建築家エンリック・ミラーレスによる遺作。スペイン・バルセロナの「サンタ・カテリーナ市場」

スペインの建築家といえば有名な「アントニオ・ガウディー」だが、現代にも「ガウディーの再来」と呼ばれた建築家がスペインに存在した。それは2000年に45歳という若さで他界した「エンリック・ミラーレス」という建築家だ。そんなミラーレスの遺作の1つと言われているのが「サンタ・カテリーナ市場」。150年の歴史を誇る由緒ある市場で、ミラーレスにより2005年に大規模なリニューアルで完成した作品だ。

建築家 エンリック・ミラーレスによる遺作「サンタ・カテリーナ市場」

150年の歴史があるサンタ・カテリーナ市場は、バルセロナのエリング・ミラーレスとパートナーのベネデッタ・タリアブーエが共同で主宰する設計事務所EMBTにより、2005年に大規模にリニューアルされた食料品の市場と集合住宅の複合施設だ。

この設計を担当したミラーレスは、世界各地でプロジェクトを進めた世界的建築家である。サンタ・カテリーナ市場を建築中、市場の地下からローマ時代の遺跡が発見されたことにより建築に時間がかかり、その工事半ばにして2000年に45歳という若さで世を去っている。

その後、同じく建築家であり妻のベネデッタ・タグリアブエがミラーレスの意思を継ぎ、2005年に完成させた。

見どころは、カラフルなモザイクタイルが載る木組みの曲線屋根

巨大で波打つ曲線的な屋根が特徴的な、サンタ・カテリーナ市場の外観。外壁は古い市場の物をそのまま流用し「新旧」を感じさせる趣がある。

トニー・コメーヤ作のカラフルなモザイクタイルが載った屋根は、うねうねとした屋根の造形が通りに突き出し、遠くからでも目を引くデザインだ。

市場の中に入ると、波打つ天井がダイナミックな空間が広がる

曲線を描く木組みの屋根がそのまま映し出された天井は、高さも相まって開放感のある空間が広がる。平面も何となく屋根に規定され、波打つ天井が市場全体をリズミカルに構成しながら人々を誘導している。

内部には木材がたくさん使われており「一新した中にも歴史や時代を融合させた空間作り」を考慮したデザインだと分かるだろう。

昼間は本来の市場、夜間はバルやレストランとして活気ある空間

周辺を集合住宅に囲まれた立地の中心にあるサンタ・カタリーナ市場。「周辺住民が、窓を開ければこの屋根を目にする」というほどに、この町と近く関わる立地条件も相まり、観光客は少なく、地元の人で賑わっている。

サンタ・カタリーナ市場は、昼間は本来の市場、夜間はバルやレストランとして営業をしており、1日を通して地元の人々が利用するコミュニティーの場でもあるのだ。

併設のレストラン「クイナス・サンタ・カタリーナ」も、市場内部同様に木組みの壁が使われ、吹き抜けから注ぐトップライトが心地よい。

異なる時代のコントラストが面白いリノベーション建築作品

ミラーレスの遺作の一つ「サンタ・カテリーナ市場」は、リノベーション故に、ローマ時代の遺跡が現れたりと、言わばアクシデントにも見舞われた建築ではあったが、その経緯が上手く「歴史あるこの場所」と「異なる時代」を繋ぎ、融合したデザインを作っている。

町と市場の関係性や、150年の歴史を建築設計としてうまく練りながら、現代的なデザインで町の新たなシンボルマークを確立させた、素晴らしい作品である。

Mercat de Santa Caterina

営業時間:7:30~20:30(月・水・土曜日~15:30)
URL : https://www.mercatsantacaterina.com
住所:Av. de Francesc Cambó, 16, 08003 Barcelona, Spain