ライフステージとともに変わる「住まい」 ― 伯耆原洋太が構想する次なるステージ
前編:自邸を住み替え続ける建築家 ― 伯耆原洋太が語る「住まいのアップデート」論
「自宅を設計し、住み替える」というユニークなサイクルを続けながら、家と人生をリンクさせてきた建築家・伯耆原洋太。今回は、伯耆原さんが語る“住まいを売却する意味”、そしてこれから手がけたい夢の住まいについて改めて聞きました。家と不動産、そして人生がどのように交錯していくのか――その先にあるビジョンを追います。
ライフステージと住まいの変化が生む新しい合理性

伯耆原さんはこれまでに自邸を3回建てられています。3つの住まいには、それぞれどんなこだわりや思いが込められているのでしょうか。
「30歳から35歳という短い期間に思われがちですが、実際にはライフステージが細かく変わり、その変化が設計に大きな影響を与えています。一つ目の家は会社員時代に建てたのですが、会社での仕事は多人数での設計が中心で、自分の成果が目に見えづらいことに不安を感じていました。そのとき、『自分で設計したい、デザインしたい』という思いが強く芽生えたんです。それが、自分らしさを追求する第一歩のような家でした。
二つ目の家は独立するタイミングで建てたものです。独立後の自分のスタイルを確立し、新しいスタートを切る思いが込められていた気がします。そして現在住んでいる三つ目の家は、子どもが誕生して父親という観点が加わり、より家族の暮らしを意識して設計しました。こうして30歳から35歳の間にライフステージが大きく変わる中で、その時々の立場を反映した住まいを作ってきました」
複合的な住まいの未来 ― 次なる挑戦に向けた構想

これまで3軒の自邸を経験した伯耆原さんですが、子どもの成長や夫婦のライフステージを見据えて、今後何回くらい家を建てたいと思っているのでしょうか。
「今は子どもが小学校に入るまでのタイミングを考えています。幼稚園で仲良くなった友達との別れなどもあるので、これまでのような頻度で住み替えることはしないと思っています。でも、小学校入学前には、4軒目の家を建てたいなとは考えています。具体的な構想として、これまで手がけてきたマンションリノベーションではなく、一棟のビルをベースにした複合的な住まいをつくりたいと思っています。
一階にカフェやフリースペースがあって、二階に自分の設計事務所やスタッフが来られるような場所がある。そして3,4階に居住スペースを設けるような、コンプレックス自邸みたいなものをやれたら面白いなと、妄想しています」
建築と不動産をつなぐ――その重要性と価値とは
建築家が不動産にも踏み込むことは珍しいように感じますが、伯耆原さんはこの関係性をどう捉えているのでしょうか。
「建築と不動産の間には断絶があるように感じていますが、個人的には密接に関わるべきだと考えています。不動産の価値観は、床面積や間取りといった基準が中心ですが、建築家の視点からは「その部屋がどのように設計され、どのような素材が使われているか」ということが重要です。不動産に建築設計の感覚を取り入れることで、新しい価値を生むことができると思います。現代はバブル期のように建物を乱立させる時代ではありません。今あるものに価値を与えるためにも、建築家が不動産に踏み込むことは欠かせないのではないでしょうか
暮らしと人生をデザインする

ライフスタイルに合わせて自宅を手放し、新たに設計することで家と人生をリンクさせてきた伯耆原さん。そんな伯耆原さんにとってライフイズ◯◯の◯◯に入るものは何でしょうか。
「ライフイズ“アーキテクチャ”。『ライフ』には暮らしという意味もあるとは思うんですけど、人生って意味もあるなぁと気づいたんです。英語だと暮らし=人生なんだ、ということが面白いなと思った時、自邸を作り続けることと、建築家として生きていくことが僕の人生であり、僕の暮らしだと思っています。僕や家族がどんな暮らしをしていく、どういう終の住処でどうやって死んでいくのかというかというのは、今暮らしている自邸があって、次に暮らす自邸があって、で、そこで何を感じて終の住処、どういうところに住みたいねというふうに形成されていくと思っています。自分で手がけた住まいに暮らす建築家としては、そういう考えで日々やってる気持ちがあります」
住まいは、いつも“進化”できる
「住まい」の価値は、単に固定的な場所としての概念ではありません。むしろライフステージに合わせて進化し続けるものだと、伯耆原さんは自身の実践を通して示しています。「売却」「住み替え」「再設計」という選択肢を活用することで、住まいは流動的で柔軟な存在へと変貌します。固定観念に縛られることなく、自分らしい住まいを常に更新していける可能性――それが、未来の住まいのあり方かもしれません。