サンティアゴ・カラトラバらによる独特な造形の現代建築群が建ち並ぶスペイン・バレンシアの「芸術科学都市」
スペイン・バレンシアにある複合施設「芸術科学都市」は、1996年に建設が始まり、約10年かけて作られた科学教育と芸術のための複合施設エリアである。敷地内に立ち並ぶ建物の多くを手掛けたのは、建築家サンティアゴ・カラトラバ。水族館は「HPシェル構造建築の大家」としても知られる巨匠建築家「フェリックス・キャンデラ」が担当している。彼らが織りなす現代建築群が魅惑の「芸術科学都市」についてその全貌を見ていく。
サンティアゴ・カラトラバが多くを手掛けた建築群「芸術科学都市」
スペイン・バレンシアでトゥリア川が流れる街にある「芸術科学都市」は、水族館・科学博物館・IMAXシアター・オペラハウスなどが併設された複合施設である。30万平方メートルを誇る敷地の中に、印象的な現代建築群が立ち並び「バレンシアの巨大ランドマーク建築」としても有名だ。
芸術科学都市にある建築物は、基本的には「サンティアゴ・カラトラバ」の設計によるもので、構造エンジニアでもある彼の建築デザインは、生物の骨格を組み合わせたような斬新な造形が特徴である。
唯一「オセアノグラフィック」だけは、「HPシェル構造」の生みの親としても有名な巨匠建築家「フェリックス・キャンデラ」が手がけている。
世界有数の巨大オペラハウス「ソフィア王妃芸術宮殿」
まるでSF映画の世界に入り込んでしまったかのようなデザインの外観が印象的な音楽ホール「ソフィア王妃芸術宮殿」。オペラ作品やコンサートを上演するために造られたメインホールは1,470 席を備え、世界有数の巨大オーケストラピットを誇る。
サンティアゴ・カラトラバのデザインらしい「白い骨格」のような柱・曲線で設計された空間が何とも独創的でありながらも、ガウディのタイルの意匠を踏襲したと思われる「不定形のタイル仕上げ」のデザインもふんだんに使われている。
Palau de les Arts Reina Sofía (Opera Valencia) – ソフィア王妃芸術宮殿
電話:+34 961 97 58 00
URL : https://www.lesarts.com
住所:Avenida del Professor López Piñero, 1, 46013 Valencia, Spain
IMAXシアター「レミスフェリック」
「芸術科学都市」の施設の中で一番最初にオープンした、13,000㎡の広さを誇るIMAXシアター「レミスフェリック」。
「人の目」をデザイン源とした独創的なファザードは、天井の「まぶた」のような部分は開閉が可能だ。プラネタリウム、レーザー光線ショー、3Dの映像などを楽しむことができる。
L’Hemisfèric – レミスフェリック
開館時間:
電話:
URL :
住所:Av. del Professor López Piñero, 3, 46013 València, Valencia, スペイン
彫刻庭園「ルンブラクレ」
現代アーティストの彫刻が並ぶ庭園「ルンブラクレ」は、連続するアーチが歩く人を誘導する。庭園内には、バレンシア固有の植物種が植えられている。
アーチが作り出す影からは、光彩が木漏れ日のように差し込み、空の下にいながらもどこか心地の良い空間が広がる。開口部中央に立つモニュメントやベンチには、形のタイル仕上げのデザインが採用されている。
Umbracle – ルンブラクレ
連続する骨格と構造が美しい科学博物館「フェリペ王子科学博物館」
「フェリペ王子科学博物館」は、サンティアゴ・カラトラバが手がけた全長250m × 幅110m×高さ33mもの巨大博物館である。サンティアゴ・カラトラバが培ってきた工学の技術的構造の知識を用いてじっくりと考察された「長いカーブライン」と「真っ白の素材」が、ガラス素材と水面に艶やかに照らされる。
まるで恐竜の白い骨格を連続して組み合わせたような構造が複雑に絡み合い、様々な空間を創り出す。重厚感ある素材を使ったダイナミックな中にも軽やかな空間表現が圧巻だ。
Museu de les Ciències de València – フェリペ王子科学博物館
開館時間:10:00~19:00
電話:+34 961 97 46 86
URL : http://www.cac.es
住所:Ciudad de las Artes y de las Ciencias, Av Profesor López Piñero, 7, 46013 Valencia, Spain
フェリックス・キャンデラ設計の巨大水族館「オセアノグラフィック」
ヨーロッパ最大の水族館「オセアノグラフィック」は、フェリックス・キャンデラが設計したHPシェル構造建築が美しい巨大水族館だ。「ヨーロッパ最大の水族館」とも言われる広大なオセアノグラフィック敷地内には、彼が手がけたいくつもの展示建物が立ち並ぶ。
フェリックス・キャンデラの建築の特徴といえば、「HPシェル構造」という建築技法を用いた設計技術だ。まるで「シェル(貝殻)」のような容姿で仕上げられた流れるような曲線美と曲面の空間作りが印象的である。当時コンピューターのまだ無い時代に、計算をして創り上げたという「伸びやかで軽快な設計」は建築界に一躍その名を知らしめ、後に「天才的建築家」と呼ばれる彼の代表的な建築技法となっている。
それぞれに異色を放つ建造物で創り上げたのは、彼のみが創り出すことができる「小宇宙空間」のようにも感じる。それほどにも壮大な空間設計・デザインの凄さに改めて感動する場所こそ、「オセアノグラフィック」なのである。
Oceanogràfic – オセアノグラフィック
開館時間:10:00~20:00
入館料:€26
電話:+34 960 47 06 47
URL : http://www.oceanografic.org
住所:Ciutat de les Arts i de les Ciències, Carrer Eduardo Primo Yúfera, 1B, 46013 Valencia, Spain
天に向かって伸びるアラメダ橋
構造エンジニアでもあるサンティアゴ・カラトラバが作り出す設計は、厳密な構造計算に基づいており、土木構築物の設計デザインにおいても世界的に高い評価を得ている。そんな彼の「得意分野の1つ」と言っても過言ではない、橋の設計デザインが芸術科学都市にも存在する。
天に向かって伸びる規則正しい直線で見せる彼のデザインは他の建築と同じく、動物の骨のような感じがあり、街に美しく調和している。
Assut de l’Or Bridge – アラメダ橋
アゴラ(情報がないので削除でも良いかもです)
多目的施設の「アゴラ」は、大規模な改修中。
Àgora – アゴラ
バレンシアの「芸術科学都市」は、驚くべき造形の連続!
構造エンジニアとして知識をもったサンティアゴ・カラトラバと、HPシェル構造建築の大家であるフェリックス・キャンデラによって創り出された「芸術科学都市」。彼らの並外れた設計技術を駆使し、複雑な構造計算によって創られた建築物の数々は、独特かつダイナミックな造形デザインが連なって続く。
人々が息をのむほどの迫力ある現代建築でありながらも、どこか親しみのあるのは、その構造から「生物の存在」を感じるからなのかもしれない。
Ciutat de les Arts i les Ciències – 芸術科学都市
URL : http://www.cac.es
住所:Av. del Professor López Piñero, 7, 46013 València, Spain