街角に佇む黒の美邸。都市の喧騒を包み込む、静と光の住まい「『常識』の外側へ」

山形県にある住宅街のメインストリート、交通量の多い交差点角地に立つ「『常識』の外側へ」は、目を引くブラックの外観と片流れ屋根のシルエットが印象的です。建築家が手がけたこの住宅は、都市にありながらも静けさを感じさせる工夫が随所に施されており、視線や音をコントロールしながら、豊かな暮らしを丁寧に描き出しています。

空間にリズムを生む、軒とポーチの構成

建築は2階建てで、周囲2面に広々とした駐車スペースを確保。

2階の開口部は最小限の3か所にとどめつつ、木板のアクセントや植栽のグリーンを組み合わせることで、黒い壁面の持つ重厚さに、あたたかみとやわらかさを添えています。

モルタル土間から広がる清潔感ある玄関

左右に大きく張り出した軒付きの玄関ポーチが、家の印象をさらに深め、街の一角に“住まいの気配”を自然に滲ませます。

扉を開けると、迎えてくれるのはモルタル仕上げの土間スペース。

その先には白壁とフローリングが爽やかに広がり、まるで空気が切り替わるような清々しさが漂います。

シューズクロークとクローゼットがつなぐ動線美

玄関左手には大容量のシューズクローク。

引き戸を開けるとその奥には、廊下を挟んでハンガーパイプ付きのクローゼットが配置され、収納力と動線を両立させた合理的な設計がされています。

採光を計算した、明るく静かな主寝室

主寝室は、外部の視線を遮る高窓からやわらかく光を採り入れ、白壁とともに空間を明るく演出。

時間によって変化する自然光が、穏やかな陰影を室内にもたらし、落ち着いた居心地のよさを生み出しています。

成長に寄り添う、フレキシブルな子ども部屋

子ども部屋は、ひとつのワンルームにふたつの扉を設けることで、将来的には間仕切りによって2室に分けられる構造に。

ライフステージの変化に柔軟に対応できる、子育て世代に優しい設計です。

白と光が導く、清潔感あふれる水まわり

また、水回りにも細やかな配慮が見られます。

白を基調としたランドリールームは、必要に応じてハンガーパイプが掛けられる設えで、生活感を抑えつつ、機能的に。

浴室には大理石タイルを取り入れ、洗練された雰囲気と高級感を演出。

脱衣所から土間を通って外部収納へとつながる動線も整備されており、洗濯物を外干しする際にもスムーズです。

スケルトン階段が叶える、つながりと開放感

そして玄関右手に設けられたスケルトン階段は、空間の抜け感を保ちながら、視線を2階へと誘います。

2階から降り注ぐ光が階下に届き、階段周り全体を明るく包み込みます。

暮らしやすさとデザイン性を両立した住空間

建築家のこだわりが随所に光る1階部分は、機能性とデザイン性を両立させた住空間となっています。外部からの視線を遮りながらも明るさを確保した主寝室や、将来的な使い方の変化に柔軟に対応できる子ども部屋、スムーズな家事動線を実現する水回りなど、日常生活を快適にする工夫が詰まっています。また、モルタル仕上げの土間やスケルトン階段が空間に広がりをもたらし、デザインの一体感を演出しています。

後編:光と木のぬくもりが広がる、空に近いLDK空間「『常識』の外側へ」(6月5日 公開予定)