鹿児島の厳しい自然環境と共生する建築家・柳瀬真澄手がけた住まい「A邸」
福岡を拠点とし、住宅をメインに様々な空間の建築設計を手がける建築家・柳瀬真澄。鹿児島市中心部、近年区画整理され建設が進む住宅地にある「A邸」。桜島の噴煙は鹿児島の象徴であると共に、降灰は市民生活の大きな悩みでもあります。降灰、夏場の日射、台風といった鹿児島の自然条件に十分に配慮し、環境への負荷の少ない住まいであること、静かで広がりのある空間であること、また周囲に対してプライバシーを確保しながらも、圧迫感のない凛とした佇まいであることを条件とし、「A邸」は建てられました。
鹿児島の自然環境と共生する寄棟屋根が特徴の外観
駐車スペースが設けられた大きな平家。軒深い寄棟屋根は、様々な自然条件から暮らしを守り日照を調整すると共に、日々刻々と移り変わる自然を映してくれます。屋根と床のプリミティブな構成だからこそ、格子や簾戸の使い方等によって多様で豊かな表情を内外にもたらしてくれます。
外観は軒高を抑え直線が生きるプロポーションとし、道路からの引きをとり、アプローチ空間、外玄関を設けています。この奥行きによって、周囲との間合い、繋がりが調整されます。
また、周囲に設けられた板塀や植栽とも相まって、正面の通りに美しく堂々とした雰囲気を与えています。
外部の自然を取り込んだ玄関
木のルーバーからのぞく外部の植栽が美しい玄関。シューズボックスの下部に設けられた間接照明によってモダンな印象をつくりだしています。
明るく開放感のあるリビング
高めに設けられた天井によって開放感のあるリビング。大きい窓から広がる自然光が、心地よく空間を包みます。オーナーの意向によりリビングを多数の来客に対応する南に面した広間とする必要であったため、建物は鉄骨造となっています。
また、空調設備等の重装備に頼り過ぎずに十分な断熱と気密性を施すこと、漆喰・木質仕上げにすることによって快適な環境を確保しています。
豊かな自然環境と共生する住まい
降灰や台風など厳しい自然環境を考慮して建てられた「A邸」。どんな状況においても心地よく暮らせる住まいとしての機能はもちろん、建物の内外に取り込んだ色鮮やかな植物、あたたかな自然光が生活をより豊かなものにしてくれます。端正な線と面、光と翳りによる格式をもった住宅です。
竣工:2012年/構造:鉄骨造/敷地面積:660.22㎡/延床面積:289.42㎡