個人の美術館としては世界最大!ジョアン・ミロ自身が親友の建築家ホセ・ルイ・セルトと共作した「ミロ美術館」

バルセロナ出身の画家、ジョアン・ミロ。ダリやガウディと同郷の彼は、20世紀のスペインアートを先導した芸術家の一人として知られる。ミロの作品を主に展示する現代美術館「ミロ美術館」は、彼自身が設立をした世界最大の個人美術館。ミロの親友であり、カタルーニャ出身の建築家ホセ・ルイ・セルトと共に共作をしたミロ美術館は、建物全体からミロの世界観が溢れている。

20世紀のスペイン芸術界を代表する画家の一人「ジョアン・ミロ」

ジョアン・ミロは、ダリやガウディと同郷のスペイン・バルセロナ出身のアーティストだ。ピカソをして「永遠の子供」と言わしめたと言われており、20世紀のスペイン芸術界を代表する画家の一人である。

1893年生まれのミロはこれまで、絵画のみに捉われず、陶器や彫刻、布を使ったアートなど、様々なジャンルの作品を世に残している。「絵画は詩だ」という言葉を残す彼の作品は、有機的で抽象的なものが多く、自由で無邪気な画風や、記号化されたようなフォルムの作風が特徴的である。

ジョアン・ミロの作品を主に展示する現代美術館「ミロ美術館」

バルセロナにあるミロ美術館は、名前の通りジョアン・ミロの作品を主に展示する現代美術館だ。ミロ自身が、現代美術養護を目的として設立し、個人の美術館としては世界最大の規模を誇る。その由来から、通称「ミロからの贈り物」とバルセロナの人たちから愛される場所だ。

1975年に完成したミロ美術館の建築を担当したのは、ミロの親友であり、カタルーニャ出身の建築家 ホセ・ルイ・セルト。マリョルカ島にあるミロの別荘も、彼が手がけている。

ミロ美術館の展示コレクションは、そのほとんどがミロ作品であることは言うまでもないが、他にもバルセロナを代表する芸術家の作品や、企画展、ワークショップなども実施している。

まるでミロ作品を連想させる、無邪気なフォルムが印象的な外観

ミロ美術館は、モンジュイックの丘の森に溶け込むように建つ。シンプルで真っ白な外壁がバルセロナの風土に心地よく引き立つ外観だ。

建築設計をミロの親友が手がけたこともあり、ミロの独特な画風や愛嬌のある作風のフォルムが、そのまま建築に結晶している。

外には、オープンカフェやレストランも充実しており、作品展示を体験するだけではなく、公園のような「市民の憩う場」としても機能している。

誰でも入れるオープンな設計で構成された内部空間

レストランやカフェ、ワークショップスペースなど、誰でも入れるオープンな設計になっていることが特徴的なミロの美術館。なぜなら、ミロ美術館は単に美術館の機能だけでなく、ワークショップなども行える芸術センターのような役割も担っているのだそうだ。

アーチが連続した天井が特徴の展示スペース

レセプションでチケットを買って展示室に入ると、アーチが連続した天井が特徴的な展示スペース広がる。基本的にはホワイトキューブが連続するような展示空間で、キャンバスのような白い壁にミロの作品がとても映える。

館内には、ミロの作品がずらっと並んでおり、絵画、彫刻、陶器、タペストリー等、ミロ作品の幅広いレンジを網羅して構成されている。

一万点を超えるミロのコレクション

ミロ美術館に展示されている作品はミロ自身が寄贈したもので、初期と晩期の作品で一万点を擁する。その大半は、作品を多くの人に見てもらえるようミロ自らが寄付したもので、スケッチやデッサン、絵画、陶器や彫刻、布を使ったアートなど幅広い作品が見物だ。

画家として知られるミロだが、彼の作品はキャンバスに収まらず、さまざまな形態をとる。美術館を飛び出し、パブリックアートのように外に展示されている作品も多く存在する。

吹き抜けとスロープの角度で魅せる展示空間

立体的な作品が展示される吹き抜けの展示空間には、スロープが配置され、ぐるっと登りながら色々な角度で彫刻作品を楽しむことができる。

スロープを使って、様々な高さでデザインされた壁面のデザインも面白い。壁面で区切られた窓からは柔らかく光が注ぎ、吹き抜けの開放感と相まって独特な空間だ。

ミロ美術館の展示コレクションは、そのほとんどがミロ作品であることは言うまでもないが、他にもバルセロナを代表する芸術家の作品や、企画展なども実施している。アレクサンダー・カルダーの作品が小さいピカソのゲルニカと一緒に展示される配置も、ミロらしく摩訶不思議で無邪気な見せ方だ。

実験的な展示空間「エスパイ13 」

ミロ美術館には「エスパイ13」というピックアップされた作家の作品を展示するスペースもあり、ミロの作風にも通ずるものを感じる。

ブラジルの建築家「リナ・ボバルディ展」企画展も

企画展のスペースではブラジルの建築家、リナ・ボバルディに関する展示が開催されていた。黒のルーバーが垂直に伸びる、まるで柵のような展示方法は遊具のような遊び心があり、斬新で面白い。迷路のように行ったり来たりしながら展示を楽しむ人々の姿が印象的だ。

バルセロナを見下ろす巨大テラス

丘になっている場所には巨大なテラスがあり、水盤とミロの彫刻作品が展示される。モンジュイックの丘の上に位置する立地を贅沢に利用した、豊かな自然が広がる静かなスポットに、ミロの彫刻作品が街を見下ろし、神々しさがある。

バルセロナの街を一望しながらミロの作品を鑑賞できるこのスペースは、ミロ美術館のハイライト的なスポットだ。

隔たるものがない広い空の下に広がる白い屋上空間

ミロ美術館の屋上にも、可愛らしくもユニークなキャラクターのようなオブジェ作品が並ぶ。外観からも目を引いた特徴的で独特なフォルムが、展示作品の背景のように相まって、空間全体でミロの世界観を感じることができる。

通路になっているスペースにも、ミロの彫刻が並び、歩いているだけで楽しい。ダイナミズムと繊細さの入り混じる、独特の詩的世界が感じとれる

ミロ自身と親友セントの建築により、建物全体で広がる世界観

四角い箱に作品を収容する普通のギャラリーと違い、ここでは建築そのものに「ミロらしさ」があふれている。親友と作り上げた共作とも言えるミロ美術館の建物も、もはやミロ作品に極めて近い存在であることは間違いない。

Fundació Joan Miró – ミロ美術館

開館時間:10:00~20:00(日曜日~18:00)
休館日:月曜日
入館料:€12.90
URL : http://www.fmirobcn.org
住所:Parc de Montjuïc, s/n, 08038 Barcelona, Spain