鏡のような池に浮かぶ、妻有の風景を上書きする作品。レアンドロ・エルリッヒの「Palimpsest:空の池」

3年に1度のアートの祭典「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」。新型コロナウィルスの影響で2021の開催は延期となりましたが、会場に足を運べば多くの常設作品を鑑賞することができます。さらに今年は2大拠点施設の「越後妻有里山現代美術館 MonET(モネ)」と、まつだい雪国農耕文化村センター「農舞台」がリニューアルオープン。真四角の建物の中心に、池を擁する「越後妻有里山現代美術館 MonET」の独特のデザインは、京都駅などで知られる建築家・原広司によるものです。この池を活用し、丸ごと作品へと変貌させたのが、アルゼンチンのアーティスト、レアンドロ・エルリッヒの「Palimpsest:空の池」です。

常識を見直す機会を与える レアンドロ・エルリッヒ

レアンドロは、人間がどのように事象を捉え、空間と関わり、現実を把握していくかを追求する作品を多く発表しています。森美術館での大規模個展で60万人以上を動員するなど、日本で大きな人気を集めるレアンドロ。人々の常識を問うような体験型の作品を多く手がけるそのスタイルは、ここでも健在です。

建築の記憶を上書きしていく「Palimpsest:空の池」

美術館の中央にある回廊に囲まれた大きな池の水面に光が反射し、空や建物を鏡のように映す「Palimpsest:空の池」。一見なんの変哲もない光景であるものの、建物の2階に上がって俯瞰して池を眺めると、建物の鏡像が複層化している不可思議な現象を目の当たりにします。そして、ぐるりと池の周囲を回っているうちに、そこに映っているものは美術館そのものであることに気付かされるのです。


なお作品名のPalimpsest(パリンプセスト)とは、書かれた文字などを消し、別の内容を上書きした羊皮紙の写本を意味します。レイヤーを重ねながら歴史をつくってきた人類同様、この作品も、建築の実際の影をなぞるように上書きされていくのかもしれません。

なお、リニューアルした「越後妻有里山現代美術館 MonET」では、常設作品の入れ替えを行い、名和晃平、中谷ミチコ、“目”などの著名な現代美術作家を新たに迎えており、これまで訪れたことのある方も改めて楽しめる内容となっています。

【新作作家】

名和晃平(日本)/中谷ミチコ(日本)/目(日本)/森山大道(日本)/イリヤ&エミリア・カバコフ(ロシア)/マルニクス・デネイス(オランダ)/ニコラ・ダロ(フランス)
※順不同
※ニコラ・ダロ作品は公開日調整中

レアンドロが見た、越後妻有の自然を感じる作品

建物を写す鏡のようなこの池には、レアンドロが越後妻有に来るたびに見ていた、空を映す鏡のような水田の風景が重ねられています。アートに触れる機会が減ってしまった昨今、越後妻有は様々な現代アートを体感できる穴場かもしれません。常識を覆すようなレアンドロの作品から、芸術祭を巡る旅をスタートするのはいかがでしょうか。

「Palimpsest:空の池」

開館時間:10:00-17:00(最終入館16:30)
休館日:水曜休館(祝日の場合は翌日休館、企画展により変更があります)
入館料:一般800円、小中400円(企画展により変更があります)
※冬季(12-3月頃)は降雪状況により作品がご覧いただけなくなりますのでご了承ください。
住所:越後妻有里山現代美術館 MonET(新潟県十日町市本町6-1)内