自然とアートの融合が生み出す絶景の空間「Tunnel of Light(清津峡渓谷トンネル)」

3年に1度のアートの祭典「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」。新型コロナウィルスの影響で2021の開催は延期となりましたが、会場に足を運べば多くの常設作品を鑑賞することができます。その中の一つ、「Tunnel of Light(清津峡渓谷トンネル)」は、その名を知らずともSNSでその光景を見かけたことのある人は多いのではないでしょうか。水面とトンネル内部に映える四季それぞれの渓谷の美しい風景は、忘れられない思い出になるはずです。

「日本三大峡谷」の1つ

トンネルのある清津峡渓谷は、新潟県十日町市にある景勝地で、1949年に国立公園に指定されています。その美しさから、富山県黒部市の黒部峡谷、三重県多気郡の大杉谷とならび、「日本三大峡谷」の1つに数えられています。全長750メートルのトンネル内には、建設当時から3か所の見晴台と終点のパノラマステーションが設けられています。これらが2018年の大地の芸術祭にて、アート作品として改修されました。改修には自然の「5大要素」(木、土、金属、火、水)を活用し、この歴史あるトンネルを変容させたのです。

手掛けたのは“山水都市”を目指す中国発の建築事務所

Via : Wikipedia.

作品を手掛けたのは、中国出身の建築家 マ・ヤンソンが2004年に設立したMAD Architects。ダン・チュンと早野洋介の3名にて運営される建築事務所で、北京とロサンゼルスに事務所を構えています。東洋的自然観を基に現代社会における新しい建築の在り方の発展に取組み、人々の感情を中心に据えた未来都市「山水都市」のコンセプトを核とし、人と都市と環境との新たな関係性の創出を目指しています。

柱状節理の岩肌を間近に見る、第一見晴所

まず到着するのが第一見晴所。ここからは、柱状節理(地下から流入したマグマが冷えて体積が収縮して形成されたもの)の岩肌を間近に見ることができます。清津峡の渓谷美と柱状節理の見事なコンビネーションは、国の名勝天然記念物にも指定されています。

トイレから絶景が望める第二見晴所

まるで宇宙船のようなメタリックなトイレが目を引く第二見晴所。中に入るとマジックミラーのような、外から中は見えないものの中からは外が見える特殊な素材を使っているので、便座に座ると、清津峡渓谷の美しい柱状節理や四季折々の景色を眺めることができます。

アートとして生まれ変わった、第三見晴所

さらに奥に進むと第三見晴所に到着します。壁に散りばめられているのは「しずく」をイメージした鏡面になっているライトで、暗がりの中で不思議な赤い光を放っています。

無数の鏡に映りこむ人々や大自然は、近未来的かつ幻想的な印象になっています。

あの絶景の秘密がここに。パノラマステーション

そしていよいよ一番奥にパノラマステーションが現れます。

かまぼこ型の形状はほかの見晴所と同様なものの、トンネル内部がミラー状になっているうえ、床は一面に沢水が浸されている水盤となっており、渓谷の景色の映り込みがとても美しく楽しめます。

自然と人間の関係性を見直すアート作品

自然の「5大要素」を利用しながら、建築的な空間とアーティスティックな雰囲気を楽しめる「Tunnel of Light」。人間と自然の関係をあらためて考えさせられる空間を、現地で体感して見るのはいかがでしょうか。

「Tunnel of Light(清津峡渓谷トンネル)」
清津峡渓谷トンネル受付時間:8:30~16:30
清津峡エントランス営業時間:9:00~16:00
入館料:大人600円、小中学生300円
住所:新潟県十日町市小出