巨匠ル・コルビュジエによる豪華客船のようなダイナミックで革新的な集合住宅「ユニテ・ダビタシオン」
ル・コルビュジエが設計した集合住宅「ユニテ・ダビタシオン」。この建築には住居だけでは無く、店舗や理髪店・保育園等が同居しており、一つの都市の縮小版のような建築です。
圧倒的存在感の大きな集合住宅
公園のように広い敷地内に現れる集合住宅「ユニテ・ダビタシオン」。このとても巨大な建築をル・コルビュジエは船に見立ててデザインしたともいわれています。
2層吹抜けのバルコニーは、日射を遮る庇スラブが跳ねだしていることで外気の影響を受けにくい設計に。 1階はピロティーで持ち上げられており、周囲の緑を見渡すことができるので大きな建物の重厚感が和らぎ周りの風景に溶け込んでいます。
ピロティの柱は丸みを帯びていて、コンクリートの力強い迫力を感じられます。
2層吹抜けのバルコニーと1層のバルコニーが交互に繰り返されるリズミカルなファサード。装飾としてのデザインではなく、機能と連動した意匠なのです。
暮らしを豊かにする機能を集約した空間
建築の内部へと移ります。 これは低層部にある共有部分。開口部のデザインはモンドリアンのコンポジションシリーズのような、サイズが異なる四角形が連続しています。
ファサードから見えるブリーズ・ソレイユがあった場所は2層吹き抜けの通路に、ショップやカフェまであり、ひとつの建築内で都市生活を存分に味わえます。 ここには生活を楽しもうとする心の豊かさも感じられます。
「ユニテ・ダビタシオン」の中にはホテルも用意され、予約をすると1室に泊まることができます。
他にも不動産などのテナントもいくつか入居しています。
こちらが住戸階の中廊下です。
外の光は入らず薄暗いものの、一方玄関ドアは赤や青など色彩豊かで、一軒一軒照明に照らされロマンチックな雰囲気に。
ミニマムながら暮らしやすい居住空間
部屋は内階段が設けられたメゾネットなので、2階層分の大きい開口の前に明るいリビングの空間が広がります。開口は木製のサッシで上部ははめごろし。バルコニー側にスラブが跳ね出しており、庇の役割を担っています。下部のサッシは折れ戸になっており、両側を開けると全体がオープンにあり外のバルコニーと一体となる仕組みになっています。この間口寸法は3700mで、ダイニング天井高さは2350mm、吹抜け天井高さ約4900mmというボリューム感。寸法だけ見るとコンパクトですが、実際には充分な解放感が感じられます。更に、開口部の下には設備の空調があり、冬は回転させれば温風が吹き出す優れた納まりに。
エントランス側には玄関の青をはじめ、棚のグリーンやホワイトがアクセントになった可愛らしいつくりに。
L型の流しとIHヒーターが配置されたコンパクトなキッチン部分。IHの排気ダクトが通る部分の前の壁を斜めにして、フライパンや鍋などの調理器具が収納できるようになっています。
吹き抜け部分にある上層階部分で、開口部からの採光もあって非常に明るく感じられます。
奥の寝室からはコートダジュールの海を眺めることができ、こちらも開放感が感じられます。
絶景が味わえる開放感あふれる屋上
周りに遮るものがないため周囲の建物を見渡すことができ、まるで船の甲板のような広々とした開放感を味わえます。
住宅の住戸の部分が水平・垂直の厳格なグリッドで構成されている一方、排煙塔は建築の直線と対比的に曲線できています。
屋上の造形の工夫が目を引き、公園のような楽しさが感じられる空間となっています。小さな植栽も含めて全てが絵になる屋上です。
教会の機能を持ったホールもあります。南仏の光が注ぐ空間は人々の憩いの場となっているのかもしれません。
最上階には保育園やジム、プール、さらに集会室やジョギング用のトラックなどが配されています。まさに小さな都市のような様々な機能を包括した建築でした。
充実した暮らしを過ごせるル・コルビュジエの代表作
集合住宅というと日本では団地のような、住宅のみで構成される建造物を想像しがちですが、ショップや保育園など生活にまつわる機能をもたせることでより豊かで便利な暮らしが過ごせそうな住宅です。