
「自然が豊かな場所で夫婦でものづくり、暮らしづくり」陶芸家・小川麻美さん
普段使いの器や暮らしの道具などを中心に神奈川県相模原市で陶芸家として活動している小川麻美さん。
今回は、小川麻美さんの暮らしの中で大切にしているデザインや陶芸を仕事にしたきっかけについてお話を伺いました。
陶芸家・小川麻美さん

会社に勤めながら陶芸教室に通い、2011年より本格的に陶芸家として活動開始。各地の企画展や個展に参加。2017年に小川さんの夫が勤務する家具専門店の工房がある相模原市に移住し、住居兼陶工房にて活動中。
暮らしの中で大切にしているデザイン

はじめに、小川さんが暮らしの中で大切にしているデザインについて伺いました。
「『自然が豊かな土地での物づくり』と『それに寄り添う暮らし』です。自分自身は器を中心に焼き物を作っていますが、夫が家具の工房と家具屋を営んでおり夫婦で物づくりをしているので、それらを使いながら、暮らしながら仕事に活かしていくことを大切にしています」
自然と向き合い、夫婦で影響を受け合う

小川さんは相模原に住んでいらっしゃいますが、ご夫婦でクリエイティブな仕事をされているとお互いに影響を受けたりするのですか?
「元々自然と向き合うところで暮らしたいというのがあり、また夫の家具の工房が近くにあったご縁でこの土地に住むことになりました。『暮らしの中でこういうのがあったらいいね』ということをお互いに話していて、自分は焼き物を作って、夫は家具やその他木工の物を作っているので、それを実際に暮らしで使う形でやり取りはしています」
夫が手がけた内装のシンプルな平屋と仕事場から見える外の景色が好き

続いて、小川さんのお好きな場所、空間を教えてください。
「家のメインであるリビングとキッチン、仕事場が好きな空間です。6年ほど前に建てた小さな平屋でとてもシンプルな作りです。家作りでキッチン本体や壁面収納、洗面台、玄関ドア、ダイニングテーブルなども夫の工房で制作してもらい、それを使っている場所なので好きです。また、リビング、キッチンや仕事場からは窓の外が見渡せるようになっていて、窓から広がる風景、空や遠くの山と、自分が木や植物が大好きで自分でコツコツ植えて庭を作ってきたので、その庭の木や植物たちの季節ごとの美しい姿を眺めながら生活したり仕事ができているので最高の場所だなと思っています」
平屋と併設した窯小屋は陶芸教室の先生が作ってくれた場所

お家の1/3のスペースが陶芸スペースとのことですが、窯小屋は陶芸教室の先生が作ってくださったんですよね。生徒さんがそうやって陶芸家の道を邁進していくのをすごく応援してくださっていますね。
「家の隣に窯小屋を併設しており、陶芸教室の先生が焼き物の他に元々、木工の仕事と溶接の仕事をされていたので相談して建ててもらいました。陶芸教室は自分の親世代の方々が多い中、自分は当時若めの年齢だったので、自分がどんどん焼き物にはまっていく姿とその熱意を先生が感じてくださって背中を押してくださり、この道に入りました」
陶芸に興味を持ったきっかけと、趣味が仕事になった理由
32歳で会社員として働いていてそこから陶芸家としての活動を始められたとのことですが、なぜ陶芸と思われたのですか?
「元々母の影響もあり、20代前半ぐらいから焼き物や器に興味を持ち始めて器屋さんに行くこともありました。そこで悩んで迷って決めて持ち帰った器を家で使ってみた時に、初めて感じたワクワク感や、手で触れながら器の景色を眺め癒されたり、何より料理を盛ってみた時のテーブルの景色や空気が変わったような気がした瞬間がありました。そこで感動を覚えて、器に興味を持つきっかけになったことで、その後に実際に陶芸をやってみたいと思うようになりました。その頃に陶芸教室の先生との出会いがあり、教室に通うようになりました。当時は会社勤めもしていたので週末に習いに行く形だったのですが、やればやるほど土に触れて黙々と作っていくことにはまっていき、それが心地よい時間でした。自分が作ったものを焼いてもらって出来上がった時に感動して、さらにそれを日常の暮らしの中で使えることの喜びを感じて、作品を作っていくうちに教室の先生を含め一緒に地元で販売させてもらうような機会に恵まれ、今度は買ってくれる人がいるという嬉しさを知りました。でも陶芸はあくでも趣味で、会社勤めもあると迷っていたタイミングで奇しくも会社が潰れてしまい、その時に今しかないと思い活動を本格的に始めるきっかけになりました」
重さとサイズ感を重視した陶器

なぜ普段使いの器をという風に思われたのですか?
「器は食器ということで道具なので、基本的に使いやすさや軽すぎず重すぎないことは意外と大事です。重いと洗ったり出し入れしたりする時におっくうになってしまうという話は使う人から耳にすることもありました。あとはサイズ感も大事と思っていて、料理を盛ってみた時の見え方が大事かなと思っています」
陶器の魅力と可能性について

小川さんは花器や陶器のピアスなどもチャレンジされていますが、小川さんご自身は陶器の魅力や可能性をどんな風にお考えですか?
「焼き物の魅力としては、釉薬と土の兼ね合いもあって、その都度一期一会的な焼き上がりの違う色味や、釉薬の流れや濃淡がありそれが魅力だと思っています。庭の花を生けたいので花器を作ったり、人間の器だけでなく猫のご飯用のフードボウルと水飲み用のウォーターボウルの高さを考えて作ったり。あとは陶のピアスは自分がカジュアルで、素材感あるピアスが欲しいなと思った時に陶器でも作れそうだし、可愛いだろうなと思って作りました」
用の美がある雑貨や経年変化を感じる日用品が好き

器に限らず小川さんが好きな雑貨はどういったものでしょうか?
「焼き物と木の物で作れそうなら自分たちで作ります。夫には台所用品で包丁スタンドやキッチンペーパーホルダーなどを作ってもらいました。あとは焼き物と木工以外でも他の素材の手仕事品にも惹かれて、ガラスや金属、籠など用の美があるもの、経年変化を感じるものは好きで時を経た布なども好きです」
Life is 生涯物づくり、暮らしづくり

インタビューの最後、小川さんに「Life is ◯◯」空欄に当てはまる言葉を尋ねると、「Life is 生涯物づくり、暮らしづくり。夫婦で物づくりをしているので、日々の暮らしに寄り添っているもの、自分たちらしく住まいも暮らしも少しずつ作り足しながら直しながらその過程も楽しみながらこれからもやっていきたいなと思っています」と答えてくれました。
自然と向き合い、夫婦で影響を受け合いながら作品を生み出し続ける陶芸家小川麻美さん
豊かな自然の中で作品を生み出し続ける陶芸家の小川麻美さん。陶器の持つ魅力と可能性を存分に発揮した作品は、多くの人たちを惹きつけていくことでしょう。今後の活躍にも注目です!