【後編】「アートと共に暮らす」スキップフロアでつくる“余白のある暮らし”。立体的に広がる開放的な住宅

前編:【前編】ワンルームのようで、居場所が点在する家「アートと共に暮らす」。立体構成で暮らしをデザイン

住まいに求められる価値が多様化するなかで、単なる機能性や広さだけではなく、「どのように暮らすか」という視点がより重要になっています。この住宅のスキップフロアと吹抜けによって立体的に広がる空間は、ワンルームのような一体感を持ちながらも、それぞれに異なる居心地を備えています。

立体的に広がる、スキップフロアの住空間

この住宅の大きな特徴は、スキップフロアによって構成された立体的な空間です。フラットなワンフロアではなく、床の高さをずらすことで、それぞれの場所に異なる役割と居心地が与えられています。リビング、ダイニング、寝室といった機能は緩やかにつながりながらも、完全に一体化することはなく、適度な距離感を保っています。

中心には大きなボリュームのコアが配置され、その周囲を回遊するように動線が計画されています。この構成により、視線が縦横に抜け、空間全体に広がりを感じさせます。階段も単なる移動手段ではなく、視線を導く装置として機能しており、上下階をつなぐ重要な要素となっています。

また、上階に設けられたセカンドリビングは、下階と視覚的につながりながらも独立した居場所として成立しています。この“つながりすぎない関係性”こそが、この住宅における心地よさの本質といえるでしょう。

吹抜けがもたらす、余白と開放感

スキップフロアと並んで重要なのが、吹抜けによる空間の広がりです。天井高さを確保することで、床面積以上の開放感が生まれ、住宅全体にゆとりをもたらしています。

特に印象的なのは、吹抜けを単なる“空間の抜け”として扱うのではなく、「余白」として機能させている点です。視線が上下に抜けることで、空間に奥行きが生まれ、時間の流れすらゆったりと感じられます。さらに、自然光が上階から下階へと落ちてくることで、時間帯によって異なる表情を見せるのも魅力のひとつです。

このような構成により、空間は単なる居住の場を超え、心地よく過ごすための“環境”へと昇華されています。

アートを引き立てる、静かな空間設計

この住宅では「アートと共に暮らす」というテーマが明確に設定されています。壁面に設置された作品は、空間のアクセントとしてだけでなく、暮らしの中で自然に視界に入る位置に配置されています。

ここで重要なのは、空間そのものが過剰に主張しない設計であることです。白を基調とした壁面やシンプルなディテールによって、アートが引き立つ余白が確保されています。

一方で、木質の素材や陰影のある天井が加わることで、単調にならず、空間全体に深みが生まれています。

つまり、建築とアートが競合するのではなく、互いを引き立て合う関係が丁寧に構築されているのです。

スキップフロアでつくる“余白のある暮らし”

スキップフロアと吹抜けを組み合わせた立体的な空間構成は、単なる開放感にとどまらず、多様な居場所と豊かな余白を生み出しています。そこにアートという要素が加わることで、住まいはより感性に寄り添う空間へと変化しています。

機能や効率だけでは測れない「心地よさ」を実現するためには、空間のつながりや距離感、そして余白の扱いが重要であることを、この住宅は示しています。