シカゴ郊外のオークパークにあるフランク・ロイド・ライトの自邸兼事務所などの住宅建築群。

アメリカ・シカゴのダウンタウンの南側のシカゴ大学のすぐ近くには、ミースやル・コルビュジエと並ぶ近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトによる典型的なプレイリースタイルの住宅「ロビーハウス」があります。さらにシカゴの西側のオーク・パークにはライトの自邸を含めキャリアの初期に手掛けた住宅建築が多数残っています。のちの名作のヒントとなる要素が詰まったライトの自邸兼事務所は見応えたっぷりです。

フランク・ロイド・ライトの自邸兼事務所

オーク・パークにある「フランク・ロイド・ライトの自邸兼事務所」。ルイス・サリヴァンの事務所で働いていた若きライトが建てた自邸であり、後に事務所も兼ねることになるこの住宅から、数々の名作建築が生まれました。

向かって右側が住宅で左側が事務所になっています。

内部にはミュージアムショップも設けられ、見応えたっぷりです。

多国籍な要素がコラージュされたデザイン

自身が最初に手掛けた作品でもあるライトの自邸兼事務所は、増改築を繰り返したこともあってパッチワークのように多国籍な要素がコラージュされたデザインになっています。

また、こちらをデザインの実験の場として活用していたことも、要素やデザインに統一感がなくツギハギな印象の理由の一つと言えそうです。

日本的な要素も感じるインテリアデザイン

中に入ると作りつけの家具のディテールや材の色調など凝ったデザインではあるものの、最初の作品だからかライトらしさやモダンさは抑えられた印象を感じます。

この時はまだライト自身のスタイルを確立していないのかもしれません。

その代わり内部空間も外観同様にパッチワークのように色々なテイストのデザインが見られます。

日本画も飾られており、日本への興味がこの頃からあったことが伺えます。

ミース・ファン・デル・ローエやル・コルビュジエと異なり、インテリアを家具など隅々までコントロールする点がライトの特徴のひとつですが、第一作目でもあるこの建築からも、内部空間へのこだわりが感じられます。

ダイニングは、建具のような窓枠や格子の照明装飾など日本的な要素が盛り込まれており、明治時代の和洋折衷の雰囲気が感じられます。

モダニズム自体もプレイリースタイルもないものの、当時のライトのセンスが詰まった心地よい空間に仕上げられています。

日本的なデザインのバスルームの飾り窓は明かりだけを取り込むようにデザインされています。

子供部屋にも日本画が飾られ、和の印象に。

子供用のプレイルームはアーチ状の天井となっており広々とした贅沢な空間に。壁の絵はライトが描いたもの。この絵からも日本への関心が感じられます。

トップライトの装飾などその後のライトの建築に採用される要素がチラホラ。

和紙のような紙で光が和らげられた照明からも日本的な要素も感じられ、名作照明の「タリアセン」にも似た雰囲気があります。

キッチンはそれほど機能的ではないものの、モスグリーンの色壁と木の落ち着いた雰囲気。

当時の仕事ぶりを感じる事務所

住宅の次は事務所棟の中へ。

住宅の部分とは異なり、幾何学的なデザイン性が感じられます。

中央の吹き抜けの周りには所員用のドラフターが並びます。

図面を収納する棚も造り付けで、装飾が施されています。


下部は矩形の平面でその上に八角形の平面が重なるデザインに。

求心的なデザインの天井が良い趣。

事務所には受付スペースも設置されています。

製図室と反対側には打ち合わせスペースがあり、ここでクライアントへのプレゼンなどを行なっていたのだとか。当時としてはこの部屋のデザインは印象深いものだったらしく訪れた人は一瞬でライトのファンになったと言われています。

若きライトの実験の場としての自邸兼事務所

ライトの初期の作品となる自邸兼事務所。荒削りではあるものの若きライトの実験の場として様々なアプローチが盛り込まれています。また、日本的な要素も多く持ったこちらは日本人としては親しみを感じられ、ライトの日本文化への興味の強さを伺うことができます。建物自体はもちろん、家具や照明など細かな点に到るまで、ライトの趣向の原点が感じられる名作住宅です。

Frank Lloyd Wright Home and Studio – フランク・ロイド・ライトの自邸兼事務所

開館時間:10:00~16:00
入館料:15ドル
URL : http://www.flwright.org
住所:951 Chicago Ave, Oak Park, IL 60302 USA

フランク・ロイド・ライトの初期の住宅建築群

自邸兼事務所の周辺にはフランク・ロイド・ライトがそのキャリアの初期に手掛けた住宅作品が数多く残っています。その後のモダニズム的な建築とは異なりますが、プレイリースタイルなどライトの特徴となる建築のアイディアが数多く垣間見られます。

「フランシス・J・ウーレイ邸」

おおよそライトらしからぬ外観の「フランシス・J・ウーレイ邸」。急勾配の屋根とシリンダー状のホールが特徴的。

「ネイザン・G・ムーア邸」

ライトのその後のデザインにつながるような外観の「ネイザン・G・ムーア邸」は、どこかライトが手掛けた帝国ホテルにも似ています。

「フランク・W・トーマス邸」

「フランク・W・トーマス邸」は、プレイリースタイルによく見られる屋根とアーチ型のエントランスが特徴的。微妙にライトらしさを感じます。

「ピーター・A・ビーチー邸」

レンガの使い方や屋根の形などライトの特徴を随所に感じる「ピーター・A・ビーチー邸」。実験的な要素もあったように感じます。

「アーサー・B・ヒュートレイ邸」

「アーサー・B・ヒュートレイ邸」は、初期の作品群の中でもシンプルでモダニズムに近づいているようにも感じるデザインです。プレイリースタイルやレンガの使い方など絶妙にデザインされていますね。

 

シカゴ郊外のオークパークにあるフランク・ロイド・ライトの自邸兼事務所や住宅作品群は、初期のライトを知る上でも重要な要素。また、ライトの住宅デザインのルーツを知ることができます。