日本人の美意識を受け継ぐ切妻屋根や深い軒を持つ住宅「casa amare」
子どものころ見た記憶がある。
そんな懐かしさを感じる日本の家屋は、たいていがすとんした三角形の屋根だった。
そして、その屋根の端っこは、軒先という空間を作ってくれていて、
冬にはそこに干し柿や大根などが下がっていたものだ。
そんな懐かしい光景を取り戻せたら、もう一度日本の良さが見えてくるかもしれない。
「日本建築は屋根」という伝統
建築業界では、「西洋建築は壁、日本建築は屋根」とよく言われる。
また、『日本人とすまい』という著書のある上田篤氏も、その著書の中に「もともと日本建築は、屋根にそのデザインの粋をこらしたものだ。切妻、入母屋、寄棟などさまざまな屋根の形、千本、堅魚木、鬼がわら、卯建などの多くの屋根の装飾品の存在がそのことを端的に示している」と記している。
そんな日本の伝統を象徴するような切妻屋根を、casa amare は採用している。
切妻屋根とは、両下で二つの斜面に葺きおろした形の屋根で、古くから神社と町家に多く使われてきた。
日本の気候風土に適した深い軒
切妻屋根に限らないが、日本の屋根の特徴は、その軒の深さにあった。
防水技術や建材が現在のように発達していなかった時代には、雨の多い日本では、勾配のある屋根と、深い軒は雨風から家そのものを守るために必要なものだった。
西洋の住宅に比べると、日本や中国の住宅は屋根の美しさが特徴的と言われているが、中国の屋根と日本の屋根は趣きが違う。
中国の屋根は、隅に向かって大きく反り上がっているが、日本の屋根は直線的で、反り上がりは少ないのだ。
また、軒も中国より日本のほうが深い。
日本では夏の蒸し暑さが厳しいため、雨の日でも家の戸は開けておくことが多かったことが原因だと言われている。
「大和比」を基軸にしたcasa amare の端整なデザイン
日本の自然に適応し、長く使われてきた切妻屋根や軒といった建築方法は、近年、「近代化」の名のもとに減少傾向にあった。
以前なら、日本中どこに行っても、当たり前のように見ることができた切妻屋根や軒は、徐々に姿を消し、地方や神社など特別な場所に行かなければ見ることができないようになりつつある。
日本の伝統美を受け継ぐ「日本で暮らす日本人にとって本当に美しい家」を作りたいというcasa amare のコンセプトには、切妻屋根と軒は必須だった。
そして、その屋根の角度や軒の深さなど、全体のバランスは「大和比」を基軸としている。日本に昔から存在した「大和比」は、1対1.141。奈良の法隆寺や大阪の四天王寺の伽藍など、古来からの日本建築や仏像などの彫刻に用いられてきた。
casa amareでは、この大和比を、家づくりに最大限に生かしている。その結果、正面から見ても、斜めから見ても、見る人に強い印象を残すスタイルができあがった。そして、その外観は端整であり、日本の伝統美を感じさせてくれるのだ。
懐かしい形でありながら、最先端の新しさも感じられるcasa amare の家。
その美しさは、日本の伝統に裏打ちされたものだったのだ。
先人たちの知恵を尊重しつつ、新しい伝統を紡いでいくのがこの家なのだ。