「長い時間を生き抜いたものに触れながら生活できる」金工作家・竹俣勇壱の好きなデザインや金沢の魅力について
石川県金沢市にアトリエを構え、彫金師としてジュエリーを手掛けながら、生活の道具の制作にも取り組む金工作家・竹俣勇壱さん。オーダージュエリーやカトラリーなどの竹俣さんが手掛ける作品には、独自の美学が詰め込まれています。今回は竹俣さんに、日常で大切にされているデザインや活動拠点とされている金沢の魅力について伺いました。
金工作家・竹俣勇壱
1975年石川県金沢生まれ。ジュエリー工房にてオリジナルアクセサリーの企画制作販売に従事後、2002年に独立。オーダージュエリーを中心に活動を始める。2004年アトリエ兼ショップ「KiKU」オープン。2007年からはオーダージュエリーに加え、生活道具の制作を始め、2012年石川県金沢市東山に「sayuu」をオープン。現在も石川県金沢市でジュエリーや生活道具を制作しています
身の回りに置くものは、形の綺麗なものにしたい
まずは日常生活の中で大切にされているデザインについて伺いました。
「自分の身の回りに形が綺麗だと思うものを置くように意識しています。器や家具など、日常で触れるものはなるべく形が綺麗なものを選んでいます。」
古材で制作したオリジナルの作業台がある工房が好き
お好きな空間はどういったものなのでしょうか。
「基本的に仕事をしていることが多いので、自分の工房が好きです。よく使用している作業台は、古い家具をリメイクしてオリジナルで制作したものです。機能性はもちろんですが、その古い味わいも気に入っています。」
古いものが長く生き続けているのが金沢の魅力
伝統工芸が盛んな街、金沢で生まれ、現在も金沢を拠点に活動を続けられていますが、ものづくりをする上での金沢という土地の強み、魅力はどこにあるとお考えですか。
「金沢は戦争の被害をあまり受けていないので、古い建物がたくさん残っています。そうした建物には同じようにそこで使用されていた古い家具や雑貨なども残されています。そうした長い時間を生き抜いた古いものに触れながら生活できるのは金沢の魅力だと思います。」
それらからインスピレーションを受けることも多いのですか?
「そうですね。触れているものから無意識のうちに影響を受けていることも多いと思います。『このデザインが良いな』と思うというより、触っているうちに自然と自身の作品に取り込んでしまう感じですかね。」
当時の姿を尊重した、築200年の町家で営むショップ「sayuu」
金沢市の新竪町にあるオーダーメイドジュエリーとカトラリーの店「sayuu」。こちらは築200年の町屋をリノベーションして作られたと伺っていますが、その際に大切にされたところやこだわりはどういった点でしょうか。
「築200年ほどの元町屋である建築がベースとなっているのですが、なるべく古い意匠に合うような形でリノベーションをするように心掛けました。」
sayuu
URL : https://www.kiku-sayuu.com
住所:〒920-0831 石川県金沢市東山1丁目8−18
古いものには長い年月を生き抜いてきた魅力がある
日常的に触れてきた“古いもの”から、長い年月を生き抜く“良いものづくり”のインスピレーションを受けることも多いと話す竹俣さん。日常の繊細な感覚から生み出されるジュエリー、生活道具は、私たちの日常にそっと溶け込み、長い時間を共に過ごすパートナーとなってくれそうです。
後編:「シンプルに“良いもの”を目指したい」金工作家・竹俣勇壱が語る”使いづらい”スプーン誕生の経緯や古いものの魅力について