世界一眺めの悪いホテル!?バンクシーが手がけた「ウォールド・オフ・ホテル(The Walled Off Hotel)」
紛争地区に指定されているパレスチナ自治区のヨルダン西岸地区にあるベツレヘム。そこにはパレスチナとイスラエルを分断する高さ8メートル、全長450キロを超える巨大な壁が存在します。このイスラエルとパレスチナ自治区ヨルダン川西岸を分断する壁から、わずか4メートルの距離にあるのが「ウォールド・オフ・ホテル(The Walled Off Hotel)」です。
世界一眺めが悪いと言われる背景。
「ウォールド・オフ・ホテル」は、直訳すると「壁で遮断されたホテル」という意味で、2017年3月にオープンしましたが、全室から分離壁を見渡すことができるようになっていることより、世界一眺めの悪いホテルと呼ばれています。
壁との距離が近いため、客室に直射日光が入るのは1日わずか25分とのことですが、2007年にバンクシーが欧米のアーティストを招聘し、パレスチナ側の分離壁にグラフィティを描かせたことで壁はカラフルに彩られています。
あえてこの立地を選んだのには、プロデュースしたバンクシーの想いが詰まっています。このホテルの最大の目的は、パレスチナ人の苦境に対する認知度を上げること。「パレスチナ人の苦境に、少しでも多くの皆さんが関心を寄せてくれたら」というバンクシーのメッセージが込められています。
いつもテルアビブのクラブに足を運び、週末を楽しんでいるイスラエルの若者、およびイスラエルの厳しい監視によって大きなダメージを受けたイスラエルとパレスチナを行き来する巡礼者をターゲットに置きつつ、合わせて観光経済中心で成り立っているベツレヘムに仕事を生み出し、旅行客を呼び戻すことも目標としています。
20世紀初頭の雰囲気をコンセプトとしたこだわりの空間。
プロデュースを手掛けたバンクシー(Banksy)とは、イギリスのロンドンを中心に活動する世界で最も有名なストリートアーティストです。バンクシーは、作品をストリートなどの公共空間に描きますが、その時どきの大きな社会問題の現場に作品を残したり、紛争についてのステンシル作品を発表しています。政治的メッセージが強いグラフィティの作品が世界的に話題になっており、彼の作品が「発見」されると、毎回大きな騒ぎになることで有名です。街の壁に描かれた彼の作品は、複製されて様々なオークションで数百万ドルという高値で取引されています。また、自分自身の情報を公開しないことから「覆面アーティスト」などとも呼ばれています。ホテルの中にはバンクシーの作品も多数飾られています。
内装は、20世紀初めのディストピア・コロニアル調、またはデカダン・コロニアル調と評されています。壁には剥製の動物の頭の代わりにCCTVカメラ、鉄砲の代わりに壁を壊すトンカチ、ダイアナ妃の記念プレートなどが並んでいます。ルーム・キーは、すぐそこにある分離壁の形をしているなど細部に渡りこだわりが散りばめられています。
このホテルの客室数は9つ。部屋の種類には幅があり、一泊60ドル(約6,500円)のリーズナブルなオプションからスイーツまであります。Banksyだけでなく、Dismalandにも参加した Sami Musa、Dominique Petrinが担当したアーティストルーム、ドミトリー、ジャグジー付きのスイートルームがあります。どれもアーティスティックでウィットの効いた空間となっています。
ホテルだけじゃない楽しみ方も。
ウォールドオフホテルの中には、バー、アートギャラリー、本屋も併設されており、宿泊者以外も足を運び、イギリス委任統治時代からのパレスチナの歴史や現状について学べる場所にもなっています。
ロビーの空間はピアノバーとなっています。1917年にイギリスがパレスチナに手を付け出した頃の前哨基地がコンセプトで、1917年以降パレスチナが辿ってきた運命をテーマに作られています。
ギャラリーにはパレスチナのアーティストの作品が多く展示されています。 ミュージアムは、イスラエルが建設している分離壁について学べる施設となっています。
本屋さんには、現在までに分離壁について出版された全ての本があるとのことです。宿泊客はデポジットを払うとレンタルできる仕組みになっています。
中東のサンドイッチ「ファラフェル」も美味しい!
カフェでのオススメは中東のサンドイッチ「ファラフェル」。お肉の旨みが凝縮された絶品のメニューです!
「世界一眺めの悪いホテル」でバンクシーの世界観を体感!
「ウォールド・オフ・ホテル」は「世界一眺めの悪いホテル」=悪いホテルではなく、それも含めたコンセプトのアート空間です。このホテルは2018年に公開されたドキュメンタリー作品『バンクシーを盗んだ男』にも登場し、ストリートアーティストとして有名なバンクシーの世界観を体感できる空間となっています。
ウォールド・オフ・ホテル – The Walled Off Hotel
URL:https://walledoffhotel.com/facilities.html 所在地:182 Caritas Street, Bethlehem, Palestine