建築全体が洞窟のような伊東豊雄が手掛けた台湾のオペラハウス「台中国家歌劇院」
プリツカー賞も受賞した建築家であり、世界的にも有名な伊東豊雄によって設計された台湾にある台中国家歌劇院。「世界で最も建築が難しい」と言われ、約6年もの歳月をかけて作られた。「世界9大新ランドマーク」にも選ばれ、設計のコンセプトは音の洞窟。「芸術と心の音を聴く」という意味合いが込められている建築である。
伊東豊雄による大迫力のオペラハウス
台中の中心部からバスで30分ほどの場所である台中国家歌劇院。息を飲むほど圧巻される建築だ。まず、ガラスとコンクリートで作られているユニークさ、不思議な曲線により、ガラス面・コンクリート面とで視点を変えて見てみると、大きな壺のように見える。建築の前には、大きな噴水や芝生があり、人々の憩いの場となっている。
中へ入ってみると、証明や空間が、まるで地下、洞窟の中にいるようだ。天井や壁が不規則な曲線でデザインされており、奥へ奥へと導かれていく感覚を味わう。
三次元曲面の構造体「カテノイド」
この建築の特徴である、カテノイドと呼ばれる三次元曲面の構造体が、床、壁、天井といった建築要素が一体となっている。広々とした空間の中に、それらが同時に枝分かれしながら、滑らかに繋がっているのだ。
自然光や照明の光が天井に反射して、グラデーションを作り出している。その日の天気や日時により、見え方が違ってくるのも面白い。
曲面壁を組み合わせて構成されているので、垂直に立つ壁がなく、空間が分断されていない。今いる場所と、向こう側が連続している様子が面白い。外部の水流を引き込んだ小川のような水路もあり、癒しの空間ともなっている。
幻想的なムードの「ホワイエ」
2階にはメインホールとサブのホールがある。「ホワイエ」と呼ばれる劇場のロビーや休憩所は、天井高19mもあり、垂直方向の伸びを意識させ、洞窟や大聖堂を思わせる崇高な空間である。梁や柱といった建築にあるべきものがまったく見当たらない。どこを見渡しても不規則なカーブでデザインされているのだ。
壁の丸い玉は、外の自然光を感じることができ、夜になれば、内側から灯される明かりが外へ漏れるようになっているのだ。そして赤の絨毯、壁面には、台湾の現代美術家、マイケル・リンの壁画が描かれており、空間そのものがラグジュアリーな雰囲気を醸し出している。
ここでも、カテノイドの有機的な形状は、有機的に空間を繋げている。
ショップやレストランも楽しめる。
建築内には、ショップもある。「世界で最も美しい書店」に選ばれたことのある「好様VVG」グループが運営する書店やセレクトショップ、レストランが入っているため、独特の陳列方法や構造を見ながら、楽しめること間違いない。
見渡す限りに、曲面で溢れる空間。
緩やかなカーブを描く窓ガラスに、濃いめのブルーをした柱が、まるで絵本の世界のようでとてもユニークである。
局面に合わせたベンチもあり、広いガラス張りの窓により開放感を味わうことができるので、ちょっとした休憩にも最適だ。
トイレに向かう空間も曲線でデザインされており、足下も照らすライトなど、とても幻想的な雰囲気である。
屋上も、グネグネと曲線になっており、開放的な空間である。そして周りには高層ビルが立ち並ぶが、芝生や植物の配置により、深呼吸をしたくなるようなスペース。撮影スポットになりそうな場所もあちこちにある。
敷地内には、台中市の要望で施工の検討用のモックアップが残されている。
この建築の最大のポイントであるカテノイドと呼ばれる三次元曲面の構造体。床や壁や柱といった主要な建築の要素の境界が曖昧で、それらが切れ目なく繋がっており、ホール、ホワイエ、ロビーといった空間が水平垂直に枝分かれしながら連続しているのが面白い。床がそのまませり上がって壁になり、壁が柱の役割をしながら天井に繋がり、そしてそのまま上の階の床になるといった具合に緩やかに変化していく空間は、不思議で独特な感覚を味わうことができる。まさに、建築全体が劇場である台中国家歌劇院であった。
台中国家歌劇院
電話:+886 4 2251 1777
URL : http://www.npac-ntt.org
住所:407台中市西屯區惠來路二段101號