街から切り離されるための壁。クローズド外構が生んだ、もう一つのリビング「本物志向の邸宅」
名古屋を拠点とするデザインウォール設計事務所が設計・施工を手がけた「本物志向の邸宅」。敷地面積は約200坪。4つの区画として分譲されるはずだった土地をひとつにまとめ、プライバシーと贅沢空間を追求した住まいです。この住宅における最大の特徴は、街の存在を忘れさせてしまう「外の空間設計」にあります。外構を建物の付属部分と割り切るのではなく、住まいそのものに融合させる発想によって実現されたこの環境。そこには、「閉じるからこそ守られる豊かさ」という思想が込められています。
4区画分の土地を一体化する、別格のスケール感

「本物志向の邸宅」が特筆すべき点のひとつは、そのスケール感です。

一般的に4軒の分譲住宅として切り売りされるはずだった約200坪の敷地。この広大な土地全体を「ひとつの邸宅」としてまとめ上げるには、高度な計画性と広がりのある設計が不可欠でした。

その結果、庭、中庭、駐車場、そして建物が区画の中でうまく連携するデザインが生まれました。まるで街の中に独立したひとつのエリアが出現したかのような構成は、単なる住宅の枠を超えた特別な空間といえます。多くの住宅が「区画の制約」に左右される中で、この住宅はその制約を完全に排除した自由なデザインの象徴となっています。

敷地は南北方向に奥行きを持ち、街に面した南側から住まいの内部へと、ゆるやかに空間が展開していきます。

南側の短辺にファサードを構え、両サイドにガレージを配し、その中央を通るようにアプローチが奥へと伸びていく構成です。視線を導くように計画された動線の先に、住まいの玄関扉が静かに現れます。建物は、玄関とリビングに挟まれるかたちでアウトドアテラスを内包し、全体としては緩やかなL字を描くフォルムに。外部からの視線を制御しながら、敷地の内側に向かって空間が開いていく構成が、この住宅全体の外構計画と密接に連動しています。
閉じるからこそ生まれる安心感

壁に囲まれた住まいとしての安全性に加え、この住宅は「外構」という言葉の新しい位置づけを感じさせます。閉じることで得られるのは、単なる隔絶ではありません。住まいを守り、街中でもプライベートな安心感を享受できる環境がそこにあります。

高い壁や忍び返しといった防犯対策を備えながらも、その存在を前面に主張しないのがこの住まいの外構です。庭や駐車場には、素材選びや植栽の配置によって柔らかな表情が与えられ、閉じた構えの中にも心地よさが感じられます。
屋根付き7台分。暮らしから逆算された駐車計画

まるでビルトインガレージの集合体のように配置された屋根付き駐車場。ここには、台数だけを優先するのではなく、「ストレスなく使える」ことを重視したデザイン思想が伺えます。

敷地内には8台分の駐車が可能ですが、日常的に使用する車を無理なく、スムーズに出し入れできるよう、駐車スペースは7台分としています。台数を追うのではなく、動線と余白のバランスを丁寧に検討した計画です。

また、屋根は雨天時の利便性や車両保護のみならず、庭側へと緩やかに延び、テラス空間と連続する構成となっています。駐車場と庭を機能ごとに切り分けるのではなく、外部空間全体をひと続きの居場所として捉えることで、敷地に奥行きと一体感をもたらしています。
アウトドアテラスという名の、もうひとつのリビング

リビングからそのままつながるアウトドアテラスは、室内の延長として日常的に使われる、もうひとつの居場所です。

ガレージ側の壁に沿うように長い造作ソファが設えられ、ダークグリーンやマスタードといった落ち着いた色合いのクッションが、空間にさりげないアクセントを添えています。

屋根に守られたこのテラスは、天候を気にせず過ごせる心地よさも魅力のひとつ。

周囲をやわらかく包み込む植栽と相まって、外でありながらも落ち着いた時間が流れる空間が生まれています。

室内と屋外の境界を曖昧にすることで、暮らしの幅を自然に広げるアウトドアリビングです。

アウトドアテラスのアクセントとなるのは、わずか5センチの水深で設えられた水盤です。限られた深さでありながら、水面の反射を効果的に取り込み、涼やかな非日常感を演出しています。

一般的な水盤は20〜30センチ程度の水深を確保するケースが多く、それに伴い構造や設備面での負担も大きくなりますが、本邸では水深を抑えることで、意匠性と合理性の両立を実現しています。さらに、用途に応じて排水することでテラスとしても使える可変性を備えており、空間を一義的に固定しない柔軟な設計思想が感じられます。
閉じることでしか得られない、外の豊かさ
「本物志向の邸宅」が印象的なのは、「閉じる」という選択によって、内側に向かう開放感と豊かさを丁寧に引き出している点にあります。外部からの視線を遮る一方、敷地内には庭やテラス、駐車スペースが連なり、暮らしの動きに寄り添う外部空間が広がります。外構を住まいの一部として捉え、日常の中に静かな非日常を取り込む構成。建築と外構が一体となり、規模や数値だけでは語れない価値をかたちにした一邸です。
デザインウォール設計事務所
URL : https://designwall.jp/
電話:0561-74-1188
所在地:〒470-0131 愛知県日進市岩崎町石兼51-1
後編:門をくぐった瞬間、スケールが反転する。内へひらく玄関とLDK「本物志向の邸宅」(4月6日 公開予定)