〈MOMENT〉が手掛けたアートを愉しむリノベーション住宅「RESIDENCE WS」
デザイナー・平綿久晃と渡部智宏によるデザインオフィス〈MOMENT〉。株式会社イッセイ ミヤケの国内外にある複数ブランドの店舗デザインを筆頭に、多種多様な企業、ブランドに対して空間からグラフィックまで垣根のないシームレスなコミュニケーションを提案しています。〈MOMENT〉が内装・インテリアデザインを手掛けた「RESIDENCE WS」は、アートが好きな夫婦のためのリノベーション住宅。商空間の実績が多い〈MOMENT〉ですが、まるでギャラリーのような落ち着きのある、心地の良い居住空間となっています。
ギャラリーと名付けられたアートのための余白の一室
都内マンションの一室をすべてスケルトンにして全面改修した「RESIDENCE WS」では、アートが生活の一部としてあり、日々変化のある暮らしを望むクライアント夫婦の生活スタイルから、“新陳代謝”をコンセプトにデザインが進められました。
その象徴として、住まいの中央にアート作品を愉しむための「ギャラリー」と呼ばれる余白空間が設けられました。
ここは一切の生活家具を置かない基本ルールのもと、天候や気分に合わせてアート作品が頻繁に掛け替えられ、常に眺めが移り変わる場となります。
余白が生み出す自由な暮らし
ギャラリーに隣接するダイニングは、5~6人で食事ができる広さ。それ以上の来客時や気分を変えたい時には、テーブルをギャラリーに一時的に移動して食事を愉しむなど、モノを置かない余白があることで、暮らしの中の様々なシーンに対応することができ、気持ちを豊かにしてくれます。
間取りが固定されがちなワンフロアの住まいにおいて、ギャラリーは室内にも移ろう風景をもたらす余地を与えてくれる存在となっています。
アート作品がインテリアの仕上げに
アートありきの設計過程のなかで、この住まいにおいてはアート作品そのものが内装の仕上げ材となっています。
本来であれば壁を仕上げて終えるところを、所有の作品群を事前に把握し、壁を背景、つまり下地材として扱っていく中で、下地材と仕上げ材の境目を曖昧にしてみることに挑戦し、開口部では壁構造の躯体がそのまま露出した意匠となっています。
不完全で骨太で繊細。そんな断面にアート作品たちが加わることで、空間としてデザインの均衡を保っています。
また、既存の梁などは柔らかい影を落とすことを意図し、ディティールをデザインすることで心地の良さをプラスしています。
アートを愉しむ余白が生み出す自由で豊かな空間
暮らしの中心にアートを設定して空間をデザインすることで生まれた余白。生活空間としての利便性だけではなく、暮らす人の価値観、嗜好性を丁寧に汲み取った空間とすることで、日々心地よく、生活の様々なシーンに対応できる住まいとなりました。