【前編】建築家の設計力が光る「繋がる家、つなげるいえ」光と空間が溶け合う都市型住宅
南側の幹線道路を走る車の音、すぐ北には高速道路の高架が走る。周囲は一見、住宅を建てるには騒がしすぎる環境に思えるかもしれません。しかし、その敷地に誕生したのは、外の喧騒を忘れさせるほどに静謐で洗練され騒がしい街角に、静けさを宿す箱た、ひとつの住まいです。
騒がしい街角に、静けさを宿す箱

この住まいは、灰色のキューブ型のフォルムが、周囲の住宅群の中にひっそりと、しかし確かな存在感をもって佇んでいることがわかります。高速道路の高架とすぐ隣り合わせという立地でありながら、この建物はまるでそれを意に介さないかのように、凛と立っています。
箱のような外観が語るもの

正面からの外観が、まずその潔さで目を引きます。グレーに統一された塗装仕上げの外壁はほとんど窓を持たず、大きな一枚の壁のように見えます。余分な装飾を一切そぎ落とした「箱デザイン」は、住まい手がもともと希望していたテイストでもありました。

ただし、完全に閉じているわけではありません。正面右手に縦に長く切り取られた開口部があり、そこから温かみのある木板張りの天井がちらりと覗いています。この小さな「覗き窓」のような開口部が、外観に奥行きと表情を与えているのです。
中庭テラスが生み出す「内なる外」

外観の印象とは一転、建物の奥へと回り込んだ中庭側では、別の表情が広がっています。大きな掃き出し窓が複数並んだ中庭テラスは、室内と外部をゆるやかに繋ぐ「内なる外」の空間です。白いタイル貼りのテラスに面して、リビングとダイニングの両方から行き来できる構造になっており、晴れた日には家族全員でテラスに出て過ごすことができます。
子どもたちが外で安心して遊べる場所を確保しながら、BBQも楽しめる庭として機能しています。特筆すべきは、このテラス越しに見上げた際に感じられる空間の広がりです。2階部分まで吹き上がった外壁に囲まれた中庭は、空に向かって開かれた「光の井戸」のようであり、隣地や道路からの視線を受けることなく、たっぷりとした青空を室内に届けてくれます。
リビングで出会う、吹き抜けの迫力

玄関を抜け、リビングへと足を踏み入れた瞬間に、圧倒的な高さが目に飛び込んできます。

吹き抜けを持つリビング空間は、この住まいで最も印象的な場所のひとつです。天井は1階から2階の高さまで一気に突き抜け、頂部には木板張りの天井面が斜めに設けられています。そこに取り付けられた大きな球形のペンダントライトが、吹き抜け全体を柔らかく照らしており、昼は自然光、夜は照明の光が、ゆっくりと壁を伝います。

壁面のひとつはグレーの石目調タイルが張られており、ソファが向かうTV壁として機能しています。白い壁と木の床、そして石目のアクセントウォール。この3素材の組み合わせが、甘くなりすぎず、かつ冷たくもなりすぎない、絶妙な温度感の空間を作り上げています。
室内にいながら常に外とのつながりを感じる
大きな窓は左右どちらを向いても中庭テラスや外の緑に繋がっており、室内にいながら常に外とのつながりを感じることができます。それはまさに、この家のコンセプトそのもの——「繋がる家、つなげるいえ」——を体現した場所と言えるでしょう。
後編:【後編】建築家の設計力が光る「繋がる家、つなげるいえ」つながる間取りとインテリア(4月3日 公開予定)