ミース・ファン・デル・ローエが立ち並ぶイリノイ工科大学にある「クラウンホール」の全貌とは?

近代建築の四大巨匠の1人、20世紀のモダニズム建築を代表す建築家である「ミース・ファン・デル・ローエ」。彼が建築学科の主任教授を務めたことでも有名なイリノイ工科大学は、ミース建築が立ち並ぶ名スポットだ。中でも大学敷地内にある「クラウンホール」は、「ミース・ファン・デル・ローエの傑作の1つ」と言われている。現在も日常的に学生たちによって使われているクラウンホール。その内部を覗いてみよう。

近代建築 四大巨匠の1人「ミース・ファン・デル・ローエ」

建築家のミース・ファン・デル・ローエは、20世紀のモダニズム建築を代表するドイツの建築家である。ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライト、ヴァルター・グロピウスと共に、近代建築の四大巨匠の1人として世界中から知られており、近代建築を知る上で重要な人物であることは言うまでもない。

彼の遺した代表的な標語「Less is more.」は「無駄な部分を削ぎ落としたデザインが、より豊かなデザインである」という意味を持つ。その言葉の通り、彼の作品の数々は、ミニマムで遮る壁や柱を持たせない大空間デザイン「ユニバーサル・スペース」という概念を唱えている。

ミース・ファン・デル・ローエの作品宝庫「イリノイ工科大学」

建築家ミース・ファン・デル・ローエは、近代建築の四大巨匠の1人「ヴァルター・グロピウス」の推薦で1930年からバウハウスの第3代校長を勤めていたが、1933年にナチスによってバウハウスが閉鎖。ミースはアメリカに亡命し、シカゴのアーマー大学(後のイリノイ工科大学)に建築学科の主任教授として招かれた。その経緯の中で、同大学のキャンパス計画も手がけ、敷地内にはミースの建築が多数遺されている。

グリッド軸に沿って街路が整備され、植栽が規律正しく並ぶ、キャンパス内。ミースらしいの規律正しくミニマムなデザインを、大学全体の風景からも感じとることができる。

キャンパス内のミース作品は、どれもがまるで「クラウンホールを量産」したのような建築であることが印象的だ。彼が提唱した「空間もフレキシブルなら建築も量産可能にする」という理想が実現されているように思える。

ミースの傑作と言われる「クラウンホール」

イリノイ工科大学敷地内にある「クラウンホール」は、ミースが主任教授を務めた「建築学科」のための施設であり、ミース自身の設計により実現した建築だ。

1956年完成したクラウン・ホールは、数あるミースの作品の中でも、「ファンズワース邸」や「レイクショア・ドライブ・アパートメント」などとともに傑作と言われている。

ミニマルなデザインで構成されたファサード

水平垂直のみで構成され、黒く塗られた鉄骨とガラスのみで構成されたクラウンホールの外観。型鋼とフラットバーで構成される断面ディテールは、力強さを感じながらも、どこか凛とした雰囲気があり、絶妙な空気感が漂う。

ガラスはクリアガラスと乳白色のガラスの2種を採用しており、透明感のある軽やかさと、フォルムをより抽象させる美しさが両立されたデザインだ。

トラバーチンの床だけが素材感がある趣も、実に「ミース建築らしさ」を感じることができる。薄いスラブ階段は、どの角度から見ても構造が美しい。

内部は、柱のない圧巻の大空間

中に入ると、高さ66m・奥行36mの大きな「箱」に、水平垂直の秩序によって構成された究極のユニバーサルスペースが広がる。

床スラブを地面から持ち上げ、その床を支える柱を外部へと配置することで、室内には柱の全くない圧巻の大空間が実現している。

堂々と佇むユニバーサル空間で、ミースの理想建築を体現できる建築

イリノイ工科大学「クラウンホール」は、建築自体の美しさとミースの唱えた「均質で自由な空間 = ユニバーサルスペース」の概念や、理想の建築を体現できる建築である。

現在も日常的に学生たちによって使われているクラウンホール。ミースらしい概念によって設計された大空間を、研究室やワークスペース、建築模型展示など「使う者によって自由に空間を活用できる」彼の理想がリアルに機能している様子も印象的だった。

S. R. Crown Hall – イリノイ工科大学クラウンホール

開館時間:8:00~18:00(土・日曜日9:00~15:00)
URL : http://arch.iit.edu/about/sr-crown-hall
住所:3360 S State St, Chicago, IL 60616 USA