アルヴァ・アアルトの遺作となった北欧フィンランドはユヴァスキュラにある文化施設「タウンシアター」
フィンランドの中南部の湖水地方に位置し、森と湖に囲まれ、静かでコンパクトな都市、ユヴァスキュラ。ここはアルヴァ・アアルトが少年時代に住んでいた街で、初めて設計の仕事を得たのもこのユヴァスキュラでした。アアルトとの所縁が深い街では、至る所にアアルトの建築作品を見つけることができます。今回はアアルトの遺作となったユヴァスキュラにある公共建築「タウンシアター」をご紹介します。
アアルトの遺作となった大型文化施設
1982年に完成したタウンシアターは今でも現役で使われている建築。ヘルシンキのフィンランディア・ホールなどもそうですが、アアルトの建築はフィンランドでは改修をしながら大切に使われているようです。
アアルトの建築手法が随所に散りばめられた空間
1階は、エントランスホールとクローク、チケット売り場のみであるものの、贅沢な広さが取られているため開放的な印象を受けやすく、入りやすいエントランスとなっています。
円柱の木のルーバーなどアアルトが特徴的に使う建築エレメントが使われています。
2階に上がるとホワイエがあって、アアルトらしい木や曲線を用いたあたたかみのあるインテリアが広がっています。フローリングと同じ色合いの木のバーカウンターにアアルトデザインの照明が設置されています。
広々しながらもリズミカルで心地の良い空間
建物は斜面に対して建てられているため、裏側からホワイエに直接アクセスすることができます。天井も高く設定され開放的な印象。アアルトのデザインに良く見られるハイサイドライトがここでも取り入れられています。
公園に面した開口部は人の視線を遮りながら公園の植栽だけを切り取るように開けられていて、プライバシーを守りつつ開放感が感じられる心地の良いスペースに。
台形や扇型をした平面が空間を単調にせず、広がりを持たせているのがわかります。ホール側の壁面の角を取ってアールにしている点も、高く大きな壁面にやわらかな印象をプラスしています。1階と同様ここでも円柱の木のルーバーが活用されています。
階段ホールもアアルトらしい丸みのあるペンダントライトが吊るされ、高い天井との間のアクセントとなっています。
もちろんここで使われている家具はartekのもので、曲線が使われたデザインがやわらかな空間に溶け込んでいました。
広く大きな空間も単調にさせない絶妙なバランス感
大きなゆとりがあるなかでも湾曲した壁面や丸い柱を巻いた円筒タイル、格子がリズミカルな 大きな開口部などを構成要素に取り入れることで、退屈になりがちな空間に変化をつけながら主張しすぎず、統一感のある落ち着いた空間となっていました。「タウンシアター」は、アアルト後期の作品ということもあってか、完成度の高い空間に仕上がっているように感じられました。
Jyväskylän kaupunginteatteri – ユヴァスキュラ・タウンシアター
URL : https://www.jyvaskyla.fi/kaupunginteatteri
住所:Vapaudenkatu 36, 40100 Jyväskylä, Finland