「casa amare」の切妻屋根にこめられた家づくりの日本的思想
日本の伝統的な美しさをもった家づくりを目指すcasa amareがこだわりをもっている屋根。casa amareのシンボルともいえる三角形の屋根。
それが切妻屋根だ。
ここでは、切妻屋根が日本人の琴線に触れる理由を探ってみる。
日本人が切妻屋根に懐かしさを感じる理由
「日本で暮らす日本人にとって本当に美しい家とは」「日本人に心から愛される家とは」をテーマにした家づくりに取り組んできたcasa amareプロジェクトの1つの大きな柱となっているのが「切妻屋根」だ。
きわめて直線的に、すとんと頂点から切り落とすような三角形の屋根は、なぜか日本人の郷愁を呼び起こす。
なぜ、日本人は「切妻屋根」に、懐かしさを感じるのか。
その謎を解くヒントは、伊勢神宮にある。casa amareプロジェクトチームも幾度となく訪れた伊勢神宮は、いわずと知れた世界遺産。ドイツの建築家・ブルーノ・タウトが、その著書『ニッポン』の中で、「日本のまったく独自な文化の鍵」「完全な形式を備えた日本の根源」と称している建築物だ。
伊勢神宮を象徴する茅葺の切妻屋根
伊勢神宮は、20年ごとに社殿を建て替えるという「式年遷宮」というしきたりによって、7世紀後半から現在に至るまで、まったく姿を変えることなく、人々の前に存在し続けている。
つまり、千年以上も前の日本人が崇めたものとまったく同じ造作のものが、今でも、日本人にとっては神々しく感じられるのだ。
その伊勢神宮の大きな特徴が屋根だ。
千木、堅魚木という装飾がついてはいるが、基本的には伊勢神宮の屋根は茅葺の切妻屋根だ。千木、堅魚木は、装飾だけではなく、本来は屋根の茅を押さえ、防風の役割をもっている。
千年以上前の日本人にとって、おそらく魂のよりどころとなる場所であっただろう伊勢神宮も切妻屋根だということは、古から日本人にとって、切妻屋根は親しまれてきた、ということなのだろう。
「大和比」のもつ安定感と美しさ
また、casa amareは、試行錯誤を繰り返した末、「大和比」を基軸としたデザインを採用している。「大和比」とは、1:141という比率のことで、奈良の法隆寺、大阪の四天王寺の伽藍、金堂など古来からの日本建築や仏像などに用いられてきた。身近なところでは、はがきや新聞のサイズが大和比になっている。日本人の感覚には、もっとも安定し、美しく感じられるのだという。
casa amareは、この「大和比」という日本の伝統的な比率を建物に最大限に生かすことを考えられている。
だからこそ、この切妻屋根を抱いたシンプルな形の家は、初めて見た人にも懐かしさを感じさせ、たとえ新築であってもずっと前からそこにあったかのような日本の風土への親和性をもち得るのだ。
切妻屋根は、ある意味、もっとも単純な形の屋根であり、お絵描きができるようになったばかりの子どもが「おうち」の絵を描けば、たいていが切妻屋根を描くに違いない。しかし、その単純さゆえに、古代から日本人に愛され、親しまれ、受け継がれてきた。いわば「日本の伝統美」なのだ。
一時期は、西洋風の住宅に押され、切妻屋根も風前の灯になっていた。しかし、今、さまざまな分野で日本の良さが見直され、評価されているようにこの懐かしい形状の屋根も再評価されてくるに違いない。
夜空に映えるcasa amareの三角窓の灯かりを見ると、いつものアスファルトの道路も、「家路」と呼ぶにふさわしいように感じる。
日本人に古くから愛された切妻屋根は、これからの日本の住宅を、「家族が仲良く暮らす暖かい我が家」にしてくれる気がする。