「今ある常識的なモノの見方に疑問を持つこと」アート教育実践家・アーティストの末永幸歩さん
22万部を超えるベストセラー著書『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』を出版し、アート教育実践家・アーティストとして活動をする末永幸歩さん。
今回はそんな末永幸歩さんにご自身のことや、暮らしのこと、著書のことなど様々な角度からお話を伺いました。
アート教育実践家・アーティストの末永幸歩さん
武蔵野美術大学造形学部を卒業。東京学芸大学大学院教育学研究科(美術教育)修了し、現在、東京学芸大学 個人研究員。東京都の中学校の美術教諭を経て、2020年にアート教育実践家として独立。現在は、各地の教育機関や企業などで講演やワークショップを実施する他、メディアでの提言・執筆活動などを通して、学ぶことや生きることの基盤となるアートの考え方を伝えている。著書『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』(ダイヤモンド社)は、22万部のベストセラーとなり多くの人々の反響を得ています。
暮らしの中で大切にしているデザイン
はじめに、末永さんが暮らしの中で大切にしているデザインについて伺いました。
「自宅のインテリアやプロダクトにこだわっています。なんでも手作りをしていて、例えば毎日使う食器は自分で作ったものを使っています。歪な形や質感、手作りならでの重さなど独特な味わいが好きです。あとは、家の中の棚やベランダのプランター、あらゆるものをDIYするのを楽しんでいます。元々、製作・作ることが好きなので暇さえあれば、ここ直そうかなと色々修理しています(笑)」
好きな場所は福岡市美術館
続いて、末永さんのお好きな場所や空間はどこでしょうか?
「この夏に福岡に行った時に福岡市美術館に行ったのですが、とっても素敵な美術館でついつい長時間過ごしてしまいました。大濠公園に面していて低層の建物で、建築の外にも中にも誰でも見れるような彫刻がいくつも展示されていたりだとか、一般の人が誰でも入りやすいオープンな明るい雰囲気がいいなと思いました」
アート教育実践家の具体的な活動内容
アート教育実践家・アーティストとして活動をする末永幸歩さんですが、具体的にどのような活動をしているのですか?
「全国各地でアートの授業やワークショップを実践しています。対象になるのは小さいお子様から大人、ビジネスパーソンまで様々です。実践を通して私が考えたこと、アートの考え方などを書籍などの執筆を通してお伝えしています」
大人になってもアートを伸ばすことはできるのですか?
「はい、私が実践しているのは“アートの授業”といっても、絵の描き方やアート作品の知識的な部分ではないんです。アートの考え方、今ある常識的なモノの見方に疑問を持ってみるだとか、そこから自分だけの答えを作ってみるということを主軸に置いているので、モノの見方、考え方というのは、養うことができると思っています」
実際に末永さんの授業を受けられた方で、こんな風になりましたという方はいらっしゃいますか?
「授業やワークショップに参加される方々は、表現することや製作することに対して、自信がない方が多いんです。だけどそういった方がワークショップを終える頃には、自分が今まで思っていた以上に色々な表現の仕方があるんだな!別に上手に絵を描くことだけがアートの表現ではないんだ!もっと多様なんだなあ、誰でも色々な形で表現ができるんだなということを実感されているように思えます」
本を出したことをきっかけに現在の活動へ
末永さんはもともと中学校の美術の先生をされていたということなんですけども、現在の活動を始めた理由やきっかけについて教えてください。
「2020年に、『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』という本を出版したのがきっかけです。この本は私が中学校の美術の先生として、学校で実践してきた美術の事業をもとに出版しました。そこで私のアート、美術に対する考え方っていうのが上手に絵を描くことや器用にモノを作ることではなく、自分なりのモノの見方をして自分だけの答えを作ること、そんなふうに考えているのですね。そう考えると学校の美術の授業って将来画家になりたい人だとかデザイナーになりたい人だけのものではなくて、全ての学びの基本とも言えますし、自分らしく生きるという事にも繋がるのかなという想いがあります。そこで「13歳からのアート思考」というのは子供だけでなく、大人も含めたすべての人に向けて書きました。大きな反響があり、そこから私の教育活動の学校だけでなく、社会の様々な場へと広がっていったというなり行き任せなのですがそういった経緯があります」
末永さんが提唱する“アート思考”とは
日本だけでなく、中国語版や台湾語版も出版されているというベストセラーの著書「自分だけの答えが見つかる13歳からのアート思考」。著書の中で末永さんが提唱されているアート思考というものはいったいどういったものなのでしょうか?
「アート思考というのは、アーティストならではのモノの考え方を指します。アーティストがしていることって繰り返しになりますが、上手に絵を描くこと、器用にモノを作ることだけでないんです。本質なのは今ある常識的なモノの見方に疑問を持つこと。その上で自分のモノの見方をして、自分だけの答えを作っていく。こんなことをアーティストたちはしているんですね。その結果として作品といった形が残っていくと考えられるのですが、作品が出来上がるまでのアーティストの思考の足取り、これがアート思考だと思っています」
アート思考を身につけてることによって、世の中で生きていく上でどういったプラスをもたらすとお考えですか?
「アート思考は自分なりのモノの見方、自分だけの答えを作るという風に考えれば、これって美術に限らず全ての学びの基本とも言えますし、自分の人生を自分で選択をして自分らしく生きていくことに繋がっているんですね。またアートの考え方って一人一人違う、正解がたくさんあるという考え方があると思うんですけども、とっても素敵な考え方で、このアートの考え方を携えていれば、大多数の意見とは違う少数派の意見だとかに『それはそれであってもいいよね』って自然と受け入れることができるのではないかなと思っています。」
周囲の反響について
著書に対する周囲の反響はいかがですか?
「たくさんの方から書籍の感想をいただいております。また、以前書店のデーターを少し見せてもらったことがあるのですが、本を手に取ってくださる方が子供から大人まで、男性女性問わずに、本当に幅広い層の方々に手に取ってもらっていることが分かりました。これは一般的には珍しいようで、色々な方に幅広く楽しんでもらえているといのは、嬉しいことだなと思っています」
末永さんは学校や美術館でワークショップを交えた体験型の講演をされていますが、参加者からはどんな反応をされていますか?
「例えば1つのアート作品を見て自分が感じたことを伝え合う、というそんなワークショップをすることがあるんですが、私はこう思うという自分の主観を伝え合うという経験が初めてだという方に気付かれる方が多いですね。自分の主観を伝え合うというのがとっても面白いという方がいて、嬉しく思っています」
Life is アート
インタビューの最後、末永さんに「Life is ◯◯」空欄に当てはまる言葉を尋ねると、「Life is アート」と答えてくれました。
「生活のあらゆる場面で自分だけの答えを作ることができると思います。これは人生設計だとかそういった大きいことだけでなく、今日何を食べるのか、何をみるのか、何を考えるのか、などそういった日々の小さい選択も含まれると思っています。自分だけの答えを作る積み重ねが、毎日を少し面白くしてくれるのではないかなと思っています」
「今ある常識的なモノの見方に疑問を持つこと」アート教育実践家・アーティストの末永幸歩さん
アート教育実践家・アーティストとして活動をする末永幸歩さん。「上手に絵を描くことや器用にモノを作ることだけでない。自分のモノの見方をして、自分だけの答えを作っていく」という印象的なお言葉はアートだけでなく、世の中で生きていく上で、今後も心に刻みたい素敵なフレーズでした。末永さんがこれからもどのように人々に影響を与えるのか、ご活躍に目が離せません。