季節を視覚と味覚で楽しむ老舗菓子店「とらや」のお菓子

羊羹(和菓子)と言えばと一番に頭に浮かぶほど老舗有名店の「とらや」。贈答品としての利用はもちろん、羊羹だけではない、生菓子や季節限定のお菓子、何店舗かある喫茶でいただくお菓子も魅力的です。

建築家・内藤廣が手がけた「とらや本店赤坂」

とらやは室町時代後期に京都で創業し、京都から東京にお店を出したのは明治2年。赤坂で何度か移転をし、1964年から今の場所にお店を構えられ、54年経った2018年に改築し、今の店構えになりました。

新しい店舗はTORAYA TOKYOや東京ミッドタウン店など他店舗も手掛けている内藤廣の設計。1階から2階に繋がる階段横の全面ガラスや吉野の檜を使った内装が印象的です。1階はエントランス(エレベーターホール)、2階は販売店舗、3階は虎屋菓寮(喫茶)、そして地下には虎屋赤坂ギャラリーがあります。

喫茶でいただく期間限定のお菓子

3階の喫茶は予約ができないので少し待つこともあると思いますが、待合のスペースもとても居心地の良い空間なのが嬉しいです。

季節の生菓子もこちらでいただけるのですが、さらにとらやの喫茶でしか味わえない限定のお菓子もあります。9月にスタートしたのが栗氷。夏の定番かき氷と秋の味覚の栗がコラボレーションした今だけのお菓子です。かき氷にトッピングされているのは白玉と栗水羊羹、和三盆糖蜜にすりおろした蜜栗が散らしてあります。食べ進んでいくと中から栗餡が出てくるのですが、この栗餡が絶品!とらやさんの独自品種しろあずきで作られた白餡と国産の新栗を使って作られています。見た目も上品ですが、甘さもさっぱりとしてかき氷なのに秋を感じるというとても不思議な感覚でした。

虎屋菓寮がある、赤坂店、東京ミッドタウン店、帝国ホテル店、新宿伊勢丹店、横浜そごう店、京都一条店、京都四條南座店で食べることができます。

自宅で楽しむ和菓子

喫茶から螺旋階段を降りると黒漆喰の壁に大きな「虎」の文字が印象的な2階の販売店舗へ。こちらでは定番の羊羹から赤坂店でしか買えない羊羹や季節限定のお菓子(伺った時はお彼岸のおはぎがスタートしたところでした)が揃っていました。おはぎはすでに食べていたので、この日は栗粉餅(くりこもち)と山路の秋、そしてこの日少し雨が降っていたこともあり菊の雨という名前のお菓子を買って帰りました。菓銘の初出年代が記載されていたのですが、栗粉餅はなんと1700年。山路の秋は1983年、菊の雨は1981年だそうです。一番新しくて2002年生まれのお菓子もありましたが、これから少しずつ新しいお菓子も生まれて先々まで続いていくのでしょうね。

視覚と味覚で楽しむ和菓子、こし餡を作って、漉したり、求肥に包んだり、美しく形成してといった職人の技をじっくり眺めながら家で味わうお菓子も大変美味しかったです。その時にしか食べられないお菓子も時々チェックしてまた味わいたいです。