建築家・内山里江が手掛けた家族の行動心理から間取りを考える「秘密基地」のある家

わんぱくな3人の男の子と共働きご夫婦が建築家と建てる自由設計の家。今回は実際に建築家・内山里江がどのようなコンセプトと想いで家族と話し合い、その家を創り上げたのか解説を交えながら、その設計・間取りについて説明してもらった。

「できるだけサッカーができる庭を取りたい」から始まる暮らしの形

施主である家族は、ご主人もサッカーをしているほどの「サッカー一家」。芝生がたくさんある南の土地を多くするため、建物はできるだけ合理的でコンパクトにすることに決めた。

3人の子どもたちがのびのび暮らしながらも、片付けがしやすい設計

コンパクトな建物をいかに過ごしやすく、楽に暮らせる空間にするのか。今回、内山氏はそれを実現するためにまず、2階に水回りを設けることを決めた。

これにより寝室、朝起きて使うトイレ、お風呂、洗面、クローゼットなど生活するための空間が全て1フロアで完結する。つまり、家族が帰ってきてからの導線を背景に「物が自然と2階に上がる」ような間取りを作り、1Fに物を置かない習慣の流れができたのだ。

パパと子供達のための「俺たちの秘密基地」

玄関付近には、思わず勉強をしたくなるような男性的なワークスペースを設けた。入り口を敢えて小さく低くし、潜って中に入ると「俺たちの秘密基地」が広がる。ごちゃっとしても気にならない男らしく頼もしい雰囲気が魅力的だ。

この空間の裏側にも内山流の導線の心理が光る。帰宅した子供たちは手を洗い、リビング横にあるこの「俺たちの秘密基地」にランドセルを下ろし、そのままリビングで過ごす導線ができているのだ。

これにより「勉強や作業・リビングで憩う・寝るための2階子供部屋」と分けることができ、リビングは散らかることが少なく済む。

広いリビングはキッチンダイニング直結

朝食は準備・片付けのしやすいキッチンカウンターで家族みんなで過ごす。キッチンから動かなくても子供のケアがしやすいようにリビングにキッチンダイニングを直結することで、奥様の行動負担を軽減している。キッチン周りは奥様のためのスペースを纏め、さらには奥様専用のトイレまである。これぞ内山流の奥様目線ファースト。女性建築家 内山里江の目の付け所に脱帽である。

住む家族の生活動線をしっかりと考えられた住まいは、暮らしの質の高さに繋がる

内山氏に建築を依頼した家族は「自分たちが思っていた『こうじゃないといけない』を一回忘れて受け入れることで、概念を超えた良い暮らしが叶った」と話す。一般的に考えれば、2階の水回りを採用することは心配にもなる。しかし、内山氏からの「家族の暮らし方や特徴を知った上での提案」だからこそ、それが一番合理的だと気付くのだ。

建築家と家を建てる、その裏側にあるそれぞれの想い。

今回、内山氏から「施主の息子さんの嬉しいエピソード」も聞くことができた。3人の男の子の内の1人が、小学校で作文を書いてくれたというのだ。なんとそれは「建築家になりたい」という内容。「家を最近建てて、すごく楽しかった。家族が喜んでいる姿を見て僕は建築家になりたいと思った。」そう朗読する彼の言葉からも、建築家・内山里江と施主家族が共に創り上げた想いを感じることができるだろう。