな空間をガラス面が覆う巨大建築です。設計を手掛けたのは建築家・原 広司。建築はBCS賞、ブルネル賞、京(みやこ)環境配慮建築物優良賞を受賞し、原の名を広めた代表作の一つとなりました。

国際コンペで採用された建築家・原広司案

日本の鉄道駅舎としては異例の国際指名コンペ方式で行われ、新駅ビル設計者には原広司 、安藤忠雄 、池原義郎 、黒川紀章 、ジェームス・スターリング 、ベルナール・チュミ 、ペーター・ブスマン の7名の複数の建築家 が指名されました。設計審査の結果、原広司案、安藤案、スターリング案の3案に絞り込まれ、さらなる協議を経て、原広司案が最終案として採用されました。

京都駅周辺は高さ120mまでの建築物が建築可能となる特例措置が設けられており、高さ制限の緩和は古都の景観を損なうものとして反対意見も根強かったため、建物のボリューム・高さによる圧迫感を回避し、いかに周辺環境との調和を図るかがポイントに。原の案は、最大高さを60mに抑えた上で、南北方向の道路に合わせて建物を分割して視線を通すなど、圧迫感を回避するような配慮を随所に設けたことが評価され、採用されました。

また、「歴史への門」を設計コンセプトに据え、京都の条坊制(碁盤目状の都市区画)を意識し、駅構内に碁盤の目を取り入れているのも特徴です。

巨大な気積を作る谷のようなアトリウム

建築は、地上16階、地下3階、延床面積238,000平方メートルの規模で、高さは京都市最高の60m。駅ビルの幅は450mにも及び、百貨店(J R京都伊勢丹)、ホテル(ホテルグランヴィア京都)、京都劇場から構成される複合商業ビルです。

東側に建つホテルグランヴィア京都 、西側に建つJR京都伊勢丹の間の中央コンコースは、4000枚のガラスを使用した大屋根(横幅147m、奥行29m、高さ50m)で覆った巨大なアトリウムとなっています。吹き抜けの最上部には地上45mの空中径路が通っており、吹き抜けから東西へは渓谷状の階段が設けられています。

各所に離散する居場所のような空間

コンコース西側より吹抜け大空間を見ると東側上階のホテル9階レベルには東広場があり、16階レベルには客室廊下を結ぶブリッジが架かっています。ガラス屋根の高さは約50m、中央部とクロスヴォールト部分は1.44mを基本グリットとした一体のトラス構造となっています。

一方、コンコース東側より吹抜け大空間を見ると、テラス、室町小路広場、大階段とガラス屋根の架かった屋外空間にはホテル側と百貨店側の東西を空中で結ぶスカイウェイが見える。大階段は百貨店の各階へとアクセスし、キャノピーは円弧を組み合せしたトラス構造となっています。

大階段を登り切った屋上には「大空広場と葉っぴいてらす」と名付けられた、竹やぶが設置された広場があり、碁盤の目のデザインが京都らしい落ち着きが感じられる空間に。

反対側の屋上には「東広場」が配され、「大空広場と葉っぴいてらす」とは一変し、西洋風なデザインとなっています。

京都の歴史を見守る近代的な大空間

京都の和の印象を覆すような近代的で重厚感のあるデザインが特徴的な「京都駅ビル」。一見、古都とは異なるスタイリッシュな印象を与える建築ですが、そこには京都の景観を配慮した数々の工夫が施されていました。これからも京都の街の歴史とともに成長する重要拠点として、国内外の人々に愛される空間となりそうです。

京都駅ビル

所在地 : 〒600-8216 京都府京都市下京区東塩小路町901