美しい美術館をつくる建築家・谷口吉生の傑作!水平・垂直と採光が美しい「豊田市美術館」

日本を代表するクルマの街、愛知県豊田市。ここにニューヨーク近代美術館(MoMA)の増改築計画の設計者としても知られる建築家・谷口吉生が手掛けた建築「豊田市美術館」があります。他方からその建物の魅力は語られ、「谷口吉生の最高傑作」と呼ぶものも多い。早速、その傑作の全貌を覗いていきましょう。

建築家 谷口吉生

豊田市美術館

同じく建築家である谷口吉郎を父に持つ建築家・谷口吉生。彼の特徴は、ほとんど住宅建築の作品がなく、公共建築において真価を発揮しています。ですが、その建築の多くに両極端なスケール感が共存することは驚きです。

これまでニューヨーク近代美術館(MoMA)丸亀市猪熊弦一郎現代美術館香川県立東山魁夷せとうち美術館など、多くの美術館建築を手掛け、美術建築の巨匠と言っても過言ではありません。日本建築学会賞作品賞2度、吉田五十八賞、高松宮殿下記念世界文化賞など多数受賞しています。

豊田市美術館とは

豊田市美術館

豊田市美術館は、愛知県豊田市の挙母城のあった高台の一角に建っています。 20世紀美術とデザインの収蔵、現代美術の意欲的な企画展が頻繁に開催されることで全国的に知られています。去年には、愛知県豊田市が1億1千万円で購入したという現代美術家 奈良美智の未発表大作が展示されていることでも話題となっています。

城跡の丘の高低差を生かし、敢えて屈曲したアプローチ

豊田市美術館

元々は挙母城があったという高台の立地を活かして配された、豊田市美術館。日常からの距離を保つため、アプローチからは敢えてその姿を多く現さないことは、谷口吉生のこだわりの1つでしょう。

豊田市美術館

豊田市美術館の建築の構成は、高低差を生かした設定が巧みに組まれていることも特徴的。敷地西側は、昔からの古い豊田の町に面するロケーションを生かし、隅櫓や茶室が日本式庭園の中に点在し、歴史的景観を形成しています。一方で敷地東側は、クルマの街らしい新しい豊田市街の街並みが一望でき、美術館の建物が豊田の「過去と未来の境界線」のような立ち位置で横断します。

モス・グリーンのスレートが印象的な巨大アーケード

豊田市美術館

一歩一歩アプローチを登っていくと少しづつ、且つ大胆にも空を背景に美しく浮かび上がるモスグリーンのスレートがモダンな外観。水平に伸びるファサードの巨大な構えが突如として我々を出迎え、連なったグリッド構造が幾何学的で美しく圧倒されます。

豊田市美術館

巨大なファザードとは対照的な控えめなエントランスのギャップも興味深い点です。これは谷口吉生曰く「この位置でもう一度、人間の身体感覚に戻って、これから美術作品に向き合うための準備する」という意図があるのでしょう。

柔らかで心地よい光が包む乳白色の磨りガラスが印象的な内部空間

豊田市美術館

中に入ると何とも心地よいのは、乳白色のガラスから外からの光を心地よく取り込む空間づくり。アート作品の置かれる美術館建築では自然光を使うことはあまりされないが「自然光のメリット」だけを取り入れたこの乳白色ガラスの空間は、我々の心をどこか落ち着かせながらも非日常的な心地へと委ねます。

鑑賞ルートの中で所々外の景色を見せる動線

豊田市美術館

ルートの動線中を一定の空間色で保たず、まるでリズムを奏でるように置外の景色や空間の大きさが変化します。敢えてクリアに外景を望める窓は小さく低い位置にすることで、絵画の額縁のように風景を切り取っているようにも思えます。

豊田市美術館

これは谷口吉生が手掛けた美術館建築でよく取り入れられる手法でもあり、彼の建築の特徴の1つと言っても良いでしょう。

内外の境界を曖昧にしたラウンジも

ラウンジや、高橋節郎館では、屋外から続くモスグリーンのスレートが床材として内部へにも入り込んだようなデザインが印象的です。内から外、外から内へと流れるように連続する滑らかに曖昧な境界線は、縁側のように繊細で美しい。

展示室は部屋ごとに空間や材質の使われ方が異なる

豊田市美術館

谷口氏が「作品を見せる器」と喩えたことがある美術館建築の内部は、その器を大小に区画され、回廊するように11室を観進められます。

豊田市美術館

その各室や廊下は、空間感覚こそ共通していますが、それぞれに異なる空間の広げ方と材質の使われ方が興味深いです。そのため、移動するたびに新しく開ける感覚があり、常にその時と空気を刷新できます。

あくまでも美術作品のための「枠組み」である建築の尊さ

豊田市美術館

迷路のようであり、絵本のような空間全体を乳白色から朗らかに心地よく溢れる光が包み込みます。光の連続と変化が独特であり、美術を観賞する人々の感覚と時間を、さらに贅沢に引き立てているように感じます。

豊田市美術館

そこにあるのは、この立地を理解し、美術館建築を深く繋がる谷口吉生だからこその価値観、感覚のようなものを体感し、主張を強く打ち出すのではなく、あくまでも美術作品のための「枠組み」である建築の尊さに魅了されます。

谷口吉生の最高傑作の一つ「豊田市美術館」

豊田市美術館は、美術館を数多く設計してきた谷口吉生建築の中でも最高傑作の一つと言える美術館です。建築同様に美しい常設展や興味深い企画展と同様に、それを魅せる器としての建築も楽しむことができます。美術鑑賞はもちろん、建築や庭園散策も楽しめる豊田市美術館に足を運んでみてはいかがでしょうか。

豊田市美術館

営業時間:10:00~17:30
休館日:月曜日
URL : https://www.museum.toyota.aichi.jp 
住所:〒471-0034 愛知県豊田市小坂本町8丁目5−1