従来のホテルとは全く異なる、持続可能なくらしを体験する「MEMU EARTH HOTEL(メムアースホテル)」
「memu earth hotel(メムアースホテル)」は、北海道広尾郡大樹町 芽武に位置するホテル。一口にホテルと言っても、よくある宿泊施設とはかなり異なっており、珍しい取り組みを行っているのが特徴だ。単に宿泊場所を提供するだけでなく、先進的な建築と十勝の無垢なる自然を楽しんでもらう、ホテルとしての「サービス」の提供。そして、“資源再読”をテーマにSDGsに向けた研究を展開している研究者と協働し、その社会実装のプロセスを国内外に向けて情報発信している。
「メムアースホテル」誕生の経緯
アイヌ語で「泉の湧き出るところ」という意味を持つ、北海道広尾郡大樹町 芽武。かつてここには、中央競馬界に数々の名馬を送り出したサラブレッドの生産牧場「大樹ファーム」のトレーニングセンターがあったが、やがて牧場が移転。それに伴って残された広大な大地は、2011年に寒冷地実験住宅施設「メムメドウズ」に変わったという。
いつしか隈研吾や伊東豊雄など建築家の実験住宅や、「国際大学建築コンペ」の最優秀作品が点在する、世界的にも稀有な「建築の聖地」として知られるようになった。
そして、2018年11月に「メムアースホテル」が誕生。地域社会に貢献するとともに、宿泊者に自然と人の共生について考えるきっかけや本質的な豊かさを考えるヒントを提供。これからの社会と日常に求められる、持続可能なアイデアを発信するメディアとしての役割を担っていきたいと考えているという。
“持続可能なくらし”を体験
同ホテルが目指しているのは、地域が再生できる範囲の資源消費で、快適な住環境を実現すること。そのためには、取り組むべく課題がまだ山積みだそう。2011年、「公共財団法人LIXIL住生活財団」は生命の息吹が感じられる豊穣な大地に、環境に配慮した寒冷地における実験住宅施設「メムメドウズ」を開設した。
「メムアースホテル」が客室として提供しているのは、隈研吾氏設計・監修による実験住宅作品「Même(メーム)」、ハーバード大学設計による「HORIZON HOUSE」、オスロ建築デザイン大学設計による「INVERTED HOUSE」、慶応義塾大学設計による「BARN HOUSE(納屋の家)」、早稲田大学設計による「町まとう家」。
ホテルのレセプションとレストランの役割を担う「スタジオ メム」は、建築家の伊東豊雄氏が築40年以上経過した牧草保管用倉庫をリノベーションした貴重な建物であり、北海道にゆかりのあるクリエイターのアートや家具がディスプレイされているそう。地元作家の作品をはじめ、国内のブランドとコラボレーションしたオリジナルグッズも販売している。
北海道の資源を生かした食事を提供
そしてmemu earth hotelは、食を通じて「持続可能性」を提案。地球環境や人権・アニマルライツを破壊しない食材の調達や食品ロスを減らし、ゴミはコンポスト化し提携農家の土地に還すなど、 循環型社会を促進するパーツとしてホテルが機能することを目指して、地域との連携を深めている。
“農業大国”としても知られる十勝は、大量生産や消費者に都合のいい品種改良が求められる宿命も。しかし、長い年月を経て環境に適合してきた動植物こそ、十勝の風土を表現する食材だと考え、レストランでの提供だけではない、食のあり方を生産者とともに模索しているという。
野菜本来の甘味や辛味、苦味の感じられる食材を選んだり、ジビエは適切な狩猟法や絞め方を熟知した近隣のハンターから直接仕入れ、シンプルな調理を心がけたりすることで、「地球がくれた大地の恵みに感謝しながら、お客さまの記憶に残る食の物語を紡ぐこと」の実現を目指している。
建築や自然、そして資源再生に興味がある人にとっては、貴重な体験になること間違いなし。ぜひ今までにない、新しい宿泊体験をしてみてはいかがだろうか。