ドーハにあるレム・コールハースによる書籍を一望できる大規模建築「カタール国立図書館」
ジャーナリスト、脚本家などマルチな才能を持つ建築家、レム・コールハース。彼が率いる建築設計事務所「OMA」では、オランダ・ロッテルダムにある「クンストハル美術館」やアメリカ・シアトルの「シアトル中央図書館」など数多くの有名建築を生み出しています。そんなOMAが手掛けた「カタール国立図書館」は、カタールの教育・科学・研究・コミュニティ開発を推進するカタール財団が運営する図書館。100万冊以上もの本を所蔵する42,000平方メートルにも渡る大きな建築は、市民のみならず、観光客にとっても人気のスポットとなっています。
教育機関が並ぶエリアに建てられた大型図書館
建築が建つのは、大学や研究機関などの教育施設が建ち並ぶエデュケーション・シティの一画。ドーハの都心部から西に10㎞ほど離れた面積約14k㎡の広大な土地に、2003年磯崎新のマスタープランで開発がスタートした「教育都市」エリアです。
「カタール国立図書館」は一般の人や学生も利用できる国立図書館で、カタールの教育・科学・研究・コミュニティ開発を推進するカタール財団が運営に携わっています。
100万冊規模の蔵書を誇る巨大空間
建築は高さ22mで、地下1階・地上2階建て。延べ面積は4万2000㎡と、数千人が利用できるほどの巨大な広さを持った大空間です。
100万冊規模の膨大なコレクションの収蔵と展示を実現するために、レム・コールハースは「全ての所蔵書籍を1つの空間で見られる建物とし、それをコンセプトの柱に据える」プランを提案し、プロジェクトが始まりました。
建物の形状は、2つの正方形のプレートを上下に引き離し、シェルの容器を造形するように折り畳んだようなフォルムに。
建物の2つの角を持ち上げスロープを設け図書館中心部へのアクセスを容易にしました。
機能性を考慮した書籍を検索・アクセスしやすい構造
館内に入ると、プレートが傾斜した部分の内側が大きな階段状のテラスとなっており、300もの書棚が続きます。
館内の中心部には、「都市の広場」と称する三角形のスペースを用意。広場からは、積み重なるようにして並ぶ書棚を一望でき、巨大なアリーナのようなスペースです。
まさに資料やサービスを直感的に見つけることが出来る見通しの良いデザインです。書棚の間には、所々に階段を設け、広場から書棚にアクセスしやすいように調整されています。
ひし形の大きな窓には、波打つガラス板を使用。
日の光がガラスを通過すると、館内に拡散され、一部はアルミ製天井板に反射して館内のコア部分へ届くようになっています。
柔らかい日差しが、読書をする人のための静かな空間を生み出しています。また、ライトを内蔵した本棚を階段状に整然と配置。
図書館中心部に広がる深さ6メートルの遺跡のような地下空間では希少性の高い書物を展示。大英図書館との共同でアラブとイスラムの歴史を文書化するカタールデジタル図書館も運営しています。
カタールの教育を支える大規模図書館
菱形のユニークな形状とは一変し、使用者の使いやすさが考慮された機能的な内部空間が広がる「カタール国立図書館」。文化面・技術面ともに優れた環境でカタール国民の生涯学習を支援する建築です。
カタール国立図書館
所在地 : District of Freedom, Education City, Al Luqta St, Doha,Qatar
開館時間 : 08:00~20:00(金曜のみ16:00~20:00)
公式サイト : https://www.qnl.qa/en