九州最南端・鹿児島県にある有名建築家によるユニークな建築作品5選

本土最南端の地「鹿児島県」。1549年には、スペインの宣教師であるフランシスコ・ザビエルの一行が上陸したことで知られ、海外文化の影響を多大に受けながら「歴史上国内初」となる諸事例を多く持つ場所としても有名だ。

絶大なる歴史と環境を併せ持つ鹿児島県には、美術館やホテル、コンサートホール、商業施設など有名建築家が設計した作品が数多く建てられている。

JIA25年賞受賞の建築!岩崎美術館・工芸館

「箱建築」が美しくも力強い「岩崎美術館」。無機質なコンクリート打放しと十字のファザードが印象的だ。

岩崎美術館は、鹿児島県指宿市のリゾートホテル「いわさきホテル」の敷地内に著名建築家 槇文彦氏によって手掛けられた。外観から感じられる絶妙なプロポーションと繊細なディテールは、槇文彦建築の特徴とも言え、まさに彼が成す巧みな建築美であろう。

いわさきホテルの敷地に順次整備された美術館、事務棟、工芸館は、明と暗、地中海的なものと日本的なものという「対比的な空間表現」をとりながら、大きな家という共通のイメージを持って作られている。

岩崎美術館は、「25年以上の長きにわたり、建築の存在価値を発揮し、美しく維持され、地域社会に貢献してきた建築」に授与されるJIA25年賞も受賞している。

岩崎美術館

住所:鹿児島県指宿市十二町3755
公式サイト:https://www.iwasaki-zaidan.org/artmuseum/

アルミに覆われたアートのような建築、霧島アートの森 アートホール

霧島アートの森
Via : Wikipedia.

早川邦彦建築研究室・早川邦彦氏による「霧島アートホール」は、鹿児島県が栗野町に整備した野外美術館「霧島アートの森」の中核施設だ。約13haある広大な森の中には、ダニ・カラヴァンや草間彌生などによる20を超えるアート作品が点在。霧島アートホールは、まるでその1作品のように佇む。

アルミに覆われた直方体の外観は「モダンかつ近未来的なデザイン」が印象的で、浮遊感をも抱かせる。白いミニマルな空間が美しい内部は、人々を包み込むような空間が心地良く我々を魅了する。

「霧島アートの森」内には、展示室、多目的スペース、喫茶室も併設され、それらも全て早川氏が手掛けている。

霧島アートの森 アートホール

住所:鹿児島県姶良郡湧水町木場6340−220
公式サイト:https://open-air-museum.org

「奇跡のホール」と称賛された、霧島国際音楽ホール

Via : WIkipedia.

まるで「外洋に乗出す船」のような外観が印象的な「霧島国際音楽ホール」。この建築を手掛けたのは、「岩崎美術館」の建築でも登場した著名建築家・槇文彦氏だ。

「霧島国際音楽ホール」は、地形の起伏を活かし、コンパクトかつ一体型の建築が特徴的だ。「木の葉型の平面」と「舟底型の断面」には機能性も重視し、2つの面からなる「響きのよいホール」を目指している。

内部の大空間を覆う屋根構造は「折り紙細工」のようなデザインが魅力的で、外から望むと周囲の山並みと美しく響き合う姿を感じることができる。

霧島国際音楽ホールは、国際音響学会で「奇跡のホール」と称賛された音響を誇り、優良ホール100選にも選ばれている。

霧島国際音楽ホール

住所:鹿児島県霧島市牧園町高千穂3311−29
公式サイト:https://miyama-conseru.or.jp

リノベーション設計で地域に寄り添い活気を集めるマルヤガーデンズ

Via : Wikipedia.

鹿児島市の中心街・天文館に存在する集合施設「マルヤガーデンズ」は、2010年グッドデザイン賞を受賞した建築物だ。百貨店跡地の再生商業施設として、「みかんぐみ」によるリノベーション設計にて2010年4月28日にオープンし、商業コンサルの他に、コーディネーターとしてナガオカケンメイ、ガーデンの運営システムに山崎亮が参加している。

贅沢に施された緑化壁面とガラスカーテンウォールのファザードが印象的なマルヤガーデンズ。鹿児島の気候に適した数種のツタ植物を起用し「街とともに育っていく場」を表現している。

各階には「ガーデン」呼ばれる空間を設けたこともマルヤガーデンズ建築の特徴と言える。ここは、建物を「様々な人々が集まる場所」として再生するためにコミュニティスペースだ。

内装材として使われるのは、地元の陶器である薩摩焼、地場の間伐材など「鹿児島ならでは」のマテリアル。鹿児島という地域環境にフォーカスしながら、地域の人々が様々な用途で「つかう」ことで活気を集めるような仕組みづくりを建築を通して感じることができるだろう。

マルヤガーデンズ

住所:鹿児島県鹿児島市呉服町6−5
公式サイト:https://www.maruya-gardens.com

鹿児島カテドラル ザビエル記念聖堂

Via : Wikipedia.

1999年に鹿児島市照国町に新築された「鹿児島カテドラル・ザビエル記念聖堂」は、ザビエル渡航450年記念聖堂のコンペによって選ばれた坂倉建築研究所による聖堂だ。

外観で印象的な切妻屋根は「ザビエル渡航」による船をイメージして作られている。内部へと足を運び、大聖堂へと進むと出迎えるのは、鮮やか色彩空間。赤,青,オレンジに彩られた炎模様のステンドグラスを四方に配置し、その手前には丸穴のパンチングメタル張りめぐらせることで、隙間から差し込む光に鮮やかな変化をもたらしている。

室内の明度を22%まで落とすことで、色彩の鮮やかさの中に、しっかりとした厳粛な心地を感じさせ、まさに「宗教建築ならでは」の不思議な空間は、訪れる人々を感動させる。

鹿児島カテドラル ザビエル記念聖堂

住所:鹿児島県鹿児島市照国町13−42 ザビエル教会
公式サイト:https://xavier-kagoshima.net

鹿児島の絶大なる歴史・環境と共に生きる建築美

古くから、海外文化の影響を強く受けながら育ってきた鹿児島県という独特な環境。そこに建つ美しい建築物の数々は、それぞれのシーンや背景をしっかりと受け止めながらも、未来とコミニュティーを深く紐付けるような意図を感じる印象がある。京都のような日本らしさとはまた違った、日本が忘れてはいけない歴史や文化を鹿児島県の街と建築から学ぶことができるだろう。