スティーヴン・ホールが手掛けた代表作、ヘルシンキ現代美術館「キアズマ」

アメリカのタイム誌にも注目される著名建築家スティーブン・ホール。彼の代表作とも言える建築がフィンランドのヘルシンキにあるヘルシンキ現代美術館、通称「キアズマ」だ。「光の魔術師」としても知られるスティーブン・ホールが手掛ける建築の形とは?太陽軌道をも味方につけた「奇跡の建築デザイン」を見てみよう。

ヘルシンキ現代美術館「キアズマ」とは?

フィンランドの首都ヘルシンキにあるヘルシンキ現代美術館。8000点におよぶ現代美術のコレクションは、フィンランドと周辺国の作家の作品を中心に集められている。

現代美術に関する普及や教育だけでなく、「市民の憩いの場」「待ち合わせ場所」「美術体験の場」としてのプログラムも持った美術館としても知られ、「キアズマ(交差地点)」という名で通称され愛されている。

手掛けたのは建築家、スティーブン・ホール

ヘルシンキ現代美術館の建築は、1992年に実施されたコンペでスティーブン・ホールの提案が選ばれ実現した。建築家スティーブン・ホールは、アメリカのタイム誌に「目と心の両方を満たすことのできる最高の建築家」と称賛されるほどの著名建築家だ。彼は通称「光の魔術師」とも呼ばれ、自然光を巧みに美しく取り入れる建築は多くの人々を魅了して止まない。

ヘルシンキの太陽軌道に基づいたカーブが特徴的な外観

アルファベットの「D」のような断面が印象的なヘルシンキ現代美術館「キアズマ」。大きくない敷地を有効に使いながら太陽軌道に基づいた「緩やかなカーブ」を描くことで、自然光をひと繋がりに取り入れることができている。

氷河や雪渓の割れ目「クレバス」を連想させるエントランスホール

エントランスに入ると、シンプルなトーンで抑えられた「非対称的な空間」が広がる。そこはまるで、氷山の一角。氷河の割れ目のような造形的な建築デザインが人々の目を惹く。

滑らかなスロープで繋がる展示を巡る、空間散策

外形で印象的だった「曲線でできた壁面」にあわせて、ゆるやかなカーブを描く館内。引き延ばされながら湾曲する壁で作られたスロープは、展示空間を滑らかに繋げ、それぞれの展示室を次から次へと展開する。

吹抜天井からの光を浴びながら、展示室の間を空間散歩をするような導線が楽しい。スロープの奥にある螺旋階段も、氷の彫刻のような美しいフォルムだ。

非対称性な曲線で魅せる光と空間の連続性

低角度からの光を誘い込み、大きな弧を描く最上階。外形の曲線でできた空間がダイナミックなトップライトで照らされている。

所々に現れる大きな開口部からは、北方高緯度地域特有の「横から差し込む自然光」が反射し、氷河のような白壁の空間をより一層明るく照らす。

展示空間全てに自然光が入るよう計画された建築設計は「光の魔術師」と呼ばれるスティーブン・ホールが手掛けたことで実現した、「非対称性と曲線」から成る奇跡の空間。ヘルシンキ現代美術館「キアズマ」を彼の「代表作」として称されることも納得の、巧みな建築デザインが広がっていた。

Nykytaiteen museo Kiasma – ヘルシンキ現代美術館・キアズマ

開館時間:10:00~20:00(土曜日:~18:00/日曜日:~17:00)
休館日:月曜日
入館料:15€
URL : https://kiasma.fi
住所:Mannerheiminaukio 2, 00100 Helsinki, Finland