「住んでみないとその魅力は分かりにくい」建築家・保坂猛が考える自邸へのこだわりやこれからの住まい

前編:「人と声を掛け合えるのって、やっぱり楽しい」建築家・保坂猛が大切にしているデザインや好きな空間

東京建築士会住宅建築賞を受賞した自邸〈LOVE HOUSE〉や、日本建築仕上学会にて作品賞を受賞した〈ほうとう不動 東恋路店〉など幅広いジャンルの空間設計を手掛ける建築家・保坂猛。今回は保坂さんに、2軒目の自邸〈LOVE 2 HOUSE〉の設計に際して参考にした建築やこだわり、これからの住まいについて伺いました。

自邸作りで参考にしたものとは

https://www.hosakatakeshi.com/projects/love2_house/

ご自宅である〈LOVE 2 HOUSE〉は、物理的にかなり限られた中での自邸づくりだったかと思いますが、参考にされた建築はありますか。

https://www.hosakatakeshi.com/projects/love_house/

「最初に横浜に建てた〈LOVE HOUSE〉は延べ床面積が38平米。1階は19平米、2階も19平米と、小住宅の中でも特に小さいです。そんな空間に約10年間過ごしていたので、体感的なことも含めてこれまでの経験を参考にできました。あとは、鴨長明の『方丈記』ですね。
これは約800年前に長明が晩年に居住していた1辺が3mの正方形で9平米というスケールの草庵にちなんだ題名なのですが、『方丈記』を読むとその小さな空間に鴨長明が好きなものが詰まっていることがわかるんです。なので、小さいからと色々なものを削るのではなく、小さいけど色んなものがあるということに勇気づけられて、参考にしました。」

https://www.hosakatakeshi.com/projects/love2_house/

好きなものに囲まれてそれを眺めながら暮らすって楽しいですよね。

「好きなのに家が小さいから削る、みたいなことは悲しいので(笑)。好きなものは工夫して上手く置けば良いと思うんです。」

住めばわかる小さな家の魅力

https://www.hosakatakeshi.com/projects/love2_house/

空間的な豊かさより、ものを持たない暮らしや自由に移動ができることを推しているような昨今のタイニーハウスのブームですが、こういった小さな住まいは一般の人も住みこなせるものだと思いますか?

「鴨長明も書いているのですが、すごく小さい家は一般的な人からは『あれには住めない』と言われることが多いものの、いかに味わい深く楽しいか、それは実際に住んでみないとわからないし、住んでみればわかる、と説いているんです。そういう意味では私は〈LOVE HOUSE〉、そして今はその半分の広さの〈LOVE 2 HOUSE〉に住んでいますが、住んでみるとそこでの暮らしはやはりすごく楽しいんです。住んでみないとその魅力は分かりにくいものかもしれませんね。」

新型コロナウィルスによる暮らし方の変化とは

https://www.hosakatakeshi.com/projects/love2_house/

コロナ渦でこれからの暮らし方はどんなふうに変わっていくと思いますか。

「巷ではサスティナビリティの観点から、日常生活で排出されるエネルギーを削減しなきゃいけないと言われていますよね。そこで、例えば一般的な方が100平米の住宅に住んでいるとしたら、19平米の家に住んでいる僕は4/5程度のエネルギーを削減できていると言えますよね。こう言った視点でも小さな家、暮らし方の需要は増えるのでないかと思っています。」

ライフイズ◯◯

小さな空間の魅力を体感し、好きなものや人に囲まれた日々の暮らしを楽しまれている保坂さん。そんな保坂さんにとってライフイズ〇〇の〇〇に入るものは何でしょうか?

「“ラブ”ですね。生活という単語はレ点をつけて読むと“活発に生きる”という意味になりますよね。僕はこれを、日常で触れる一つひとつの物事に対して愛を持って接すべきということだと考えているので、ラブとしました。」

日々体感するからこそわかる楽しい暮らしと豊かな人生

約19平米と極小とも言える自邸で日々を過ごす保坂さん。空間の大きさ、モノの多寡に捉われない楽しい暮らしには、これからの住まいづくりの参考になるポイントが詰まっているかもしれません。そんな保坂さんが日常で大切にしているデザインやお好きな空間については「『人と声を掛け合えるのって、やっぱり楽しい』建築家・保坂猛が大切にしているデザインや好きな空間」からどうぞ。