プリツカー賞を受賞した磯崎新や坂茂の建築も多数!静岡県にある有名建築家が手掛けた美しい建築作品15選
世界遺産に登録された富士山をはじめ、浜松城を擁する浜松、伊豆や熱海などの温泉地も人気の静岡県。観光やレジャー、食まで、多様な魅力を持つ静岡県ですが、建築においてもクラシカルなものからモダンなものまで幅広い作品が見られるのが特徴です。今回は静岡県で注目の建築15選をご紹介します。
1.プリツカー賞受賞建築家・磯崎新による「静岡県コンベンションアーツセンター」
建築家・磯崎新が設計を手掛け、1999年にオープンした「静岡県コンベンションアーツセンター」。「文化創造と交流の拠点」として静岡県が設置した県立複合文化施設です。
楕円と放物線を基本的なジオメトリーとする3次元曲線で構成されたユニークな外観を持ち、その内部に大・中・小ホールおよび会議室などを有する巨大な複合建築です。幅約65m 、長さ約200mで、地上高さは大ホールおよび国際会議場棟(高層棟)が約60m、中・小ホール棟(低層棟)が約30mです。高層棟と低層棟はエキスパンション・ジョイントによって建物のほぼ中央で構造的に分離し、地下部は地上構造の基壇となるよう一体構造になっています。地上部分は高層棟を純鉄骨造、低層棟を鉄骨鉄筋コンクリート造とし、地下部分はすべて鉄骨鉄筋コンクリート造です。
この施設で最も特徴的なのが大ホール。
こちらは「祝祭空間としての現代のゴシック・カテドラル」という建築コンセプトをもとに、ゴシック建築でよく見られる交差リブアーチをメタファとした、リズミカルで繊細なストラクチュアが天に向かって上昇するようなダイナミックな空間となっています。
静岡県コンベンションアーツセンター
所在地 : 〒422-8019 静岡県静岡市駿河区東静岡2-3-1
開館時間 : 9:00-22:00
TEL : 054-203-5710
WEB : https://www.granship.or.jp/
アクセス : 「東静岡駅」南口から徒歩5分
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2.藤森照信による自然素材を多用した珍しい美術館「浜松市秋野不矩美術館」
建築家・藤森照信が設計を手掛け、1998年に開館した「浜松市秋野不矩美術館」。地元出身で文化勲章受賞の日本画家・秋野不矩の作品を展示しています。設計にあたり「秋野不矩作品との調和」を目指す中で、藤森は秋野不矩の作品の汚れのなさに土足は似合わないと考え、「裸足で鑑賞する美術館」が導き出されました。
建築には地元特産の天竜杉をはじめ、漆喰の壁面、藤ござの通路、大理石の床など、自然素材を多用しています。丘の上にある美術館までのアプローチにも、周囲の植栽との調和を目指し、擁壁のコンクリートブロックに杉板を張ったり、排水溝に木製の蓋が取り付けたりと工夫が見られます。屋根は、長野県諏訪産の鉄平石で葺かれ、外壁はワラと土を混入した着色モルタルと天竜の杉材の板で覆われています。雨どいは、ヒノキとサワラの半丸太をくりぬいた木製となっています。
内部へと進むと、第1展示室の床には籐ござが、第2展示室の床には大理石が敷き詰められています。白い漆喰の壁と藤ござ床が鮮やかな対比の第1展示室を進んだ先には、真っ白な空間に圧倒される第2展示室が広がります。床に座って鑑賞できるよう、作品が通常の美術館よりもやや床に近い位置に展示してあるのもユニークな、作者の個性に合わせた空間設計が魅力の美術館です。
浜松市秋野不矩美術館
開館時間:9:30~17:00
休館日:月曜日
入館料:¥300
TEL:0539-22-0315
WEB : http://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/akinofuku/
住所:静岡県浜松市天竜区二俣町二俣130
アクセス : JR「掛川駅」または「新所原駅」乗り換え 、 天竜浜名湖鉄道「天竜二俣駅」下車 徒歩15分
3.プリツカー賞も受賞した建築家・坂茂による逆さ富士が美しい「富士山世界遺産センター」
建築家・坂茂が設計を手掛け、2017年に開館した「富士山世界遺産センター」。2013年にユネスコの世界文化遺産に登録された富士山を、歴史、文化、自然などの観点から伝えていくための拠点施設として建てられました。建築は象徴性を持たせるために、展示空間を高さ14m、底部が直径10mの円形から、長径46m短径29.2mの楕円形に広がる「逆さ富士」型としています。「逆さ富士」型の本体は、富士ヒノキでできた格子のクラッディングで覆い、あえて木が適度にエイジングすることを期待しています。
「逆さ富士」型本体のかたちに沿って、内側には螺旋状のスロープが周り、外周内部壁面には、富士山の標高に合わせた環境映像が映し出され、登山体験を想起することができる仕掛けが施されています。そして「逆さ富士」型建物の頂上では一面の開口が富士山をピクチャーウィンドウにより1枚の絵のように切り取っています。水盤に張られた水は、富士山から染み込んだ地下水が使用されているほか、展示空間の空調の熱源としても利用されており、建物運用にかかる省エネルギー化が図られています。
富士山世界遺産センター
所在地 : 〒418-0067静岡県富士宮市宮町5-12
開館時間 : 9:00-17:00(7・8月 9:00-18:00)
休館日 : 毎月第3火曜日 及び 施設点検日
料金 : 一般:300円、15歳未満・70歳以上の方:無料
中学校、高等学校及び大学の在学者並びにこれらに準ずる方:無料
障害者及び障害者の介護者:無料
TEL : 0544-21-3776
WEB : https://mtfuji-whc.jp/
アクセス : JR「身延線富士宮駅」から徒歩8分
4.柔らかい透過光の空間が印象的な西沢大良による「駿府教会」
建築家・西沢大良が設計を手掛け、2008年に完成した「駿府教会」。静岡市内、線路沿いの角地に建て替えられたキリスト教プロテスタントの教会です。線路沿いの角地という敷地に対して、礼拝堂を線路沿いの街角に置き、他の必要諸室を線路から離れた住宅地側に配しています。
礼拝堂はキューブ状の立体、必要諸室は切妻2階建ての立体であり、それぞれの全面道路に並ぶ近隣建物の形状に合わせています。構造はどちらも木造で、礼拝堂については柱・梁共にトラスで支持しています。礼拝堂の入り口を敷地隅切り部に設けることで、街角とダイレクトに繋げています。光と音を重視したこちらの建築では、外壁を凹凸のある割り肌板で仕上げることで、光に反応する外壁としています。礼拝堂の中は目透かしの板張りで、壁厚760mmの壁が光と音を調節。壁面には開口を設けず、上空からのみ光を取り入れることで刻一刻と移り変わる光の様子が感じられます。礼拝堂の内壁の板幅は、上部にいくほど幅が細くなり、最上においては糸のように細くすることで、ガーゼのような柔らかい透過光を得ています。時間によって移り変わるさまざまな光の効果が魅力の空間です。
駿府教会
所在地 : 〒420-0838静岡県静岡市葵区相生町15-1
TEL : 054-255-0001
WEB : https://www.sunpukyokai.org/
アクセス : JR「静岡駅」(東海道新幹線、東海道線)下車 徒歩13分
5.高宮真介・谷口吉生のユニットによる「資生堂アートハウス」
建築家・高宮眞介、谷口吉生が設計を手掛け、1978年に開館した「資生堂アートハウス」。谷口吉生が手掛けた最初の美術館建築でもあります。敷地は、現在も操業する資生堂掛川工場に隣接しており、アートハウスと「資生堂企業資料館」、そして敷地内に配置された彫刻作品を楽しめる芸術交流の場となっています。広々とした庭園に佇む外観は、カーブするタイル壁の下側にミラーガラスが張られているため、鮮やかな芝の緑や空の色といった周囲の風景が反映され、自然の中に溶け込むような印象を与えます。
展示室はSの字に配された回遊動線が特徴的で、黒い大理石でできた半円状の階段を登ると、光の抑えられた四角の展示室に辿り着き、動線に沿ってぐるっと回ると、様々な彫刻作品が展示された外からの光や風景を取り込んだ明るい展示空間が広がります。谷口の処女作ながら、段やスロープを用いた空間の展開、展示室間の繋ぎ方、自然光の取り入れ方など彼の作品の特徴的な要素が詰まった建築です。
資生堂アートハウス
所在地 : 〒436-0025 静岡県掛川市下俣751-1
開館時間:10:00~16:30
休館日:日・火・月曜日
WEB:https://corp.shiseido.com/art-house/jp/
アクセス : 天浜線「掛川市役所前駅」より徒歩10分
6.世界的建築家・隈研吾による建築そのものがアートのような「ATAMI海峯楼」
建築家・隈研吾が設計を手掛け、1995年に開館した、相模湾と熱海の花火が一望できるラグジュアリーホテル「ATAMI海峯楼」。「水とガラス」をテーマに館内の至るところに美しいアートが施されています。全室オーシャンビューの部屋からは相模湾を一望できます。海と部屋、ウォーターバルコニーが、まるで海に融けこむように境界線を失う、不思議な調和感が魅力的な空間です。水を循環させた“縁側”によって、建築と海との一体感を生み出しています。熱海の自然の地形を活かしながら、縁側や庇(ひさし)など水平方向のデザインを取り入れることで、視覚的に境界を曖昧にさせた、開放感と心地の良さが魅力の建築です。
ATAMI海峯楼
所在地 : 静岡県熱海市春日町8-33
TEL:0557-86-5050
アクセス : JR「熱海駅」下車、車で約3分
7.藤森照信による可愛い美術館「ねむの木こども美術館 どんぐり」
建築家・藤森照信が設計を手掛け、2007年に開館した「ねむの木こども美術館 どんぐり」。「ねむの木こども美術館 緑の中」と同様、「ねむの木学園」が運営する学園の子どもたちの絵画を展示する美術館です。
建築は、急斜面の裾に形成されたなだらかな斜面から、谷に向かって伸び出すようなデザインが導かれました。斜面に向かって水平に伸びているため、谷に近い方では2階となり、尾根に取り付くところは平屋になっています。この建築の主役とも言えるのがドーム型の大展示室の屋根。このドーム屋根の部分をどんぐりに見立て「どんぐり」という名称になっています。
学園の子供による「麦の絵」が描かれた外壁は、藁入りの白セメントで、どんぐりのような屋根は学園の子供たちや職員が総出で手もみした銅板を柿状に葺いてできています。藤森らしい、日本の自然豊かな原風景に溶け込むような優しい建築です。
ねむの木こども美術館どんぐり
所在地 : 〒436-0221静岡県掛川市上垂木3534
開館時間 : 10:00-17:00
休館日 : 年末年始
料金 : 一般・大学生600円、 小中高生:250円
TEL : 0537-26-3900
WEB : https://www.nemunoki.or.jp
アクセス : 東海道新幹線「掛川駅」からバス「ねむの木美術館前」下車
8.槇文彦によるガラスのファサードのモダンな建築「静岡市清水文化会館(マリナート)」
建築家・槇文彦が設計を手掛け、2012年に開館した「静岡市清水文化会館」。朽化した清水文化センターの建て替え計画によって建てられた、大小ホール、ギャラリーなどからなる文化施設です。明快なゾーニングと動線によるコンパクトな空間構成とすることで、利用者にとっても、運営・維持管理者にとっても使いやすい施設となっています。
清水駅から連続する北側のペデストリアンデッキに面してホワイエを設け、透明なファサードの奥に青とピンクに彩られた大小のホールを配置することで、イベントの有無に関わらず華やいだ雰囲気を周辺に与えるとともに、重層的にホールの周りに巡らした階段や展望ラウンジにより、港や富士山を眺める都市的な回遊性を生み出しています。
静岡市清水文化会館
所在地 : 〒424-0823 静岡市清水区島崎町214
開館時間 : 9:00-22:00
休館日 : 月曜(休日の場合はその翌平日)、年末年始
TEL : 054-353-8885
WEB : https://www.marinart.jp/
アクセス : JR「清水駅」 みなと口(東口)下車 徒歩3分
9.長谷川逸子によるリズミカルなヴォリュームの凹凸がおもしろい「静岡大成中学校・高等学校」
創立100周年を迎えた私立中学校・高等学校の校舎の老朽化に伴う増改築を、建築家・長谷川逸子が手掛け、2004年に完成した「静岡大成中学校・高等学校」。敷地条件から6階建てが導かれた建築では、「学年、選択授業に捉われないコミュニケーション」を目指し、層間の関係性を活かした空間を実現しました。それぞれの教室が学年ごとにまとまりを持ちつつも、吹き抜けたスチューデントホールを介して他の教室群と繋がりを持つようにされています。
外壁は押出成形セメント板とし、ランダムに配された4種類のサッシがリズミカルな軽やかな印象をプラスしています。基本モジュールから飛び出しているボリュームはホールや特別教室などの機能を内包しており、カーテンウォールと、その外側を防球機能を兼ねたパンチングメタルで覆っています。近代的ながら、明るく開放的な空間が心地よい学校です。
静岡大成中学校・高等学校
所在地 : 〒420-0839 静岡県静岡市葵区鷹匠2-4-18
TEL : 054-254-7334
WEB : https://s-taisei.ed.jp/
10.千葉学が手がけた心地の良い落ち着きが感じられる「日本盲導犬総合センター」
建築家・千葉学が設計を手掛け、2006年にオープンした「日本盲導犬総合センター」。こちらは、盲導犬の訓練施設のほか、目の不自由な人が犬と共同で訓練できる場所、繁殖犬の出産・盲導犬候補犬の飼育、引退した盲導犬が生涯くつろげる場所、一般の人の盲導犬への理解を深める広報スペースやラウンジ、盲導犬の研究、国際交流といった多用途に応える建築です。
建築には、これら盲導犬を通じた福祉活動を広く社会に認知させるべく、社会に開かれた施設であることが求められました。そこで、片流れ屋根の「コテージ」が点在するイメージと、富士山の裾野という雄大な大地に広がるような「回廊」の2つのイメージからデザインされました。
様々な場所が独立し、かつプライベートでありながら、どこでも自由に歩き回ることができ、次から次へと様々な活動の風景が見え隠れしていく空間となっています。全体としての輪郭は曖昧ながらも、どこか緩やかな秩序がある空間は一つの小さな街のようでもあり、人にとっても犬にとっても心地の良い落ち着きが感じられる建築です。
日本盲導犬総合センター
所在地 : 〒418-0102 静岡県富士宮市人穴381
開館時間 : 平日12:00-16:00、土日祝日10:00-16:00
休館日 : 毎週水曜日、年末年始
TEL : 0544-29-1010
WEB : https://www.moudouken.net/fuji-harness/
アクセス : 富士ICより車で約30分
11.内藤廣による半外部空間が印象的な日本的な建築「とらや工房」
建築家・内藤廣が設計を手掛け、2006年にオープンした「とらや工房」。庭の広がりを受け止めるように緩やかに湾曲し、喫茶室と販売所の間に作られた半外部空間は、庭の空気を引き込むような緑に溶け込むような空間設計が特徴です。
建築は開放的な店舗と箱状に閉じたバックヤードの二つで構成されています。構造は、工期の短さと建物の形態から、単純な天骨ラーメン造りに。敷地の法規的な制限に加え、隣接する神社の杜と建物の繋がりを考慮し、天上高を最小限に抑えています。床の仕上げは土足対応で床暖房が可能なチークの無垢材を、壁の仕上げは内部と外部の連続性を考慮してレッドウッドを採用しています。水平に伸びる屋根が生み出すシャープな印象と、木のあたたかさのバランスが心地よい空間です。
とらや工房
所在地 : 〒412-0024静岡県御殿場市東山1022-1
営業時間:4月-9月10:00-18:00 10月-3月10:00-17:00
※喫茶メニューのラストオーダーは、営業終了時間の30分前頃
定休日:火曜日 (祝日の場合は翌日)、年末年始
TEL : 0550-81-2233
WEB : http://www.toraya-kobo.jp
アクセス : JR御殿場線「御殿場駅」下車、車で15分
12.青木茂建築工房によるリボンのように鉄骨ブレースを巻きつけたユニークな再生建築「浜松サーラ」
築29年を経過した故・黒川紀章設計の既存建物を、建築家・青木茂が改修設計を担当し、2010年にリニューアルオープンした「浜松サーラ」。ガス機器を中心とした生活機器のショールームです。
改修にあたっては、外部から鉄骨ブレースをリボンのように巻き付ける、世界初の耐震補強「スパイラル・ブレースド・ベルト補強」を採用しています。また、耐候性能を恒久的に維持するためにこれらの耐震ブレースをガラスで覆い、さらに建築全体をガルバリウム鋼板によりパッケージングすることによりコンクリートの劣化を防止しています。
内部は閉鎖的な室内環境を改善するため、諸室の間仕切りをガラス張りにしたり、吹き抜けを新設したりと、平面的にも視覚的にも三次元的に広く感じるスペースを生み出し、間仕切りのない自由度の高いオープン・フレキシブルな空間として、将来の可変にも対応できるものとしています。
金属板による外壁のデザインは、星を誕生させるガス分子、地球を包み込む層状のガスをコンセプトに、建築がいつまでも輝きを生み続けるようになることを表現しています。
浜松サーラ
所在地 : 〒435-0044 静岡県浜松市東区西塚町200 サーラプラザ浜松 1F
開館時間 : 10:00-18:00
休館日 : 月曜日
TEL : 0120-203-226
アクセス : 西鉄天神大牟田線「白木原駅」西口より徒歩3分
13.自然豊かな景観に溶け込む栗生明による「かんなみ仏の里美術館」
建築家・栗生明が設計を手掛け、2012年に開館した「かんなみ仏の里美術館」。静岡県にある桑原区で守られてきた24体の仏像を町民の財産として保存継承、展示公開を行うための施設です。
建築は、仏像群が地区の守護仏として人々の心の拠り所であった精神性を念頭に位置づけ、人々が集う建物といった意味をも持った「堂」としての佇まいを継承しています。また、特徴ある方形屋根は、美術館が新たな地域の文化的活動・観光の拠点となることを象徴したもの。
敷地は、かつて仏像群を安置していた桑原薬師堂や周辺の自然豊かな景観が展望できるよう配慮されており、亜鉛メッキされた支柱と、正倉院の校倉造りのような三角の木造の外壁が特徴のデザインも、周囲の里山の景観に調和することを意図しています。
かんなみ仏の里美術館
所在地 : 〒419-0101 静岡県田方郡函南町桑原89-1
開館時間 : 10:00-16:30
休館日 : 火曜日、年末年始
料金 : 大人(高校生以上)300円、小中学生 100円、団体(10人以上)、65才以上は100円割引
TEL : 055-948-9330
WEB : http://www.kannami-museum.jp/en/
アクセス : JR東海道本線「函南駅」より車で約5分
14.谷尻誠・吉田愛 / suppose design officeによるユニークな遊具「くるりの森」
谷尻誠・吉田愛が率いるsuppose design officeが設計を手掛け、2014年に完成した「くるりの森」。浜松市郊外の商業施設の一角に建つ遊具です。「大人も子どもも楽しめるランドスケープ」というクライアントの要望に対し、「森」をテーマとして生み出されました。ここで言う「森」とは、登れば遊具に、腰をかければ家具に、遠くから干渉するとアートになるような、人の行為によって意味が多様化する建築のこと。構成は、R3000mmで統一されたスチールパイプを角度を変えてジョイントしていくことで、複雑さの中にある多様な形を可能にし、同時に円滑な施工性を担保しています。
くるりの森
所在地 : 〒434-0046 静岡県浜松市浜北区染地台6-7-11
開館時間 : 10:00-18:00
TEL : 053-452-4806(遠州鉄道)
WEB : https://www.nicoe.jp/guide/landscape/
アクセス : 遠鉄バス 聖隷三方原病院方面行「染地台3丁目」下車 徒歩20分
15.プリツカー賞を受賞した建築家・坂茂による「ねむの木こども美術館 緑の中」
女優の宮城まり子氏が創設した「ねむの木学園」が運営する美術館。「ねむの木子ども美術館 どんぐり」と同様、学園の子どもたちの描く絵画などを展示する施設として、建築家・坂茂が設計を手掛け、1999年に開館しました。建築は緑の谷間に立っており、平面は敷地に合うよう正三角形の幾何学的な形状です。緑を背景に自然光だけで絵が見られたらという宮城の想いから、全ての外壁面がガラスで仕上げられており、また、屋根構造に「ペーパーハニカム三角格子構造」を使い、屋根を「防水はFRP折板とPVC(合成樹脂)膜」としています。館内には自然光が入り、建築全体が光で溢れるような柔らかな空間です。
ねむの木こども美術館 緑の中
所在地 : 〒436-0221 静岡県掛川市上垂木3399-1
開館時間 : 10:00-17:00
TEL : 0537-26-3985
WEB : https://www.nemunoki.or.jp/donguri
アクセス : JR掛川駅北口「ねむの木美術館前」行、約20分
隠れた名建築にたくさん出会える
意外にも多くの有名建築家の作品が点在する静岡県。穏やかな気候からそれぞれの建築家の感性が制限なく表現された建築が特徴です。観光ついでに建築巡りを楽しむのにもおすすめなエリアです。