建築家・深瀬ヤスノリが手がけた40坪の平屋に見る、広々と住まうための工夫とは?
今人気が集まる”平屋“の住まい。広い土地が必要に思われそうですが、工夫次第で限られたスペースでものびのびと過ごせる空間作りが可能です。今回は約40坪の三角形の異形地をベースに、4人家族が暮らす平屋を建てました。建築家・深瀬ヤスノリが手がけた住まいには、限られた空間を最大限活用しながら家族全員が心地よく暮らす工夫が詰まっています。前編で紹介した外観に続き、後編では気になる内部空間に注目します。
差し込む光が心地の良いLDK
並んだ窓から差し込む光が空間を明るくするLDK。ダイニングテーブルは円形のものを取り入れることで、三角形の角地によるデッドスペースを最小限に抑えています。
窓にカーテンをつけていないのは借景の美しさを活かしたいから。高台にあるため人の視線が気にならないのはもちろん、今回の住宅のテーマである「小さく作って大きく暮らす」の“大きく暮らす”ということを、“たくさんのものの価値を知った上で活用ができること”と捉え、自分達が見たい景色をワガママにみるという暮らしの豊かさを提案したいという深瀬の思いが込められています。カーテンがない分、壁一面がすっきりと見えることもメリットとなっています。高台に位置する土地に下から吹き込む風を取り入れるべく、窓は下側が開く構造となっています。
4畳でも広々と感じられる子供部屋
4畳という限られたスペースながら、ベッド、クローゼット、勉強机が設けられた子供部屋。
少し高めに設定された窓は、リビングから取り込んだ空気の通り道を計算して設けられたもの。
まさに機能的にも環境的にも、コンパクトながら無駄なく心地よく過ごせる空間です。部屋の一面の壁は取り外せるようになっており、成長に合わせて壁を外して大きな空間として活用することも可能です。
平屋だからこそ、通路と壁面に他の機能をプラスする
平屋の暮らしで気になるのが収納面。今回の住まいでは、扇風機やクリスマスツリーなど1年間に1度しか使わないものに関しては主寝室にしまえるように設計されています。そのほか毎日使うものに関しては寝室ではなく、廊下や壁面に収納スペースを設け、こちらを使用することを想定しています。
これは、家族それぞれの生活リズムを考慮し、朝起きた時にお互いの睡眠を邪魔しないように、毎日使うアイテムはオープンなスペースでの収納を目指したから。空間がワンフロアに収まる平屋だからこそ、LDKを繋ぐ廊下の多用途な活用がポイントとなります。
より広く感じるための細やかな工夫
今回の住宅では、先に紹介したポイント以外にも限られた空間を広々と活用する様々な工夫が取り込まれています。1つは扉の高さ。多くの住宅では2mの高さが標準ですが、こちらでは2m40cmと少し高めの設定に。これはより空間に広がりが感じられることに加え、設計に際して”パッシブデザイン”を取り入れているから。これは太陽の光や風といった自然エネルギーを建築作りに取り入れて、より快適な暮らしを目指す設計手法。先ほどのリビングの窓から入る風を取り込み、子供部屋の窓へ抜けるように、風を遮らないためにこのようなデザインとなっているのです。
また、各部屋に設けられたスイッチの高さにも工夫があります。通常の住宅に比べて低めに設置されたスイッチには理由が2つあり、1つ目は生活の上で最も扱いやすいように設定されている扉の取っ手の高さに合せたため。2つ目は、椅子に座った際の視線より下になるようにしているから。こうする事で目線より上に余計なものが入らないため空間が広々とスッキリ見えたり、間接照明を多用しているので、それによって影ができないことを目指しているのです。
心地よさを演出する照明計画
照明はダウンライトと間接照明を主として計画されています。ダウンライトは手元が明るくなるので料理など作業をするスペースに。間接照明は、天井を明るくして反射板のように用いる事で部屋全体を明るくできるようリビングやダイニングなどの広い空間に取り入れています。
また、間接照明は照度の調整が可能。夕食後には少し暗めに設定し、より落ち着きのある雰囲気に。同じ空間でもシーンによって印象を変えることができます。
建築家とだから可能になる、悪条件をもクリアする心地の良い住まい作り
今注目を集める”平屋”の住まい。広い土地が必要とされるイメージですが、限られた敷地でも、異形地でも、多くの住宅づくりの経験を持つ建築家だからこそ心地の良い空間に仕上げることができます。家族との時間を最も過ごす住まい。後悔のない満足できる空間作りのためにも、建築家の経験と視点を活かした家づくりはいかがでしょうか。平屋住宅のメリットと、今回の住まいの外観については「『小さく作って大きく暮らす』40坪の異形地に建てられた深瀬ヤスノリによる平屋の家」からどうぞ。