凛とした佇まいと厳かな光を宿す住まい、建築家・五十嵐理人による「ピラミッドハット」

沖縄県の住宅街に建つ「ピラミッドハット」。その名の通り四角錐の量塊が特徴的なこの住宅は、森のような墓地に隣接した土地に建てられました。設計を手がけたのは、建築家・五十嵐理人。環境に寄り添いながらも凛とした存在感を放ち、内部には“明るくも厳かな”空間を宿しています。

墓地に寄り添う敷地と建築の姿勢

Photo : Ooki Jingu

敷地は細長く奥に向かって傾斜し、三方をマンションや墓地に囲まれた谷底のような環境にありました。

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特に隣接する墓地は緑豊かで、敷地と一体化するように植物が生い茂っています。こうした特殊な環境に対し、大きく開放的な外観よりも、周囲と距離を取りつつも明るさを内部に確保できる建築が考案されました。その結果、外部に対しては凛とした佇まいを見せながら、内部に光が差し込む“遺跡のような”空間が形づくられています。

四角錐の量塊と構造の工夫

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建築は、緩やかな斜面の敷地を三段に均した上に立ち上がっています。二列の基礎梁を土留めとして利用し、その上に四角錐を載せるような構成。

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まるで神輿が担がれているような佇まいで、硬い琉球石灰岩層から引き上げられた量塊は、地盤が変化しても自立し続ける安定性を備えています。閉じた四角錐は構造的に合理的でありながらも威厳的な存在感を持ち、建築の持続性を象徴するかのようです。

内部に広がる“光の遺跡”

Photo : Ooki Jingu

室内は三層の段差によって構成されています。

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最も高い位置には水まわりと玄関。

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1m下がったレベルにリビングダイニングと書斎、さらに奥の段に寝室などのプライベート空間を配置。

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シンプルながらも奥行きある空間構成となっています。

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トップライトから降り注ぐ自然光は、コンクリートの壁面に陰影を描き、時間とともに変化する光の表情が、住まいに“祝祭性”をもたらしています。

沖縄の伝統と建築の永続性

Photo : Ooki Jingu

外観はピラミッドや古墳を思わせ、沖縄の伝統的な墓の形状とも重なります。沖縄の墓は厳しい気候に耐える堅牢さや、後世に受け継がれるための普遍性を備えてきました。

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「ピラミッドハット」もまた、その精神を継承するかのように、周囲の環境に応答しながら長く存在し続けることを意図しています。

祝祭性と静けさを兼ね備えた普遍の住まい

「ピラミッドハット」は、墓地に隣接する特殊な敷地条件に対し、閉じながらも明るさと厳かさを内部に確保した住宅です。四角錐の量塊、トップライトからの光、そしてシンプルかつ奥行きある内部構成。それらが重なり合い、凛とした外観と祝祭的な内部空間を兼ね備える建築となりました。用途を超えても長く愛され続ける普遍的な存在を志向したこの住まいは、沖縄の地に静かに、そして力強く佇んでいます。