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建築倉庫ミュージアムで「ル・コルビュジエ / チャンディガール展 -創造とコンテクスト-」開催。

寺⽥倉庫が運営する建築倉庫ミュージアムは、企画展「ル・コルビュジエ / チャンディガール展 -創造とコンテクスト-」を2018年5月26日(土)から7月16日(月・祝)まで開催する。

ル・コルビュジエとチャンディガール

ル・コルビュジエは近代を代表する巨匠建築家として知られている。そしてその活動は、彼が提唱した「近代建築5原則」が示す通り、合理主義的な考えと技術革新を伴って発展していく世界のイメージに根ざし、一つの普遍的論理が広く世界で通用するという信念に基づくと考えられてきた。

ル・コルビュジエ キャピタル全体図のスケッチ、平面図と遠近法図、説明文つき、チャンディガール、1950~1965年 1951年7月24日 所蔵 ル・コルビュジエ財団

しかし、ル・コルビュジエが場所の環境や風景、また風土や文化など、計画にかかわるコンテクストに多くの注意や関心を払っていたことはあまり知られていない。特にチャンディガールをはじめとする晩年の作品群では、こうした関心が、彼の建築・都市デザインの直接的なインスピレーションの源となって、より複雑な全体の生成に寄与している。

ル・コルビュジエ 水盆に面したファサードの遠近法図、人物、植栽、「開かれた手」つき、チャンディガール、1950~1965年 1952年3月4日 所蔵 ル・コルビュジエ財団

今回の展覧会ではル・コルビュジエの手によるチャンディガールでの作品群を例にとり、ヨーロッパから遠く離れたインドという異質の環境下における、ル・コルビュジエのクリエイションとその土地ならではのエレメントとの関係を考察。

展覧会の見どころ

展示では、貴重な建築資料や模型、建築家自身の手によるオリジナルスケッチや油彩画、リトグラフなどの美術作品に加えて、写真家ホンマタカシがチャンディガールで撮影した写真や映像作品を紹介。こうした多種にわたる展示によって、ル・コルビュジエがそこで見聞きし、感じ、考え、そして表現しようとしたものを感じ取ることができると同時に、それらを通して、ル・コルビュジエ作品に宿る、近代思想をも超えようとする精神を垣間見る機会を提供する。

議事堂内部(縮尺1/20)を再現した巨大模型

チャンディガールでル・コルビュジエは、民主主義とインドの気候とを総合的にモニュメント化する言語を模索。その結果、とりわけキャピトル・コンプレックスは、初期のデザインを支配していた一元的に普遍を志向する堅苦しい幾何学から解放され、幾何学的要素とピクチャレスクな要素が混在することより複雑な総体として結実した。今回その主要な構成要素の一部をなす議事堂内部を巨大模型で再現。

油彩画「牡牛 XVIII」と詩画集「二つの間に」の展示

ル・コルビュジエ 牡牛 XVIII 1959年 所蔵 大成建設株式会社

ル・コルビュジエは絵画を中心とした芸術作品を多く残した芸術家としても知られている。本展では油彩画「牡牛 XVIII」(1959年)を展示。また最晩年に制作され、彼の創作活動を対立概念間の運動として総括するリトグラフの詩画集「二つの間に」(1964年)を展示し、併せて本展のために新たに翻訳されたル・コルビュジエの詩文(田中未来訳)を紹介する。

キャピトル・コンプレックスを1/100スケールにて再現

チャンディガールでの計画最初期から、キャピトル・コンプレックスの建物群の配置と全体のスケール感は、後背に広がるヒマラヤ山脈との関係性と共にル・コルビュジエが特に注意を払って検討したとされている。今回1/100のスケールで新たに製作されたキャピトル・コンプレックスの三つの建物(「高等裁判所」「議事堂」「合同庁舎」)が、実際の位置間隔と同様に展示室床に配置される。来館者はその中を自由に歩き回り、ル・コルビュジエが意図したキャピトル・コンプレックスの密度感や建築物同士の距離感を体感することができる。

ホンマタカシによる写真と映像作品

Takashi Homma High Court 1 2013 Lambda print © Takashi Homma Courtesy of TARO NASU

写真家ホンマタカシがインドに足を運び撮影した「チャンディガール」シリーズより、初公開作品を含む写真と映像作品を展示。本作はチャンディガールを通り抜ける風や匂い、空間へ差し込む光を念頭において構成されている。それはまさしくル・コルビュジエが注目した、建築とそれを取り囲む気候との関係を写しとろうとするもの。本作によって、模型だけでは伝えきれないチャンディガールという都市のリアリティを補う。

展覧会の構成

今回の展覧会ではル・コルビュジエとインド、チャンディガールの関係性を色々な角度から展示する。

1.チャンディガール計画概要とル・コルビュジエの訪印年表

インド独立から4年後の1951年、63歳にして初めてインドの地を踏んだル・コルビュジエは、以後13余年の間に23回にわたってインドを訪れた。インド滞在中に作成された図面には、訪印の度に異なったスタンプが作成され押された。このセクションでは、チャンディガール計画の概要と合わせて、そのスタンプの一覧を紹介。

2.造形の源

絵画を中心として多くの芸術作品を残したル・コルビュジエにとって、「牡牛」は力強さや男性性などを強調する重要なモチーフだった。また度々訪れたインドでは、水牛が神聖なものと扱われていることを知って、好んでスケッチや素描に描いた。そして、それらのモチーフは実際に建築における造形にも度々取り上げられている。例えば牡牛の角の形状は、「議事堂」のポルティコ上部の巨大な雨樋を兼ねた屋根や、ホール頂部の屋根などで表現され、また油彩画「牡牛 XVIII」と合わせて展示するリトグラフの詩画集「二つの間に」の最終葉には、牛の角が「総督公邸」に変身することを暗示するスケッチが見てとれる。

3.誕生のイメージ

ここでは、チャンディガール計画の当初案誕生にまつわるスケッチ群を展示します。彼は、1951年2月26-8日付の手紙で、チャンディガール計画の完成を妻イヴォンヌに伝えた。添えられたスケッチには、ヒマラヤを背景にした新首都のイメージ、鳥や牛などの動物に加えて、赤子を抱く女性が描かれている。この生命の誕生を暗示するイメージは、3月3日付のアルバム・ニヴォラのスケッチでも単独で反復された。3月1日にアルバム・パンジャブに描かれたスケッチでは、当初の首都全体の平面計画を示されている。同日、「7:7の首都計画創案の区切りに」と題したデッサンでは、1950年10月から描かれ始めた生成のイメージ(倒立した両性具有のユニコーンの下での男性と女性の結合)が召喚された。それは、後に錬金術と関連付けられ、『直角の詩』(1955刊行)に組み込まれた。

4.軸線

彼にとって軸線とは、平面図上の幾何学的図式ではなく、直立した人間が水平に見る視線に裏打ちされたものだった。彼は、その例証として形成期の東方旅行で訪れたアテネのアクロポリスを挙げ、ピレウス(海)からペンテリコン(山)へと延びる軸線、さらにはこの軸線(視線)とピレウス側で直交するかなたの地平線と関連付けて説明している。周囲の地勢と結び付けられた軸線のイメージは、チャンディガールにおける新首都計画でも反復された。シヴァリク山地を介してヒマラヤを背景とするキャピトルの全景スケッチはこの地での軸線を視覚化している。M.T.ハリスへの手紙に添えられたスケッチは、チャンディガールの全体計画に託された軸線を直截に表現。

5.スケールの総体的効果

キャピトル・コンプレックスにおいていかにその象徴性を表現するかが、チャンディガールでの課題の一つだった。そこでル・コルビュジエは、シヴァリク山地を介して北東方向のヒマラヤを背景とする大スケールの軸線(視線)を意識しつつ、主要建物をこれに直交する第2の軸線上に離して配置し、その間に掘出土による丘を設けるだけでなく、水盤の設置による反射効果を導入するなどの多様なスケールでの工夫を凝らし、見渡した時にさまざまな視覚的衝撃を与えるように全体を構成。その結果、敷地全体が長大化し内部での物理的なコミュニケーションの容易性が損なわれた。しかしながら、そのル・コルビュジエの姿勢からは注意深く敷地を観察し、その場所の最大かつ無二の特徴を活かそうとした意図が強く感じらる。

6.気候への適応

気候への適応は、ル・コルビュジエがインドにおいて挑んだ探究の中でも、とりわけ重要なテーマだ。特に3月から5月の猛暑(気温40度程度)に加えて、6月から10月の湿気や11月から2月の寒さといった変化に富んだインドの難しい気象条件下で、近代建築の効力を示すというのが意図だった。こうして、インド以前より取り組んでいた日照問題の他、室内の換気、湿度の制御、雨からの保護といった問題がインドでの計画における重要な要素となった。今回展示するスケッチに描かれているのは、気候への適応のためにスタディされた建築的手法で、チャンディガールの気候のもとでも快適な屋内空間が得られるように形態及び建材の両面から住宅案が探究されていることが見てとれるだろう。

7.現在も生きる都市、人々の喧騒と風土、流れる時間

写真家ホンマタカシは2013年にインドに足を運び、「チャンディガール」シリーズの撮影を行った。写真作品はチャンディガールを通り抜ける風や匂い、空間へ差し込む光を念頭において構成されている。チャンディガールという計画都市全体がある意味一つの構造物であり、それぞれの建築が都市に包み込まれている、そのスケール感がさりげなく示されてる。映像作品ではそこに暮らす人々の生活やそこに流れる時間が切り取られ、チャンディガールが現在も生き続ける都市であることを実感することがでる。本シリーズはホンマが近年関心を持ち続ける「都市と建築」という一貫したテーマの中で制作された。

開催概要

展覧会名:ル・コルビュジエ / チャンディガール展 –創造とコンテクスト- Le Corbusier / Chandigarh -Creation and Context-
会期:2018年5月26日(土)〜7月16日(月・祝)
会場:建築倉庫ミュージアム(〒140-0002 東京都品川区東品川2-6-10)
開館時間:火〜日 11時~19時(最終入館18時) 月曜休館(祝日の場合、翌火曜休館)
入場料:一般 3,000 円、大学生/専門学校生 2,000円、高校生以下 1,000 円
主催:建築倉庫ミュージアム
監修:
加藤道夫(東京大学大学院総合文化研究科広域システム科学系教授)
千葉学(建築家 / 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授)
企画:東京大学大学院工学系研究科建築学専攻千葉学研究室
会場設計:
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻千葉学研究室
吉田昌平(建築家 / 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻研究員)
展覧会アドヴァイザリー:鈴木布美子
展覧会企画協力:アート&パブリック株式会社
協賛:CASAMATTA/ BIBI GRAETZ、株式会社 東京スタデオ、株式会社 フレームマン、株式会社 脇プロセス
特別協力:大成建設株式会社
協力:Centre Canadien d’Architecture、Echelle-1、Fondation Le Corbusier、GALLERY-SIGN、TARO NASU

 

なかなか訪れる機会もないル・コルビュジエがデザインしたインド・チャンディガール。寺⽥倉庫が運営する建築倉庫ミュージアムでル・コルビュジエの建築・都市デザインの直接的なインスピレーションの源を感じ取れるかも知れない。

#casa 編集部

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