2026年夏、長坂常/スキーマ建築計画が手掛ける香川県小豆島に「島泊 / 島飯 / 島湯」が開業

2026年夏、瀬戸内海に浮かぶ香川県小豆島の玄関口・土庄港から徒歩1分の場所に、新施設「島泊 / 島飯 / 島湯(シマハクシマメシシマユ)」が開業します。建築設計を手掛けるのは、長坂常/スキーマ建築計画。ホテル・レストラン・温泉という3つの機能を一つの建物にまとめながらも、いわゆる“オールインクルーシブ”的に施設内ですべてを完結させるのではなく、来訪者が島内を回遊し、島の人や暮らしと交わるきっかけを増やす——そんな「共存共栄型」の拠点を目指します。改修時期を迎えた小豆島の老舗「オーキドホテル」を起点に、観光と生活のあいだにひらかれた、新しい島の入口が生まれようとしています。

小豆島・土庄港徒歩1分、「島と人が交わる」ための複合施設という思想

「島泊 / 島飯 / 島湯」外観イメージ

「島泊 / 島飯 / 島湯」は、小豆島の交通結節点である土庄港のすぐそばに整備される複合施設です。ここで重要なのは、施設を“ホテル”という言葉で一括りにしなかったこと。

宿泊は「島泊」、食は「島飯」、湯は「島湯」と、機能を3つの入口に分けることで、旅の目的や過ごし方に応じて島との接点を選べる設計になっています。たとえば「今日は温泉だけ」「夕方に食だけ寄る」「港に着いたらまず一泊して島を巡る」など、行動の自由度を確保しながら、島の回遊を自然に促すつくりです。

背景にあるのは、小豆島が抱える少子高齢化や人手不足といった課題への向き合い方でもあります。観光客を一箇所に囲い込み、宿泊・飲食・入浴をすべて館内で完結させるモデルは、短期的には便利でも、島全体の活性化にはつながりにくい。

そこで本プロジェクトは、島内の他施設を利用する人や島民にも開かれた場として設計されました。船待ちの時間に立ち寄れる、港町の“余白”として機能する——土庄港徒歩1分という立地は、単なるアクセスの良さではなく、島と人をつなぐ「交差点」として最大限に活かされます。

長坂常/スキーマ建築計画が描く「半建築」的アプローチ

建築設計を担う長坂常/スキーマ建築計画は、家具から建築、街づくりまで領域横断で取り組み、既存環境の中に新しい価値を見出す方法論で知られています。

ホテルラウンジ(イメージ)

本件でも、オーキドホテルの改修という条件を単なるリニューアルに留めず、島の未来にとって意味のある“拠点の再編集”へと展開させている点が印象的です。

資源が限られる島という環境を踏まえ、建設工事は一気に進めるのではなく段階的に施工。できる限り島や瀬戸内の資源を活用し、島や瀬戸内の職人とともに、細部までこだわりながら時間をかけて丁寧に形にしていく——そのプロセス自体が、施設の思想と直結しています。

宿泊機能の「島泊」は、全31室・9タイプという構成で、広さは21㎡〜90㎡と幅を持たせています。短期滞在はもちろん、過ごし方を変えながら島と付き合うような滞在も受け止められるスケール感で、“旅のスタイルに合わせて心地よさを選べる”ことが狙いです。

画一的な客室を並べるのではなく、部屋ごとに滞在の輪郭が変わるように設計されている点も、スキーマらしい編集性と言えます。ホテル予約は2026年4月頃に開始予定とされ、開業へ向けて段階的に情報が公開されていく予定です。

長坂常/スキーマ建築計画

Photo: Yuriko Takagi

1998年東京藝術大学卒業後にスタジオを設立。スケールやジャンルを問わず、家具から建築、街づくりまでを手がける。素材そのものから探求し、既存の環境の中に新たな価値を見出してきた。2022年に「引き算」や「知の更新」といった従来の建築観を覆す自身のものづくり論をまとめた著書『半建築』を出版。

「島飯」と「島湯」がつくる、観光と暮らしのあいだの社交場

施設のもう一つの核が、食と湯がつくる“日常の延長としての滞在価値”です。「島飯」では、小豆島をはじめ瀬戸内の旬の食材を扱い、素材そのものの魅力を引き出す料理を提供。

古来の調理法である原始焼きなども掲げられており、島の自然や時間、知恵を味として体感できる設計になっています。旅先のグルメを消費するのではなく、その土地の技術や背景を“食べながら理解する”——そんな学びの入口として機能していきます。

そして「島湯」は、小豆島で最初に湧出した源泉「塩の湯」を使用。

ロウリュウサウナや水風呂も備える温泉施設として整備されます。

温泉は宿泊者だけのものではなく、島民や日帰り利用者にも開かれた存在。旅人にとっては到着直後のリセットにも、島の人にとっては日常の延長にもなる。

ここで生まれる緩やかな交差が、島にとっての“新しい社交場”になっていくはずです。

宿泊・食・湯が互いに補完し合いながらも、それぞれ単体で成立するからこそ、島の暮らしに溶け込み、結果として島全体の回遊を促す拠点になります。

地域全体を活性化させる“開かれた拠点”「島泊 / 島飯 / 島湯」

「島泊 / 島飯 / 島湯」は、土庄港徒歩1分という小豆島の玄関口に誕生する、ホテル・レストラン・温泉の複合施設です。けれど本質は、施設内で旅を完結させることではなく、来訪者が島内を行き来し、人や暮らしと交わることで地域全体を活性化させる“開かれた拠点”であること。長坂常/スキーマ建築計画が、既存ホテルの改修を島の未来の導線へと変換し、島や瀬戸内の資源と職人の手仕事を丁寧に積み重ねながら形にしていく本プロジェクトは、これからの観光と地域の関係を更新する試みとして注目したい存在です。

島泊 / 島飯 / 島湯(シマハクシマメシシマユ)

URL:https://shimahaku-shimameshi-shimayu.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/shimahaku_shimameshi_shimayu/
住所:〒761-4102 香川県小豆郡土庄町甲5165-216