何気ないものにも、少しのこだわりを。キャンピングカービルダー・トイファクトリー藤井昭文さん

今までのような旅のスタイルとは違う、新しい旅が推奨されているコロナ禍の現在。密を避けて移動でき、自然を楽しめるという理由から、最近キャンピングカーが注目されています。今回お話を伺ったのは、株式会社トイファクトリー 代表取締役の藤井 昭文さん。キャンピングカーを作ることになった原体験や、これからの動きについて語ってくれました。

藤井 昭文 / 株式会社トイファクトリー 代表取締役

1971年7月2日、岐阜県出身。車を改造することが趣味だった父の影響を受け、幼い頃から車で旅を続ける幼少期を過ごす。その後、自分の理想とするキャンピングカーを作ることに。1995年にトイファクトリーを創業、行動指針のテーマは「常に始まりはトイファクトリーから」。

暮らしの中で大切にしているデザイン

藤井さんが「好きな場所」と語るのは、自らの手で作っているキャンピングカーの中。できるだけ自分の家の中にいるような環境を作りたいという想いで、車を作っているそうです。そんな藤井さんが牽引するトイファクトリーは1995年に創業し、今年で26年目。創業のきっかけは藤井さんの幼少期の原体験に遡り、1970年代にお父さんの手作りキャンピングカーで旅したことがきっかけだったといいます。

建築の内装業をやっていたというお父さんは、趣味で車の中にベッドを作ったり、カーテンをつけたりと改造を進めていたそう。当時はそういった車は珍しかったため、旅行先ではよく人が集まってきて、声をかけられることも多かったんだとか。藤井家の旅行では、「車で泊まることが当たり前だった」と語ります。

そうした体験をしてきた藤井さんは、「自分自身が使ってみて、ここをこうしたいとか、デザインを変えたいと思うように。自分の理想の車が日本国内になかったから、それなら自分で作っちゃおうと思った」と話してくれました。

コロナ禍で注目されているキャンピングカー

密を避けながら非日常的な体験ができると、最近注目されているコロナ禍でのキャンプ。藤井さんによると、今のような反響は全く予想していなかったそうで、緊急事態宣言が出た時点では、受注がほぼゼロになっていたそうです。

「どうなるかと思いましたが、ウィズコロナの認識や、すぐ収束しないことがわかってくると、自分のライフスタイルを見直す方が増えてきました。リモートワークとかワーケーションで、キャンピングカーへの興味が爆発したのかなと思います」

アウトドアと一口に言っても、テントを張るキャンプを楽しむ人もいれば、キャンピングカーを選ぶ人も。藤井さん自身がキャンピングカーを選んだ理由について、「あるとき横を見るとキャンピングカーに乗ってる方がいて、テントを使っている自分たちと比べて撤収の時間が恐ろしく早いんです(笑)。雨の時も優雅に、余裕があるように見えたんですよね。そこから、キャンピングカーはいろんな意味で、テントと違う楽しさがあるなとわかりました」と話します。

キャンプブームが起きている現在は、キャンプ場の予約が取れないことも。しかしキャンピングカーなら、選択する場所が多く、その分遊べるエリアが増えていくことに繋がるのだとか。特に最近ではRVパークが全国にできてきて、快適に泊まれるようになっているといいます。

デザイン性はもちろん、機能にもこだわり

「何気ないものにも、少しのこだわりを持つことを意識している」という藤井さん。常日頃から触れているものにはこだわりたいと考えており、その意識はキャンピングカーにも現れています。

「デザインはすごく大事ですが、私がキャンピングカーを作ってきた実体験から、実用性も重視しています」「目に見えないところのこだわりも大切」とのこと。例えば、シャープとコラボした車両専用のソーラーパネルを作ったり、国産ロケットの先端に塗装されているものと同じ断熱塗料をボディの内部全体に塗装を行ったり…そうすることで、夏場の暑さもだいぶ抑えられるそうです。

今後はどんなキャンピングカー作りたいか尋ねると、「お客様が楽しむことができて乗ることで幸せになってもらえるような、キャンピングカー作りをしていきたい」とのこと。トイファクトリーのテーマの中に「始まりはいつもトイファクトリーから」という言葉があり、その意図はこれからのキャンピングカー作りにも繋がっているようですね。

今後のあり方は?

現在、コロナ禍で家族単位での旅行や、ペットとの旅行でも活躍しているキャンピングカー。しかしそうした面だけではなく、「災害などが多く起きてる中で、避難所の代わりとして備えるというのも、キャンピングカーを持つ理由になるのでは」と語る藤井さん。キャンピングカーがあることで安心感につながり、それが遊ぶ目的にプラスして、車を所有するきっかけになるかもしれないと話します。

「ライフ・イズ・ジャーニー」

最後に、藤井さんにとって「ライフ イズ ◯◯」の空欄に入る言葉を尋ねると、「ライフ・イズ・ジャーニー」と回答。「人生も生活も、地図がない旅みたいなもの。今日とか明日も違うし、毎日が右も左も違うように旅を楽しみたい。また常にポジティブな気持ちで、前に進んでいきたい」とまとめてくれました。